インターネットのグローバルトレンド

インターネットのグローバルトレンド
2013年07月16日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

今回は、インターネットが今後どのような進化を遂げていくのかを考えてみたい。夏の夜の戯れと思っていただければ幸いだ。

人間の脳は、膨大な数の神経が結合したことで、外部からの刺激に対する反応パターンが無数に増大した。これが感情であり思考だ。心、といってもよい。つまり、神経系が複雑化したことで心が生まれた。

インターネットはコンピュータとコンピュータ、サーバとサーバが無数に接続されたことで生まれた巨大なネットワークだ。モバイル機器がスマートフォンへと発達し、さらにソーシャルメディアの普及によって、インターネットもまた外部からの刺激によりさまざまな反応パターンを示すようになっている。インターネットそのものに、全人類の思考が反映され、心のようなものを生み出しはじめている。

テキストとは言葉であり、脳で組み立てられた思考を記号化したものだ。言葉は脳から生まれ、舌(音声としての言葉)と指(テキストとしての言葉)によって記号化され、自分以外の誰かに情報を伝達する。インターネットはまずテキストをシェアすることで、人間の思考の結果を集積する場所となった。

そしてスマートフォンの普及によって、インターネット上に集積される情報は急速に多角化している。テキストと音声は人間の脳によって生み出された情報であるが、視覚や聴覚によって得られた生情報を脳内で記号化するわけなので、加工済み情報だといってもよい。だからそのテキストや音声の場合は、発信者によってなんらかのバイアスがかかってしまっている。

ところが、非常に高機能なカメラ機能を備えたスマートフォンの登場によって、現在では目で見た情報を直接“写真”としてインターネットにアップロードできるから、バイアスがない生情報がインターネットネット上でシェアされるようになった。さらに動画や音声もまた、記録されて直接インターネットにアップロードされることで、我々はほぼリアルタイムで、誰かの目を通してはいるものの、脳内加工されていない情報を手に入れることも可能になった。

Googleに買収されたカーナビアプリメーカーのWazeは、移動中の車に乗る我々の位置情報を点ではなく線で記録し、時間情報と位置情報を結びつけていく。Foursquareは我々がいつどこにいたのかを記録するが、Wazeは移動経路までも記録し、さらに渋滞や周辺施設などの情報などもひも付けていく。

Wazeは現状カーナビそのものであるが、Googleはすべての人間の行動情報を記録して検索可能な情報へと整理していくことを夢想している。しかも意識的に情報を記録する“指”や“舌”を頼りにした方法ではなく(つまり脳内加工をしていない生情報を取得していくために)、目から入った情報をそのままインターネットへ連続的にアップロードさせる。そのためにつくっているのが、Google Glassであるといえよう。

Appleが開発しているというiWatchもそうだが、ウェアラブルコンピュータが目指すものは、我々人間一人ひとりがIPとなり、その行動を逐次インターネット上でシェアしていくためのプラットフォームを生み出すことである。

プライバシーをはじめ非常にセンシティブな問題をはらみそうな話だが、その是非を今回ここでは問わない。ただいえることは、それだけの情報がリアルタイムでインターネットという神経系にアップロードおよびシェアされていく中で、インターネット上になんらかの思考のようなもの、ずばり言えば心のようなものが生まれていくのかもしれない。世界中の人間の脳から生み出された情報と、脳を通さず直接リアルな現象としての写真や動画といった生情報がシェアされ、リアルタイムで数十億人の心を意識的・無意識的に反映するようになったとき、インターネットの“心”は神の意識に等しくなるのではないか。

僕は昔、著書でGoogleは「神託」を預かる、預言者になりたいのだろうと書いた。神託とは神の言葉だ。神に等しい意識体に進化していくインターネットの言葉を預かる。その栄誉にもっとも近しい存在は、いまのところやはりGoogleなのではないか。それが今夜の妄想の結論である。


Waze(iOSアプリ版)






■著者の最近の記事
ソーシャルゲームの終焉、そして次にくるもの
スカートと動画は短めが素敵? 動画共有サービス戦国時代はじまる
いま決済系ベンチャーがアツい!
WWDC2013は成功したが、エロさが足りないApple
SnapchatにみるWeb業界3大キーワード「ビジュアル×ソーシャル×モバイル」
2013年のO2Oソリューションはどう進化したか(前編)
Tumblr買収後、競合企業のイグジット戦略はどうなるか
TumblrはFlickrの二の舞になるか、それとも米Yahoo!の救世主になるか





[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
twitter:http://www.twitter.com/ogawakazuhiro
facebook:http://www.facebook.com/ogawakazuhiro

MdN DIのトップぺージ