今さら聞けない! レンタルサーバの選定と便利な使い方 第2回

今さら聞けない! レンタルサーバの選定と便利な使い方 第2回
第2回 レンタルサーバの性能を調査する

 みなさんはレンタルサーバをどのような基準で選定しているだろうか。インプレスR&Dインターネット生活研究所から出版されている、レンタルサーバ事業調査報告書によれば、ここ数年の間でレンタルサーバの価格は下落している傾向にあると言われている。現に各社サーバの料金を見ると、月額500円~などの低価格のサーバを目にすることが多い。低価格サーバの人気や手軽さから金額だけで選んでしまい、後々トラブルにつながるというケースも考えられる。安価なサーバが決して悪いわけではないが、安価なレンタルサーバを選んで失敗することがないよう、サーバ選定時におけるポイントをいくつか紹介しよう。

解説・文:阿部正幸(KDDIウェブコミュニケーションズ)



■共用サーバの性能を比較する

 ここで紹介したいのはベンチマークソフトだ。ベンチマークソフトを使うと簡単にサーバやネットワークの性能を評価することができる。ベンチマークソフトはインターネットに多数公開されているので、好みのソフトを使うのが良いだろう。今回は「PHPspeed Benchmark」というソフトを紹介する。

PHPspeed Benchmarkは下記のURLからダウンロードする事が可能だ。
url. http://www.phpspeed.com/

ダウンロードを行い、対象のサーバにインストール設置した後、ブラウザ上からベンチマークソフトにアクセスし実行すると、【図1】のような結果が返ってくる。この結果の数値が高ければ高いほど高性能なサーバと言える。ただし、共用サーバーは他ユーザーの影響を受けるので、ベンチマークを複数回実行し、その平均値を参考にするのが良いだろう。


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図に表示した結果画面は当社共用サーバで実行した結果である

Web制作の現場で多く使用されているCMSを導入する場合などは、PHPとMySQLのベンチマークの数値が重要と言えるだろう。CMSを導入し、応答速度に不満を感じているのであれば、各社のお試しサーバに申し込み、ベンチマークを測定してみるのも良い。共用サーバの性質上、必ず同じスコアが出るとは限らないが、ひとつの指標となる。




■メモリ制限を確認する

レンタルサーバに、PHPを使用したCMSなどの動的コンテンツを導入する場合、PHPのメモリ制限について事前に調査する必要がある。いざ運用を開始したあとに、メモリ制限に引っかかり動作しないなどのトラブルを未然に防ぐためである。

調査には、下記のコードを書いた.phpファイルをサーバにアップロードし、Webブラウザからアクセスするだけでいい。

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ファイル名:phpinfo.php

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ブラウザからアップロードしたphpinfo.phpにアクセスすると下図の画面が出力される。


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出力されたページはPHPのさまざまな設定を確認することができる。

まずは「memory_limit」を確認しよう。memory_limitはスクリプトが確保できる最大のメモリ数だ。CMSによってはmemory_limtが○○M以上必須となっている場合もあるので注意が必要だ。


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次に「upload_max_filesize」を確認しよう。アップロードできる最大のファイルサイズがわかる。


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例えば、upload_max_filesizeが2Mに設定されていると2M以上のファイルがアップロードできなくなる。デジカメや携帯で撮影した2M以上の写真はCMSを使ってアップロードできないので、CMSでデジカメで撮影したファイルをアップロードする要件がある場合は、必ずこの数値を確認した方が良いだろう。


次に「post_max_size」を確認しよう。postデータに許可される最大サイズがわかる。このサイズはプログラム間でさまざまなデータの受け渡しを行うが、その受け渡しに利用出来るメモリのサイズだ。この数値が低いと大きいデータのやり取りができなくなる。jsonやXMLデータなどを使用し、比較的サイズが大きくなるような場合は注意が必要だ。



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ほかにもPHPの各種モジュールが動作しているかなどを確認することができる。さらに詳しい情報はPHPの公式サイトから確認を行って欲しい。


今回のコラムではベンチマークについてと、PHPのメモリ制限について話をしたが、どちらも動的コンテンツを置く場合には非常に重要な項目だ。必ず本契約前に調査を行うと良いだろう。




最後に、先日レンタルサーバについて「現在共用サーバを借りているが、専用サーバに乗り換えるとWebサイトの表示速度は上がるのですか?」という質問をされたので紹介したい。

これは非常によくされる質問だが、聞かれるたびに私は決まってこう答える。

『Webページをブラウザ画面に表示させるには、おもに4つの行程を経て表示されるので、どこの速度が遅いのかを見極める必要があります。もしかしたらWebサーバには問題が無いかもしれない。さらに安価な専用サーバを借りると、共用サーバよりもスペックが劣る場合があります。そのような場合はWebサーバの処理速度すら向上しません。よって一概に専用サーバに変えたからと言ってWebの表示速度は上がるは言えず、案件に合ったサーバを選ぶということがとても重要なのです』


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このように、ユーザーからこの質問を受けるたびに考えてしまうのだが、ユーザーが疑問に思うということは、ホスティング会社の説明やWebサイトが不十分な点があるからではないかと思う。ホスティングと言うのは非常に分かりづらいサービスで、説明も難しい点が多い。しかし、ユーザーにはより簡単に伝わるようにしなくてはならない。ユーザーから質問を受けるたびに、サービスの説明や見せ方が不十分であるのだと気付かされるわけだが、こうした質問はホスティング業界に携わる人間にとっては大変ありがたく思う。


さて、今回は共用サーバ選定のポイントを紹介した。サーバ選定に悩んだり、サーバの選定方法が分からないWeb制作者には、まずまずの内容だったのではないだろうか。

次回のコラムではレンタルサーバで使われる用語(マルチドメイン、再販など)について説明をしよう。



[プロフィール]
KDDIウェブコミュニケーションズ
企画開発本部 阿部正幸

●Web制作の現場でプログラム、ディレクションなどを担当。現在は、ホスティングブランド『CPI』の共用サーバのプロダクトマネージャーを担当し、先日提供を開始したサーバツール「SmartRelease」の企画・立案を行う。url:http://www.cpi.ad.jp/shared/smartrelease/

2012/08/29

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