垂直統合化が進むソーシャルメディアマーケティング業界

2012年06月19日
TEXT：小川 浩（株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター）

ソーシャル業界、特にエンタープライズソーシャル業界というべき分野で、大手企業による新興企業群の買収が相次いでいる。

まず、ソーシャルメディアマーケティング最大手といえるNYのベンチャー企業、BuddyMediaがSalesforce.comに6.9億ドルで買収された。また、Oracleが米McDonald'sやIKEAなどの顧客をもつVitrueを買収し（約3億ドルといわれる）、さらにMicrosoftが企業内ソーシャルシコミュニケーションシステムのスタートアップYammerを10億ドルで買収することを決めた。

Salesforce.comは自社ブランドの企業用ソーシャルコミュニケーションシステムChatterを擁し、顧客企業へのソーシャルテクノロジーの提供に関しては熱心であるから、最大手であるBuddyMediaを傘下におさめることでソーシャルCRM分野のナンバーワンを目指そうと考えているのだろう。Oracleはビッグデータビジネスを伸長させるうえで、ソーシャルメディア上で取得できる非構造的データの処理をうまくとりこもうという腹だと思われるし、Microsoftはオフィススイートにソーシャル機能を加えることで、Google対抗を考えていくに違いない。同時にGoogleはGoogle+を企業向けのソリューションにも適用し、Google Appsのさらなる普及を目指すはずだ。

このように、FacebookというメガSNSが覇権を唱えながらもPathやPinterest、LINEなどの（少人数用、画像共有、無料通話などの）特殊性を持った新興SNSが勢力を伸ばしはじめているコンシューマーソーシャルメディアとは違い、エンタープライズソーシャルの世界では、大手企業の積極的な買収によって統合化が進みつつある。

日本国内ではまだこうした動きがない、というよりはエンタープライズソーシャル業界に所属するスタートアップがまだ小粒な状態であるが、米国に遅れて半年から一年の間に、日本国内の大手ITベンダーや資金に余裕のあるインターネット企業による統合化が見られるかもしれない。

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［筆者プロフィール］
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ（毎日コミュニケーションズ）、『Web2.0BOOK』（インプレス）、『仕事で使える!「Twitter」超入門』（青春出版社）、『ソーシャルメディアマーケティング』（ソフトバンククリエイティブ／共著）などがある。
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