IPO直前のFacebookに潜む死角
IPO直前のFacebookに潜む死角
2012年05月14日
TEXT：小川 浩（株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター）
FacebookのIPO（新規株式公開）の期日が、いよいよ数日後に迫った。彼らの最新情報は投資家向けにつくられたロードショームービー（http://facebook.retailroadshow.com/show/retail.html?m&u=1600#）またはIPO申請書類（http://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1326801/000119312512222368/d287954ds1a.htm）を見ることで知ることができる。
彼らは世界中で9億人を超えるユーザー数をもち、事業面で見ても2011年度の売上高37億ドル・利益10億ドルと絶好調である。成長速度はやや鈍ってきたとはいえ、2011年の第一四半期の売上高が7.3億ドルであるのに対し、2012年第一四半期の売上高は10.58億ドルと、30％ほどの伸張を果たしている。
TEXT：小川 浩（株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター）
FacebookのIPO（新規株式公開）の期日が、いよいよ数日後に迫った。彼らの最新情報は投資家向けにつくられたロードショームービー（http://facebook.retailroadshow.com/show/retail.html?m&u=1600#）またはIPO申請書類（http://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1326801/000119312512222368/d287954ds1a.htm）を見ることで知ることができる。
彼らは世界中で9億人を超えるユーザー数をもち、事業面で見ても2011年度の売上高37億ドル・利益10億ドルと絶好調である。成長速度はやや鈍ってきたとはいえ、2011年の第一四半期の売上高が7.3億ドルであるのに対し、2012年第一四半期の売上高は10.58億ドルと、30％ほどの伸張を果たしている。
そんな彼らの最大の死角は、モバイルインターネットでの収益確保の遅れである。Facebookは非常にすぐれたWebアプリであり、PC上での使い勝手はじつにすばらしい。機能の数を順当に増やしながら、それをシンプルなUIにうまくおさめることに成功してきた。しかし、彼らのスマートフォン対応ネイティブアプリの動作は鈍重で、ユーザーからの評判は最悪といってもよい状態だ。
ソーシャルメディアにおいてユーザーの行動は、オンラインからオンライン（Online to Online）、オフラインからオンライン（Offline to Online）、オンラインからオフライン（Online to Offline）の3つの流れに基づく。まず、Online to Onlineとしてはふたつあって、同じSNS上の友人から得る情報を引用する形（RT、Reblog、シェア、コメント、いいね、など）と、ほかのWebサイトからの情報を見てそのリンクをSNS上に転記する形がある。前者はPC・モバイルともに差異はないが、後者の流れは現状のFacebookのモバイルアプリではスムースではなく、かなりめんどうな手続きが必要だ。ここに彼らの改善点があると思う。Facebook自身がブラウザをつくったり、オリジナルのスマートフォンをつくらねばならないと主張する識者がいるのは、このためだ。ライバルのひとつであるTwitterはiOSと密接になることで、この流れを実にスムースに改善している。もちろんGoogle+もまた、Androidとの完全な同期によってFacebookを上回るスムースさを手に入れている。
次にOffline to Online、つまり現実の情報をSNSにアップロードするという流れだが、これは写真や動画などをアップロードする行為と、テレビや新聞などで知った情報などをテキストでデジタル化してアップロードする行為のことだ。この点でいうと、特に画像・動画系のアップロードは明らかにモバイルのほうが敷居が低い。オフラインで起きている事件をオンラインに移し替えるというトラフィック変換の道具として、モバイルは最適なのだが、写真ではInstagramやPinterestなどが、ロケーション情報ではFoursquareなどが、Facebookを凌駕するできばえのアプリやサービスを提供しており、目の上のたんこぶになりつつある。FacebookがInstagramやGowallaを買収したのは、まさしくその排除のためだ。
最後にOnline to Offlineだが、Grouponが最初の成功事例をつくって以来（その後は失速しているが）オンラインで情報を得たユーザーたちが実際にリアル店舗などに足を運ぶことを指し、O2Oとも呼ばれている。このオンラインのバーチャルなトラフィックを交通機関などの社会インフラを介したリアルなトラフィックに変換するためには、PCでは役不足でありモバイルからのトラフィックをより増強させなければならない（このテーマは字数がもっと必要なので次回以降にまわそう）。
いずれにしてもFacebookは、PCからモバイルにシフトするインターネットトラフィックの効率的な換金方法を一刻も早く生み出さなければならない。IPOは大成功に間違いないものの、1～2年後にはモバイル領域で先行するAppleとGoogleが、やはり絶対覇者、ということになりかねないである。
ソーシャルメディアにおいてユーザーの行動は、オンラインからオンライン（Online to Online）、オフラインからオンライン（Offline to Online）、オンラインからオフライン（Online to Offline）の3つの流れに基づく。まず、Online to Onlineとしてはふたつあって、同じSNS上の友人から得る情報を引用する形（RT、Reblog、シェア、コメント、いいね、など）と、ほかのWebサイトからの情報を見てそのリンクをSNS上に転記する形がある。前者はPC・モバイルともに差異はないが、後者の流れは現状のFacebookのモバイルアプリではスムースではなく、かなりめんどうな手続きが必要だ。ここに彼らの改善点があると思う。Facebook自身がブラウザをつくったり、オリジナルのスマートフォンをつくらねばならないと主張する識者がいるのは、このためだ。ライバルのひとつであるTwitterはiOSと密接になることで、この流れを実にスムースに改善している。もちろんGoogle+もまた、Androidとの完全な同期によってFacebookを上回るスムースさを手に入れている。
次にOffline to Online、つまり現実の情報をSNSにアップロードするという流れだが、これは写真や動画などをアップロードする行為と、テレビや新聞などで知った情報などをテキストでデジタル化してアップロードする行為のことだ。この点でいうと、特に画像・動画系のアップロードは明らかにモバイルのほうが敷居が低い。オフラインで起きている事件をオンラインに移し替えるというトラフィック変換の道具として、モバイルは最適なのだが、写真ではInstagramやPinterestなどが、ロケーション情報ではFoursquareなどが、Facebookを凌駕するできばえのアプリやサービスを提供しており、目の上のたんこぶになりつつある。FacebookがInstagramやGowallaを買収したのは、まさしくその排除のためだ。
最後にOnline to Offlineだが、Grouponが最初の成功事例をつくって以来（その後は失速しているが）オンラインで情報を得たユーザーたちが実際にリアル店舗などに足を運ぶことを指し、O2Oとも呼ばれている。このオンラインのバーチャルなトラフィックを交通機関などの社会インフラを介したリアルなトラフィックに変換するためには、PCでは役不足でありモバイルからのトラフィックをより増強させなければならない（このテーマは字数がもっと必要なので次回以降にまわそう）。
いずれにしてもFacebookは、PCからモバイルにシフトするインターネットトラフィックの効率的な換金方法を一刻も早く生み出さなければならない。IPOは大成功に間違いないものの、1～2年後にはモバイル領域で先行するAppleとGoogleが、やはり絶対覇者、ということになりかねないである。
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［筆者プロフィール］
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ（毎日コミュニケーションズ）、『Web2.0BOOK』（インプレス）、『仕事で使える!「Twitter」超入門』（青春出版社）、『ソーシャルメディアマーケティング』（ソフトバンククリエイティブ／共著）などがある。
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