Facebookの分散型アプリ戦略は吉とでるか?

Facebookの分散型アプリ戦略は吉とでるか?

2014年02月17日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

FacebookはWebにおけるGoogle、アプリマーケットにおけるAppleと同等あるいは同等以上のプラットフォームになったといえよう。なぜならFacebookは、世界中の12億人以上をデジタルでつなぎあわせ、接触できるようにしたからだ。

しかし近年、Facebookは彼らと少し異なるタイプのソーシャルネットワーク企業から挑戦を受けている。WhatsAppやLINE、SnapChatといった、おもに若者層からの支持を受ける新進サービスだ。また、急速にトラフィックを集めはじめたニュースキュレーション型メディアも同様である。

FacebookはInstagramの買収のように潜在的な敵対企業はM&Aで飲み込むか、対抗サービスを生み出すなどして、とにかく早期に脅威を摘み取る作戦をとっている。しかしメッセージングサービスにおいては、ご存じのようにSnapChatの買収に失敗した。SnapChatはFacebookからの30億ドルというオファーを断り、依然としてFacebookの前に立ちふさがろうとしている。FacebookはPokeというSnapChatの対抗サービスを生み出したが、うまくいっていないようだ。そんななかでFacebookは、今後の基本的な作戦としてFacebook本体から切り出したアプリ――いわば分散型アプリを投入していく戦略に決めたようだ。

Facebookメッセンジャーはすでに本体から切り出しているが、LINEやWhatsAppへの対抗としてはまずまずの成果をあげている。特に若者を支持層にもつLINEやWhatsAppに対して大人層・ビジネスユースといった部分に強みを見せているのが特徴だ。また、2014年にはPaperというニュースキュレーションアプリを世界的にリリースする準備に入っている。この作戦の成否によって、今後もFacebookプラットフォームが継続して安泰するかどうか決まるといえるだろう。

人間同士を“コミュニケーション”させ、情報を共有するというデジタルプラットフォームとしては、まず電子メールが世界的に広まった。電子メールは数十年前に生まれたシステムであり、いまだにテクノロジーとして大きな変化はない。ただし電子メールは1対1のコミュニケーションには使えるが、N対Nのコミュニケーションには向いていない。

そこで、N対Nのコミュニケーションツールとして生まれたのがブログだ。ブログは情報発信型のWebサイトが簡単に制作できるという仕組みだったが、Web上で自分のプレゼンスを非同期に知らせられるという点でメールに似ており、かつメールと比べてより多くの人に情報が共有できる。つまりFacebookは、ブログの延長戦にあるサービスといえよう。ブログをネットワーク型に置き換えたのがFacebookであり、TumblrやTwitterもまた同じ領域にある。

Facebookは非同期コミュニケーションの王者となったわけだが、同期コミュニケーションであるLINEやWhatsAppのようなメッセージングサービスでは遅れをとっている。さらにニュースキュレーションサービスの台頭により、Paperをリリースしようとしている。Facebookは友人のステータスを知るためのツールだが、同時に友人が興味を抱く対象(=ニュース)を知るためのツールでもある。そのニュースを知る部分を、新興のニュースキュレーションサービスが根こそぎ奪いかねないと感じたわけだ。

Facebookは分散型アプリ戦略により、Facebook本体を傷つけることなく多くのトライアルを並行して進めようとしている。この戦略がどう実を結ぶかはまだわからないが、現時点では非常に正しい道であるように思う。


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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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