Twitter、ついにIPOへ

Twitter、ついにIPOへ
2013年09月24日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

Appleのティム・クックCEOが初Tweetを行なったというニュースが流れたが、TwitterもようやくIPOを決意した。2013年11月下旬ころ、公開に踏み切るという。

最近、ある十代のアイドルから「アメブロは古い! これからはTwitterだ! Twitterはじめるよ!」と連絡を受けて、瞬間的には「おいおい、いまさらTwitterでもないだろう」と心の中で“つぶやいた”ものの、たしかに日本国内の中高生にもっとも使われているソーシャルサービスは、LINEをのぞけばTwitterだろう。

FacebookがIPOに失敗し(ここでいう失敗とは公開時、つまりIPO直後に株価を大きく下げて、短期的に投資家に損をさせたか大きく失望させた、という意味である)、米国のベンチャー企業たちには、IPOに対してやや及び腰のようなムードが漂っていた。

日本でも衣料品ECを手がけるマザース上場の夢展望が、IPOからわずか二カ月で決算の下方修正を行い、株価を大きく下げている。とにかく無理にでもIPOしてしまえば後はなんとかなる、という意識であったのかもしれないが、お粗末極まりない。いや、確信犯だったのかもしれないが、少なくとも米国ではFacebookがIPOの失敗(繰り返すがIPO直後に株価の下落を招いたこと)の衝撃波が強く、後続のビリオンダラークラブ(企業価値10億ドル以上のスタートアップ)たちに、IPOを先延ばしにしようという気分をもたらしていたのはまちがいない。

ただ、FacebookがIPO後1年で、モバイルからのトラフィックを効率よく換金することに成功し、投資家達の不安を払拭したことで、Twitterもベストなタイミングが訪れたと判断したのだろう。Twitterの企業価値は2013年8月時点で105億ドル(約1兆円)とされる。Facebook以来のビッグイベントになることはまちがいない。

Twitterに続くIPO候補としてはFab.comやPinterestなどが挙げられるが、両社とも最近成長の踊り場にきていると囁かれている。TwitterやFacebookも同じような毀誉褒貶を乗り越えてのIPOであり、彼らに続く大型IPOが2014年に実現すれば、いよいよベンチャー業界も活性化するだろう。

Twitterは創業当時、「世界で初めて10億人に使われるサービスになる」という目標を掲げていたが、現時点で月間アクティブユーザーは2億人超で大きく隔たりがあるうえ、“世界で初めて”という栄冠はFacebookに奪われた。

世界で10億人以上が使えば、Twitterは世界の神経となり、社会の動きを鼓動のように伝達できる、というのが彼らの野望であり信念だった。その後、WebChatやLINEのようなメッセージングサービスに1対1や小規模人数でのコミュニケーションというシーンでのポジションを奪われ、リアルタイム情報源というコアコンピタンスにおいても改めてFacebookに挑戦を受けている状態だ。

IPOを断行し、従業員や株主への還元を行なうと同時に、集めた資金でライバルたちをどう出し抜き、短期的にも長期的にもIPOを成功させるか。彼らの今後の戦略に注目したい。


Twitter




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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