今さら聞けない! レンタルサーバの選定と便利な使い方 第3回

今さら聞けない! レンタルサーバの選定と便利な使い方 第3回
第3回 レンタルサーバで使われている分かりにくい用語説明


前回はWeb制作者にとって最も馴染みがあるであろう「共用サーバ」の選定について紹介した。これまでのおさらいとなるが、共用サーバを選定する際は、価格やハードディスクドライブの容量、メモリの制限、データベースの個数などを確認するのが基本と述べてきた。が、実はこれら以外にも重要なポイントがいくつかある。今回はレンタルサーバの機能一覧に記載される分かりづらい用語の説明と選定時の更なるポイントを紹介しよう。

解説・文:阿部正幸(KDDIウェブコミュニケーションズ)




■マルチドメイン

マルチドメインとは、1つのサーバ契約で複数のドメイン(Webサイト)を利用することができる機能だ。例えば、契約したドメイン(Webサイト)がwww.cpi.ad.jpである場合、その同じひとつの契約で違うドメイン(Webサイト)www.kddi-web.ne.jpを利用することができるというもの。複数サイトを運営する場合は、このマルチドメインを利用できるサーバを選ぶことでコストを抑えることが可能だ。


(▲クリックして拡大)1社で10サイトを運用する場合

では、なぜコストを抑えることができるのか。上記の図を見れば一目瞭然だ。1社で10サイトを運用する場合、一見すると月額の安いA社で契約を行ったほうがコストを抑えられそうだが、A社はマルチドメインがなしのため、500円×10契約で、月額5,000円のコストがかかる。B社の場合、マルチドメインが20個まで利用できるので、マルチドメイン機能を使って1契約で10サイト運用できる。そのため、月額2,000円ですべて運用することが可能となる。マルチドメイン機能を使用することで、低価格で各サイトを運用することができるのである。


ただし、マルチドメインを利用するには何点かの注意が必要だ。各社によって仕様は異なるが、主契約は独自ドメインSSLが利用できるが、マルチドメインは利用できない場合や有料オプションが付与できないなどの制限がかかっている場合がある。また、主契約ドメインとマルチドメインは1つのサーバに搭載されることが多いのが現状だ。このような場合、1つのサーバで障害が生じた際、そのほかのドメイン(Webサイト)でも障害が起こる可能性がある。

コストを抑えることができるという点はマルチドメイン機能はとても便利な機能だが、注意点を理解した上で利用したい。




■再販制度

再販制度について知っている人は、それほど多くないだろう。再販制度とはWeb制作会社にとって、とても重要な項目となる。Web制作会社がサーバを契約し、A社のWebサイトを構築したとする。次にB社の制作案件を受注した場合、再販制度が許可されていればB社のWebサイトを構築する際に、同じ契約内でマルチドメインを利用し構築することができる。許可されていないレンタルサーバの場合は、もう1契約が必要となる。

複数のクライアントを保有しているWeb制作会社は、再販制度を利用しサーバ契約を1つにまとめることで、コストを抑えることが可能だ。


(▲クリックして拡大)
10クライアントそれぞれで2サイトずつ運用する場合

A社の場合:20契約(10クライアント×2サイト)×500円=月額:10,000円
B社の場合:10契約(10クライアント×1サイト分※マルチドメイン利用のため)×2,000円=月額20,000円
C社の場合:1契約(10クライアントは再販制度利用、2サイトはマルチドメイン利用)×4,000円=月額4,000円

一見するとC社がコスト的に一番高そうだが、利用するサイト数によって、月額を大きく抑えることが可能だ。複数のクライアントで複数のサイトを運用する際、利用するといいだろう。




■独自ドメインSSLサーバ証明書


通常、インターネットの通信は、平文(暗号化されていない普通の文章)で通信を行っているので、第三者が情報を傍受し閲覧することが可能だ。クレジットカード情報や個人情報を取り扱うサイトなどの場合は情報漏洩を防ぐためにもSSL暗号化通信を行う必要がある。

その暗号化通信を行う際に使われるのがSSLサーバ証明書だ。SSLサーバ証明書は、表示しているドメイン所有者の証明(実在証明ともいう)と、ブラウザとWebサーバ間の暗号化通信を行うものだ。

サーバ証明書は、ユーザーが契約したドメインを証明するための証明書となる。サーバによっては独自ドメイン証明書が使えない場合もある。その場合は共有SSLなどと呼ばれている機能を使うのだが、共用SSLはドメイン所有者の証明はできない。また複数ユーザーで利用することから、cookie盗聴などのセキュリティーホールがあることも報告されているので注意が必要だ。個人情報等を取り扱う場合は独自ドメインSSL証明書を使うのが良いだろう。


(▲クリックして拡大)


今回のコラムでは、「マルチドメイン」、「再販制度」、「独自ドメインSSLサーバ証明書」について紹介したが、覚えておくとコストを抑えるのに役立つ機能なのでサーバを借りる場合は是非これらの項目をチェックして欲しい。

第1回から3回目までで、サーバ選定についてのコラムを掲載したが、複数回に渡ったので、以下にまとめる。サーバ選定(共用サーバ)を行う場合は要件にマッチしたサーバの中からこれらの項目を調べ、あとは価格と使いやすさで選定すると良いだろう。

【サーバ選定のまとめ】
・サーバのスペックを調べる
(フリーソフトで簡単に調べることができる)
・プログラムのバージョンを調べる
(Perl、PHP、MySQL、Apacheなど)
・PHPのメモリー制限に注意する
(画像アップロードなど出来ない場合がある)
・1契約でいくつサイトを乗せられるかを確認する。
(マルチドメイン数、データベース数と再販制度について調べる)
・SSL通信を利用する場合は、独自ドメインSSLが必要かどうかを確認する



それでは今回も最後に、ユーザーからこんな質問をされたので紹介しよう。

「絶対に落ちないサーバ、絶対にデータが消えないサーバはありますか?」という質問だ。

私は決まって「ない」と答えている。もちろんサーバを落ちにくくすることや、データが消えにくくすることは技術的には可能だが、100%落ちないサーバと言うのは現在の技術では不可能と言えるだろう。サーバが落ちたときやデータが消えたときなどの万一に備え、必ずバックアップを取得しておくなどの事前準備を怠らないことが重要だ。このことを忘れないで欲しい。

さて、次回は「覚えておくと便利なサーバの使い方」を紹介する予定だ。


[プロフィール]
KDDIウェブコミュニケーションズ
企画開発本部 阿部正幸

●Web制作の現場でプログラム、ディレクションなどを担当。現在は、ホスティングブランド『CPI』の共用サーバのプロダクトマネージャーを担当し、先日提供を開始したサーバツール「SmartRelease」の企画・立案を行う。url:http://www.cpi.ad.jp/shared/smartrelease/

2012/09/05

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