第7回 魅力的な本を発掘し、電子出版を盛り上げたい――ブックリスタ、ソニーによる配信協力（後編）
第7回 魅力的な本を発掘し、電子出版を盛り上げたい――ブックリスタ、ソニーによる配信協力（後編）
2013年01月30日
TEXT：佐藤 勝（株式会社フレア）
※本記事は連載「電子出版で地域を救う！ 沖縄県産本を日本全国、そして世界へ」の第7回記事になります。
「Reader Store」などでの沖縄県産本の配信に協力しているソニー株式会社の野村秀樹さん、株式会社ブックリスタの佐久間博さんに、電子書籍事業を進める立場からそれぞれの思いを聞かせてもらった。
本ができるまでのストーリーも理解してもらいたい
「沖縄県産本の配信開始以来、さまざまな方面からお問い合わせをいただき、反響の大きさに驚いています。沖縄県産本を取り扱うにあたって、私たちブックリスタは、あらゆる電子書籍ストアにどんどん営業をかけていこうというスタンスではありません。たとえば『おきなわ文庫』は秋山さんの懸命な努力があってこそ配信に至ったもの。本そのものの価値はもちろん、本ができるまでのストーリーもしっかり説明し、理解していただけたところで扱ってもらいたいと思うのです」
独自に作成した沖縄県産本のスライド資料を広げながら、佐久間さんはこう語る。
「Reader Storeの場合、ユーザーは30代以上の読書好きな方が中心ですので、上質な沖縄県産本は新しい読書体験を提案できる魅力的なコンテンツだと考えています。電子書籍はたんに品揃えだけでなく、サービスの使い勝手、端末の使用体験、ストアのつくりなどがマッチしてはじめてユーザーに届くもの。沖縄県産本もしっかりと届けられるように、トータルな形で展開していきたいと思います」
TEXT：佐藤 勝（株式会社フレア）
※本記事は連載「電子出版で地域を救う！ 沖縄県産本を日本全国、そして世界へ」の第7回記事になります。
「Reader Store」などでの沖縄県産本の配信に協力しているソニー株式会社の野村秀樹さん、株式会社ブックリスタの佐久間博さんに、電子書籍事業を進める立場からそれぞれの思いを聞かせてもらった。
本ができるまでのストーリーも理解してもらいたい
「沖縄県産本の配信開始以来、さまざまな方面からお問い合わせをいただき、反響の大きさに驚いています。沖縄県産本を取り扱うにあたって、私たちブックリスタは、あらゆる電子書籍ストアにどんどん営業をかけていこうというスタンスではありません。たとえば『おきなわ文庫』は秋山さんの懸命な努力があってこそ配信に至ったもの。本そのものの価値はもちろん、本ができるまでのストーリーもしっかり説明し、理解していただけたところで扱ってもらいたいと思うのです」
独自に作成した沖縄県産本のスライド資料を広げながら、佐久間さんはこう語る。
「Reader Storeの場合、ユーザーは30代以上の読書好きな方が中心ですので、上質な沖縄県産本は新しい読書体験を提案できる魅力的なコンテンツだと考えています。電子書籍はたんに品揃えだけでなく、サービスの使い勝手、端末の使用体験、ストアのつくりなどがマッチしてはじめてユーザーに届くもの。沖縄県産本もしっかりと届けられるように、トータルな形で展開していきたいと思います」
良質の電子書籍を世に出して、市場を盛り上げたい
一方、Reader Storeを展開するソニーは、沖縄で電子書籍データの制作を担う株式会社近代美術に電子書籍の制作技術を供与。国内の多くの電子書籍ストアで使われているXMDFフォーマットに加え、新たに国際標準になりつつあるEPUB3フォーマットについても情報やサンプルを提供し、海外も視野に入れつつ適切なデータが制作できるように支援している。プロモーションにおいても、「Reader Store」を宣伝する新聞広告などに沖縄県産本を登場させている。地方発のコンテンツであるにもかかわらず、野村さんが手厚い支援を行う理由はなんだろうか。
「私たちは1990年代から国内外で電子書籍事業にチャレンジしてきた経験から『オープンに進めなければならない』ということを学びました。データづくりや端末、ストア、コンテンツなどを私たちだけで囲い込むのではなく、出版物を取りまとめている会社の方々に情報や技術をお渡しして一緒に電子書籍をつくり、どう展開していくかなども含めて一緒に考え、市場を盛り上げていきたいのです」
国内外の配信業者が電子出版事業に次々と参入しているが、日本の電子書籍市場自体はまだまだこれからというところ。だからこそ、読者を引き寄せるコンテンツが重要というわけだ。
「沖縄県産本の配信も、『まず自分が読みたいし、みんなも読みたいはず！』という感動がきっかけでした。利益だけを考えると先行投資ということになってしまいますが、『読みたい電子書籍があるから端末を買おう』と思ってもらえるような電子書籍がたくさん出るようになれば、きっとより多くの方がストアや端末を利用してくださると思っています。ですから、魅力的なコンテンツが地域に埋もれてしまっているのであれば、ぜひ現地の方々とともに掘り起こしていきたいと考えています」
強い責任感をもって沖縄県産本を発信していこうとする野村さんらの取り組みは、沖縄県産本の魅力を全国に周知しただけでなく、県外や世界に向けた県産本発信の土台づくりにも前向きな影響を与えた。このことは、電子書籍で沖縄を元気にしたいという現地の方々の願いと、良質な電子書籍を世に出して市場を盛り上げていきたいという野村さんらの熱意が響きあって実現したものといえるだろう。
一方、Reader Storeを展開するソニーは、沖縄で電子書籍データの制作を担う株式会社近代美術に電子書籍の制作技術を供与。国内の多くの電子書籍ストアで使われているXMDFフォーマットに加え、新たに国際標準になりつつあるEPUB3フォーマットについても情報やサンプルを提供し、海外も視野に入れつつ適切なデータが制作できるように支援している。プロモーションにおいても、「Reader Store」を宣伝する新聞広告などに沖縄県産本を登場させている。地方発のコンテンツであるにもかかわらず、野村さんが手厚い支援を行う理由はなんだろうか。
「私たちは1990年代から国内外で電子書籍事業にチャレンジしてきた経験から『オープンに進めなければならない』ということを学びました。データづくりや端末、ストア、コンテンツなどを私たちだけで囲い込むのではなく、出版物を取りまとめている会社の方々に情報や技術をお渡しして一緒に電子書籍をつくり、どう展開していくかなども含めて一緒に考え、市場を盛り上げていきたいのです」
国内外の配信業者が電子出版事業に次々と参入しているが、日本の電子書籍市場自体はまだまだこれからというところ。だからこそ、読者を引き寄せるコンテンツが重要というわけだ。
「沖縄県産本の配信も、『まず自分が読みたいし、みんなも読みたいはず！』という感動がきっかけでした。利益だけを考えると先行投資ということになってしまいますが、『読みたい電子書籍があるから端末を買おう』と思ってもらえるような電子書籍がたくさん出るようになれば、きっとより多くの方がストアや端末を利用してくださると思っています。ですから、魅力的なコンテンツが地域に埋もれてしまっているのであれば、ぜひ現地の方々とともに掘り起こしていきたいと考えています」
強い責任感をもって沖縄県産本を発信していこうとする野村さんらの取り組みは、沖縄県産本の魅力を全国に周知しただけでなく、県外や世界に向けた県産本発信の土台づくりにも前向きな影響を与えた。このことは、電子書籍で沖縄を元気にしたいという現地の方々の願いと、良質な電子書籍を世に出して市場を盛り上げていきたいという野村さんらの熱意が響きあって実現したものといえるだろう。
ソニーの電子書籍ストア「Reader Store」と対応端末などを紹介する新聞広告（2012年7月6日、朝日新聞）。推奨コンテンツのひとつとして『おきなわ文庫』などの沖縄県産本を紹介（Reader Store特集ページ http://ebookstore.sony.jp/stc/special/etc/newspaper/ で詳細を閲覧可能）。
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［筆者プロフィール］
佐藤勝（さとう・まさる）
株式会社フレア（http://www.flair.co.jp/）所属。
1975年大阪生まれ。2002年から中国社会や日中関係の取材に約8年携わり、2010年から『eBookジャーナル』（株式会社マイナビ）で電子出版ビジネスの動向や電子書籍の制作などを取材するほか、電子出版を活かした地域再生の動きを独自に取材。その他、グラフィックデザイン関連の雑誌・書籍などの編集をしています。
■Facebook：http://www.facebook.com/masaru.zuoteng