楽天が写真共有型ソーシャルサービス Pinterestに出資した理由

楽天が写真共有型ソーシャルサービス Pinterestに出資した理由
2012年05月21日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

楽天が写真共有型のソーシャルネットワークサービス、Pinterestに出資した。これを意外と感じた人は多いかもしれない。PinterestはFacebook、Twitterに次ぐ全米第3位のSNSとして急成長しているが、日本での知名度はまだまだ低い。

FacebookがInstagramを買収したことでもわかるように、写真共有サービスが巨大なトラフィックを生む(つまりトラフィックエンジンである)ことは周知の事実であるが、そのトラフィックを換金するための方法(マネタイズエンジン)は、まだまだ確立されていない。おそらく広告よりはECに誘客するアフィリエイト型(リードジェネレーションともいう)のほうが向いていると思われる。

Instagramはマネタイズエンジンを確保する前にFacebookへ身売りしてしまったが、Pinterestは巨大ECへのリードジェネレーションによる手数料をマネタイズエンジンとしようと決めたのだろう。事実米国では、すでにeBayとAmazonが商品紹介ページにFacebookのLike(いいね!)ボタンと同様のPinterest用プラグインボタンを設置しており、商品の写真を友達と共有させる有力な一押し(一差し、というべきか)として期待が集まっているのだ。

なおPinterestについてはこの記事で詳述してあるので、参考までに一読してほしい。
■ソーシャルストリームを使った気鋭のサービス「Pinterest」
http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/22547/

ところで、楽天は2011年10月から楽天S4(Super Social Shop Service)という名称で、Facebookページやmixiページの作成・運用支援サービスを加盟店に提供しており、ソーシャルコマースに力を入れている。ソーシャルコマースというのは、ソーシャルメディア上でのクチコミを喚起し、そこで発生したトラフィックを自社サイト(この場合は楽天の加盟店のページ)に流入させることで売り上げアップを図るものだが、まだまだ効率よくトラフィックを引き込む手法が見つかってはいないのが現状だ。だから、ソーシャルコマースを標榜する企業たちはいまだ試行錯誤を続けており、より良い方法を模索し続けている。

その意味で今回の投資はこの動きの一環、といえる。楽天はPinterestの日本国内の事業展開に協力するほか、楽天IDとの連携なども検討するらしい。オバマ大統領などの著名人だけでなく、PUMA(http://pinterest.com/puma/)やGAP(http://pinterest.com/gap/)などのアパレルがすでに利用しているように、Facebookページに似た企業利用が始まっており、直接的に商品の購買につなげるような手法も出てきている。だから楽天の加盟店にS4サービスの一環としてPinterestページの作成サービスも始まるかもしれないし、ポイント連携なども視野に入れているだろう。

仮にPinterestとの連携がうまくいかなかったとしても、急成長を続けるPinterestがIPOを果たすかFacebookに買収されれば巨額の投資リターンが見込まれるから損はしないし、その前にAmazonやeBayあたりとがっちり提携されたり買収されたら元も子もない、という政治的な意図もあるかもしれない。

とはいえ、こうして巨額の投資を行い、強引ともとれる手法をとりながら自分たちの加盟店をソーシャルメディアに参加させていく楽天の姿勢には、ソーシャルコマースを根付かせるのは自分たちだ、という自信と気合いを感じざるをえない。

この世界は、早く動いた方が勝つ。AmazonもeBayも、もしかしたら今頃「してやられた」と、唇を噛み締めているかもしれない。




Pinterest

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ソーシャルストリームを使った気鋭のサービス「Pinterest」





[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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