第1回 沖縄の文化を電子書籍で発信したい――「沖縄eBooks」(前編)

第1回 沖縄の文化を電子書籍で発信したい――「沖縄eBooks」(前編)
2012年12月11日
TEXT:佐藤 勝(株式会社フレア)

沖縄独自の出版文化圏、大多数が県内だけで流通
日本のなかでも独特の文化と歴史をもつ沖縄県では、大小さまざまな50以上の出版社がフリーペーパー、タウン誌、情報誌、観光ガイド、実用書、教育書など、地域の文化や情勢に根ざした出版物を発行し、独自の出版文化を形成している。

それらの「沖縄県産本」は、沖縄県内では流通しているが、本土の書店の棚にも並ぶものは決して多くない。本土から沖縄へは毎年500万人以上の観光客が訪れているにもかかわらず、観光客のほとんどは本土の出版社などが発行するガイドブックや旅行雑誌などを参考にすることはあっても、本土で流通していない沖縄県産本を見る機会はきわめて少なかった。

だが、電子出版という新しいビジネスモデルへの関心が高まるなか、沖縄地域で発行されている書籍や雑誌などを集めて電子書籍化して発信するポータルサイト「沖縄eBooks」(http://www.okinawa-ebook.com/)が2011年5月に正式オープン(同年1月にプレオープン)。沖縄の出版文化を県外に発信する取り組みとして、県内のメディアだけでなく、IT関連の情報を紹介するニュースサイトなどでも取り上げられ、注目を集めた。

1958年のグラフ誌からタウン誌・フリーペーパーまで
「沖縄eBooks」コンテンツの顔ぶれは、1958年創刊の写真月刊誌『オキナワグラフ』(新星出版)、県民向けの沖縄ガイドブック『OKINAWA 100シリーズ』(株式会社近代美術)、米軍基地内で発行されている英字新聞『JAPAN UPDATE WEEKLY』、『沖縄戦の全女子学徒隊』(有限会社フォレスト)、『体にやさしい お家で作れる沖縄そば』(大貫修弘著)などの書籍や、沖縄発のコミック誌『月刊コミックチャンプルー』(株式会社コミチャン)、住宅情報誌『うちなーらいふ』(ネットライフ有限会社)のほか、グルメ、求人、美容、野球、ライフスタイルなど、さまざまなジャンルの情報誌やフリーペーパーが揃う。

『オキナワグラフ』のように、現在では入手困難な数多くのバックナンバーが閲覧できたり、フリーペーパーで沖縄のローカルな情報を収集できたりと、県内在住者はもちろん、県外で沖縄に関心のある人にとっても利用価値が高いものが多く、新しいコンテンツも随時追加されている。

この「沖縄eBooks」は、沖縄の文化的財産ともいえる県産本を電子書籍化し、全国に発信していく最初のきっかけとなった、きわめて重要なプロジェクトだ。次回から、運営を担う株式会社近代美術の関係者にお話を伺いながら、そのコンセプトや展望について見ていきたい。

■沖縄eBooks
URL:http://www.okinawa-ebook.com/


「沖縄eBooks」のポータルサイト。さまざまな電子書籍がジャンルごとに整理されていて、ここから各コンテンツの「購入」「試し読み」画面に誘導している


財団法人沖縄観光コンベンションビューローが隔月発行している、無料の観光情報誌『Mahae Press (マハエプレス) 』。フリーペーパーは電子書籍でも無料で閲覧できるので、沖縄のローカル情報の収集に役立てることができる


沖縄の食文化を代表し、観光客にも人気の「沖縄そば」の作り方がわかる『体にやさしい お家で作れる沖縄そば』(価格:500円)。近所のスーパーにある食材を使って、専門店にひけを取らない美味しい沖縄そばが作れる詳しいレシピを収録




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[筆者プロフィール]
佐藤勝(さとう・まさる)●1975年大阪生まれ。2002年から中国関係の団体で中国社会や日中関係の取材に約8年携わり、2010年『eBookジャーナル』(株式会社マイナビ)創刊号から2012年の第7号まで、電子出版のビジネス動向や電子書籍の制作などを取材。電子出版を活かした地域再生などに関する取材も継続。その他、グラフィックデザイン関連の雑誌・書籍などを制作しています。株式会社フレア(http://www.flair.co.jp/)所属。

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