ソーシャルストリームを使った気鋭のサービス「Pinterest」

ソーシャルストリームを使った気鋭のサービス「Pinterest」 2012年03月26日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

Pinterestは、ユーザーが好きな画像をWebにアップロードし、それを共有するだけの非常にシンプルなサービスだ。Flickrに近いイメージだが、構造がアルバム的ではなくTwitterやFacebook同様のタイムライン型、言い換えればソーシャルストリーム型のトンマナをもっていることが特徴だ。

共有の仕方には、自分自身のタイムラインに直接放り込むRepin(Facebookで言えばShareに近い)と、Like(FacebookのLikeと同様)のふたつがあり、どちらにしても単純にワンクリックで行える。繰り返しになるがサービスとしては単純明快で、日本国内でもPinterestが話題になるやいなや模倣サービスが生まれたことをみても、技術的にはそれほどみるべきものがない。しかし、それでもPinterestはそのスタイリッシュなデザインと単純さをもって、多くの女性を味方につけ、近年まれに見る急成長を続けている。

TwitterやFacebookが日本国内でも大ブレイクして以来、ソーシャルの波がインターネットを席巻している。1990年代後半からポータルの時代から検索の時代へとシフトし、2010年代は完全にソーシャルの時代となった。インターネット上の情報を規定するのが、Webサイト管理者の意思ではなく無数のネットユーザーの嗜好に変化した。そして単純な短いコンテンツを時系列順に表示する形式(ソーシャルストリーム)をとって、世界中のソーシャルネットワーキングサービスの標準的なインターフェイスを生み出した。

TwitterもFacebookもソーシャルストリーム内へ手軽にURLを埋め込めるので、そのURLを何気なくクリックすることで生まれる、やや消極的なトラフィックが急激にふくれあがり、大きなビジネスチャンスをつくることになる。人間関係そのものを共有し、永久不滅の連絡帳としてのマルチSNSは、いまのところFacebook以外は想定しづらくなったが、Pinterestはその間隙を突き、クリックされやすい情報(この場合は画像)だけを可能な限りシンプルでエレガントな形で共有を促せば、十分に成長できるだけの余地がまだあることを証明した。

Twitterも十分な収益モデルをつくり上げられずにマネタイズに苦戦しているが、Pinterestも、強大になりつつあるトラフィック発生パワーをそのまま換金する手法はいまだ見つけていない。僕はPVやアクティブユーザーを増やしていくサービスモデルをトラフィックエンジン、それを換金する方法をマネタイズエンジンと呼んでいるが、いまのところソーシャル系企業で本当にこの両輪がうまくバランスしているのはFacebookだけであり、PinterestにしてもTwitterにしても、今後この課題をどうクリアしていくのか、興味深い。




Pinterest(iPhoneアプリ版)

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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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