今さら聞けない! レンタルサーバの選定と便利な使い方 第5回

今さら聞けない! レンタルサーバの選定と便利な使い方 第5回
第5回 テスト環境を構築しよう

 Web制作を行う際、「テストサイトの構築」→「テストサイトで制作」→「テストサイトで確認」→「公開サイトへのファイルのアップロード」というスキームは、Webサイトの品質を守るという意味で、とても重要なことだ。事業規模の大きな制作会社になれば、自社でテストサイトを構築し運用するケースもあるようだが、テストと公開サイトのサーバOS間の違いなどにより、テストサイトで確認した内容が実際の公開サイトで動作しないといったトラブルや、コスト面で費用が高くなるといった問題もあり、一般的な制作会社での運用は現実的でない場合が多い。

 そこで今回は、さまざまなテストサイトの構築方法がある中、共用レンタルサーバのマルチドメイン機能を使って、テストサイトを構築する方法とその注意点を紹介する。

解説・文:阿部正幸(KDDIウェブコミュニケーションズ)



■マルチドメインを利用して作るテストサイトのメリット

まずはマルチドメインを利用して作るテストサイトのメリットについて解説しよう。大きく3つがあげられる。
※なお、マルチドメインについては第3回目のコラムで紹介したので、そちらで確認をしていただきたい。

【メリット】
1.PHPやPerlなどのプログラムのバージョンが同じ
2.アクセス制限や、データベースなどの接続方法などが同じ
3.同じサーバ筐体が使われることがほとんどなので、負荷テストや表示速度のテストなどに利用できる
 ※筐体の形状には、「ラックマウント型」「タワー型(ペディスタル型)」「ブレード型」などがある

このように、テストサイトと公開サイトで同じプログラムや筐体が利用できるのでテストサイトで動作確認した内容が、公開サイトでも動作すると言える。


CPIのマルチドメインの説明。CPIのマルチドメインでは無制限となっている

ただし、このマルチドメインを使ったテストサイト運用方法にもデメリットが存在する。

【デメリット】
1.URLが違う
2.サーバの内部パスが違う
3.wwwに公開される

静的なコンテンツのみでWebサイトを構築している場合、もっとも注意しなくてはならないのが、3番目の「wwwに公開される」だ。

ではどうしたら、このデメリットを回避できるか紹介しよう。




●「wwwに公開される」のを防ぐ回避方法

【1】パスワード認証を設定する
Basic認証という機能を使うと、サイトを訪問した時に、ユーザー名とパスワードの要求を行い特定のユーザだけをアクセス可能にすることができる。


(▲クリックして拡大)

Basic認証は共用サーバのコントロールパネルから設定できるのがほとんどなので、各社のコントロールパネルから設定を行うことで簡単にアクセスを制限することが可能だ。設定を行うと以下の2ファイルが生成される。


(▲クリックして拡大)

「.htaccess」ファイルにはBasic認証の設定が記述され「.htpasswd」ファイルにはIDとパスワードが記述される。


【2】接続元のIPアドレスを制限する
「.htaccess」を利用して、特定のIPアドレスユーザーのみをアクセスさせる事が可能だ。記述方法の詳細に関してはWebで検索を行うとより詳しい情報を得る事ができるので、ここでは例として「202.133.123.193」からの接続だけを許可する方法を紹介しよう。

-----------------------------
order deny,allow
deny from all
allow from 202.133.123.193
-----------------------------

この3行を.htaccessファイルに記述し、Webサーバに設置するだけでアクセスを制限することが可能だ。

他にもアクセスを制限する方法として様々な方法が存在する。レンタルサーバを利用したテストサイト構築には何らかの方法でアクセスを制限すると良いだろう。


【3】URLが違う
画像のパスやリンクなどの絶対パス(URLが入ったパス)を使用する場合は、公開サイトへアップロードする際にすべて書き換える必要がある。CMSで人気のWordPressも画像を挿入すると絶対パスが使用されるので、WordPressを使ってWebを構築した場合も書き換える必要がある。


【4】サーバの内部パスが違う
PHPやPerlを使ってプログラムを作成する場合に、サーバの内部パスを指定して記述する場合がある。
(例)
/home/user111/www/html/css (公開サイトの例)
/home/user222/www/html/css (テストサイトの例)

このようにマルチドメインを利用してテストサイトの構築を行うとサーバの内部パスが変わるので、公開サイトへアップロードする場合は書き換える必要がある。

マルチドメインを利用したテストサイトの構築には、これらのデメリットが存在するが、無料で使える上、テストサイトと公開サイトが同じ環境と言うことが最大のメリットだ。これまでテストサイトを運用していなかった制作会社や、サイトオーナーはサーバ契約があればすぐにでも利用できるのでぜひ利用してもらいたい。

さて次週の最終回では、万一に備えたバックアップの取得方法「レンタルサーバの便利な使い方:バックアップを取得しよう」を説明する。



[プロフィール]
KDDIウェブコミュニケーションズ
企画開発本部 阿部正幸

●Web制作の現場でプログラム、ディレクションなどを担当。現在は、ホスティングブランド『CPI』の共用サーバのプロダクトマネージャーを担当し、先日提供を開始したサーバツール「SmartRelease」の企画・立案を行う。url:http://www.cpi.ad.jp/shared/smartrelease/

2012/09/12

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