Webクリエイター視点で見るWindows 8のInternet Explorer 10

Webクリエイター視点で見るWindows 8のInternet Explorer 10
2012年10月26日
TEXT:久保靖資

ふたつのスタイルで登場するInternet Explorer 10

10月26日に発売となったWindows 8には、新しいUIに対応したInternet Explorer 10が搭載されている。Windows 8登場以前より、Windows 7上でプレビューできるPlatform Previewや開発過程のベータ版として提供されてきたDeveloper Previewなどを試用してきたユーザもいると思うが、ここで改めて新しくなったInternet Explorer 10の概略を見てみよう。


多様なプラットホームに展開されるInternet Explorer 10

Windows 8に標準搭載されているInternet Explorer 10(以下、IE10)。新しいIE10は、Windows 8だけでなく、同時に発売開始されたMicrosoft社のタブレット「Surface with Windows RT」や次期Windows Phone 8にも搭載されてくる。また、Windows 7向けのIE10も提供が予定されるなど、多様なプラットフォームで展開される。ここ最近、Google Chromeの台頭が目覚しいブラウザマーケットではあるが、インストールベースでは今後も圧倒的なシェアを握り続けると予想されるのがInternet Explorerファミリーといえる。

したがって、Webコンテンツを開発するクリエイターにとっては、新たなブラウザに登場に、ある意味脅威を感じている方もいるのではないだろうか。そこで、本稿ではWindowsベースのIE10について、その概要を確認しておきたい。


ふたつのスタイルで利用するInternet Explorer 10

Windows 8では、従来どおりのアプリケーションウィンドウベースで利用できる「デスクトップ版」とタッチ操作に最適化された新しいWindows UIのIE10というふたつのスタイルで利用できるようになっており、コアエンジンは同じだが、UIが大きく異なるほか、動作制限にも違いがある。

もっとも大きな違いは、新しいWindows UIのIE10ではAdobe Flash Playerだけでなく、同社のSilverlightも含んだ各種プラグインをサポートしないという点。マイクロソフト社のコメントでも、Webアプリ的なコンテンツはプラグインではなく、HTML5による実装を促している。
一方、デスクトップ版は下位互換性を保持し、各種プラグインをサポート。したがって、Flashコンテンツなどを掲載するWebサイトはデスクトップ版で閲覧する必要があるが、32bit版ではUAに違いがないため、スクリプトでの振り分けが困難(64bit版ではUAに違いがある)。

これに対してはMicrosoft側で対応策を用意しており、HTTPレスポンスヘッダーもしくはmetaタグによる記述でデスクトップ版への誘導が可能。

ちなみに、Flash PlayerはIE10に同梱され、プラグイン個別のアップデートは必要なく、Windows Updateで提供される。

さらに、Flashコンテンツの再生に関する規定は一部緩和され、Microsoft社の審査に合格したWebサイトは「CVList(Compatibility View List)に登録されることで、Flashコンテンツの閲覧が許可される。ただし、新しいWindows UIのIE10のFlash Playerはフルセットではなく、サブセット版。ハードウェアアクセスなどの機能は一部制限がかかる点に注意したい。


ふたつのスタイルで提供されるIE10。左がデスクトップ版IE10、右が新しいWindows UIのIE10。新しいWindows UIのIE10は基本的に全画面で表示され、ユーザーのしたいことによってUIが変化する。こちらは上部と下部のアプリバーを表示されたモード



HTTPレスポンスヘッダーX-UA-Compatible: requiresActiveX=true
metaタグ<meta http-equiv="X-UA-Compatible" content="requiresActiveX=true">
HTTPレスポンスヘッダーもしくはmetaタグによってデスクトップ版での閲覧に誘導することができる


大幅なパフォーマンスアップ

IE10は、Windows 8標準搭載ブラウザとしてタッチデバイスに最適化されたUIを持つだけでなく、パフォーマンスの向上と操作性の改善、セキュリティ対策などが随所に施されている。

パフォーマンスの向上はあきらかであり、OSともあいまってGPUを最大限生かすことにより、レンダリング性能は大幅にアップ。IE9から搭載されたJavaScriptエンジンChakraも64bit版でのJIT(Just-In-Time)対応をはじめ、機能改良によりパフォーマンスアップ。第三者によるベンチマークテストでも高い評価を得ている。実際のパフォーマンスに関しては、Microsoft社のサイト「Test Drive」に掲載されている多くのデモで体験することも可能だ。

いずれにしろIE10のパフォーマンスは、HTML5によるWebコンテンツ(Webアプリ)を協力に支援する環境として、Webクリエイターにとっては推奨環境になるともいえるのではないだろうか。

■Internet Explorer 10 Test Drive
http://ie.microsoft.com/testdrive/


Internet Explorer 10 Test Driveで体験できる「Bubbles!!!」。閲覧しているブラウザアイコンが泡のような動きをする。再生フレームレートなど、実際のパフォーマンスレベルを確認できる


Webクリエイターにとっての利便性の向上

かつては独自路線を推し進めることでクリエイターからは距離感を置かれていたMicrosoft社であるが、現在ではWeb標準準拠を推進する企業として率先してクリエイター支援を行っていることはご存知だろうか。

たとえば、Windows 8、そしてIE10ともにCSS3やECMAScript 5への高度な対応だけでなく、今後普及が加速するであろうタッチデバイスへの最適化を考慮し、ポインターやジェスチャ操作に関するAPIをW3Cに提唱するなど積極的なアプローチを行っている。

また、開発者に向けたより具体的な機能性の提供としては、IE8から標準搭載されている開発者ツール機能は「F12 開発者ツール」として機能強化が図られている。Webクリエイターであればご存知のFirebug同様にCSSやスクリプト、DOMなどの情報を取得できる強力なデバッグ環境である。また、カラーピッカーやルーラーといったツールも同梱されており、これらのツールを個別に組み込む必要がない点も利便性が高い。

今後もメインターゲットブラウザと考えられるIEでもあるため、Webコンテンツのデバッグ環境としてもIE10をメインブラウザと考えるのも有効ではないかと考える。


「F12 開発者ツール」はFirebugと同様のWebコンテンツデバッグ環境としてかなり有効


「F12 開発者ツール」に同梱されるルーラー。ブロック要素にフィットするため、横幅の確認など効率的に行うことができる


なお、今回紹介している情報の多くは、マイクロソフトのWebサイト「Windows Internet Explorerデベロッパーセンター」などで公開されているので、ぜひ参照してみてほしい。

■Windows Internet Explorerデベロッパーセンター
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/ie/



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