今さら聞けない! レンタルサーバの選定と便利な使い方 第1回

今さら聞けない! レンタルサーバの選定と便利な使い方 第1回
第1回 レンタルサーバの基礎知識

レンタルサーバを選定する際に、何を基準に選定を行うだろうか? 一言でレンタルサーバと言っても「共用サーバ」、「専用サーバ」、「VPSサービス」、「クラウドサービス」などのさまざまな種類が存在する。自分の案件がどのサーバにマッチしているかを見極めるには、各サーバの性質や特長を理解しておくことが重要だ。それぞれのサーバの特徴を抑え、案件にマッチしたサーバを選定することができれば、余計な作業やトラブルが発生することも少なくなり、これまで以上にWeb制作に専念できる環境を自分で整えることができるはずだ。

ここでは、知っていそうで知らない各種サーバの特徴やメリットを解説しよう。

解説・文:阿部正幸(KDDIウェブコミュニケーションズ)

■サーバの種類と特徴を捉える

 ここでは各サーバの特徴を紹介する。サーバのことがよくわからないという人は各サーバの違いを整理しながら、また、すでにサーバの知識はバッチリ! という人は、答え合わせの場として活用するといいだろう。

各サーバの特徴を比較したものが下記の図だ。この図を基にしながら、各サーバの説明をしていく。


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●共用サーバについて

 共用サーバは1台のサーバを複数のユーザーで使用(共用)するため、CPU、メモリ、HDD、ネットワークなどのリソースを分け合って使用(共有)する。そのため、1人(1社)のユーザーがCGIの暴走などにより他のユーザーのリソースを食いつくし、それ以外のユーザーのWebサイトが重くなるといった事態も起こりえる。要するに、自分(自社)のサーバ領域に他社のサーバ状況が影響される可能性が高い。そのため、メモリの使用制限や、プログラムのタイムアウトを厳しく設定するなどの対策を取っているホスティング会社もある。

 共用サーバは、簡単に利用でき利用料金も安いため、使いやすいサーバであると言える。Web制作の現場で最も多く使われているサーバかもしれない。本連載をご覧のWeb制作者の方々も、なじみのあるサーバではないだろうか。


●専用サーバ(root権限なし)について

 専用サーバは2つの種類がある。まずはroot権限のない専用サーバについて説明しよう。このroot権限なしの専用サーバを、マネージドサーバと呼んでいるところも多い。当社(CPI)でも、マネージドサーバと名付けられている。専用サーバ(root権限なし)は、各社とも違いはあるが、一般的な場合、共用サーバ1台を1ユーザーが占有できる。他ユーザーの影響によりサーバがダウンするなどがなくなり、共用サーバのような厳しいメモリ制限も緩和される。サーバの設定やセキュリティーアップデートはホスティング会社が行うため、ユーザーは専門知識がなくてもサーバを運用することが可能だ。

 サーバを1台占有できるため、料金は高価だ。また、root権限はホスティング会社が持っているため、細かいサーバ設定はできない。1台を占有でき、1ユーザーでサーバリソースを全て使えるので、動的コンテンツを中心としたサイトや、セキュリティが重要視されているサイトや、アクセス数の多いサイトに適していると言える。


●専用サーバ(root権限付き)について

 専用サーバ(root権限付き)は、1台のサーバを1ユーザーが占有でき、さらに好きなソフトウェアをインストールする事が可能だ。ユーザーにroot権限が付与されるため、サーバを好きなようにカスタマイズできる。root権限付きのサーバはセットアップ、監視、セキュリティーアップデート等をユーザーが行う事が多いが、オプション等でこれらのサービスを用意しているホスティングサービスもある。

 root権限付き専用サーバは、1台を占有できるため、料金は高価だ。root権限を使い、ユーザーが細かい設定を自由にできる。動的サイトを中心としたサイトを構築する場合や特殊なプログラムなどを利用する場合などの、比較的大きな案件に利用するといいだろう。ただし、Web制作だけでなく、サーバ運用の知識や経験を求められるサーバだと言えるので、注意が必要だ。


●VPSサービスについて

 VPSサービスは、1台のサーバに複数の仮想サーバ領域を用意し、サーバのリソースを割り当てて利用する。ユーザーはroot権限を持つことができるため、好きなソフトウェア等を自由にインストールする事が可能だ。専用サーバ(root権限付き)は、物理的に1台のサーバを占有できるが、VPSは仮想サーバを占有する事ができる。自由度はあまり変わらないが、VPSは仮想サーバなので、物理サーバを占有するよりも安価に利用することが可能だ。

 動的サイトを中心としたサイトを構築し、特殊なプログラムなどを利用したい場合に適したサーバだ。root権限付きのサーバであるため、自由にサーバ設定ができる。サーバ運用の知識や経験を求められるため、技術者や開発者が好むサーバであると言える。


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 各サーバを住居で例えると、共用サーバは、寮のようなものだ。共同生活を行っているので様々なルールが厳しく設定されている。ルールさえ守れば、安いので快適に暮らせる。もしかしたら隣に美女サイトが同居するかもしれない(笑)。

 専用サーバ(root権限なし)は、賃貸の一軒家で暮らす。共同生活の様なルールは緩和されるが、自分の好みで部屋の壁を勝手に貼り替えたりする権利はない。

 専用サーバ(root権限付き)は、自分で一軒家を買う(実際のサーバはあくまでもレンタルだが)。自分で、駐車場も屋根も好きなようにカスタマイズできる。

 VPSサービスは、自分でマンションの一室を買う。自分の部屋の壁や床を好きなようにカスタマイズすることができるが、エントランスやエレベーターなど、マンションの共用部分に関しては他の住居者と共同のため制限がある。

 この様にレンタルサーバと言ってもさまざまな種類のサーバが存在する。当社も「共用サーバ」、「専用サーバ」、「VPSサーバ」といった各種サーバを取り揃えている。使いやすく、料金の安い共用サーバを選べば、他ユーザーの影響を受ける可能性があるし、1台を占有でき自由度の高い専用サーバを選べば、料金が高くなり、サーバ運用の知識や経験も必要になる。抱えている案件の規模や予算を熟知することはもちろんだが、自分のサーバに対する知識や経験を加味した上でサーバ選びするといいだろう。



 今回は各サーバの紹介に留まったが、次回からはWeb制作者に最も馴染みのあるであろう、共用サーバの選び方について、サーバ運用のスキルアップに役立つポイントも紹介しながら進めていく。

[プロフィール]
KDDIウェブコミュニケーションズ
企画開発本部 阿部正幸

●Web制作の現場でプログラム、ディレクションなどを担当。現在は、ホスティングブランド『CPI』の共用サーバのプロダクトマネージャーを担当し、先日提供を開始したサーバツール「SmartRelease」の企画・立案を行う。url:http://www.cpi.ad.jp/shared/smartrelease/

2012/08/22

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