宇宙などがテーマのハッカソン今年も開催、未来館でプレイベント

宇宙などがテーマのハッカソン今年も開催、未来館でプレイベント

2014年03月17日
TEXT:片岡義明

米国航空宇宙局(NASA)や独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が提供するオープンデータをもとに、さまざまなソフトウェアやハードウェアを開発するハッカソン「International Space Apps Challenge(ISAC)」が4月12日・13日に開催される。昨年は44カ国・83都市で開催された同イベントは、今年で3回目を数える。日本でも東京大学・駒場リサーチキャンパスで同日、「International Space Apps Challenge Tokyo(ISAC Tokyo)2014」が開催される予定だ。これに先立って3月15日、プレイベントとしてアイデアソン(アイデア出しイベント)が東京・青海の日本科学未来館にて開催された。


巨大地球儀「Geo-Cosmos」の下でアイデア出し


「International Space Apps Challenge Tokyo 2014」公式サイト

対象となるのはオープンデータを使用したソリューションやアプリ・グッズ開発、社会問題の解決に興味のある人で、プログラマーや技術者、研究者だけでなく、クリエイターやデザイナー、さまざまな業種のビジネスパーソン、学生など幅広い層が参加できる。必ずしもアイデアソンとハッカソン両方に参加する必要もなく、どちらか一方だけでも自由に参加することが可能だ。

会場となったのは日本科学未来館の巨大地球儀「Geo-Cosmos(ジオコスモス)」を見上げる1階のシンボルゾーンで、ISACTの事務局長である湯村翼氏が司会を務めた。湯村氏は昨年1位を受賞した「Personal Cosmos」(開発当初の作品名は「Personal Geo Cosmos」)チームの代表でもある。昨年も運営スタッフの一員としてISAC Tokyoを裏から支えたが、今年は事務局長となってイベントを取り仕切ることになった。

「Personal Cosmos」は日本科学未来館の「Geo Cosmos」を自宅で楽しめる作品で、小型プロジェクターを使って半透過球体に多彩な地球の姿を投影できる。会場では同作品のほかにも、衛星データから雲の影響が少ない場所を探してソーラーパネルをどこに置けばいいのかを考える「ソーラーパネル、どこへ置く?」や、Google Earth上に宇宙ゴミ(デブリ)を配置してシェアできる「Dear my SPACE DEBRIS」、火星や月の画像データから人の顔に似た模様を見つけるプロジェクト「Marsface Project(マー)」など、昨年の受賞作品が展示された。


事務局長の湯村翼氏


Personal Cosmos

アイデアソンに先立って、JAXAが提供する公開データや、日本科学未来館による地球理解のための「つながりプロジェクト」、エプソンが提供するスマートグラス「MOVERIO」などの解説が行われた。JAXAは公開データを集めたガイドブック「JAXAの歩き方」をWebからダウンロード提供しており、会場では冊子の貸し出しも行われた。

「つながりプロジェクト」は、大型球体ディスプレイ「Geo-Cosmos」や、オリジナル世界地図の作成サービス「Geo-Palette」、さまざまな地球観測データにアクセスできるインタラクティブ・ボード「Geo-Scope」の3つで構成される。「Geo-Palette」は地理や気象、経済などのさまざまな統計データをもとに世界地図を描けるオンラインサービスで、作成した地図はサイト上で公開できる。

MOVERIOは4月に発売予定のAndroid搭載のスマートグラスで、レンズの中央にスクリーンが表示されるシースルーディスプレイが特徴。GPSや加速度センサー、ジャイロなどさまざまなセンサーを搭載している。同製品のほか、事務局から貸し出せるハードウェアとして、Philipsの「Hue」というスマートフォン連携のLEDライトも紹介された。また、2月28日に打ち上げが行われた世界初の衛星芸術プロジェクト「ARTSAT:INVADER」のデータが4月頃から使用可能になることなども紹介された。


「JAXAの歩き方」の冊子が貸し出された


MOVERIO

そしていよいよアイデアソン本番が開始。ここでは昨年と同様、未来志向の会議手法「視覚会議」を展開するNPO法人 アイデア創発コミュニティ推進機構の代表理事である矢吹博和氏が、ファシリテーターとなってアイデア出しを支援した。今年はISACのテーマとして、「地球観測」「宇宙技術」「有人飛行」「ロボティクス」「小惑星」という5ジャンル・40テーマが与えられているが、必ずしもこれらのテーマにこだわる必要はなく、自由な発想によるアイデアが求められている。

最初に、アイデアソンの前半2人がペアを組んで短い時間ずつ対話していく「2人ブレスト」を実施。5分で話し合ったあとに1分間のメモタイムを実施し、これを5ラウンド行った。これをもとに各人がアイデアをスケッチブックに描き、さらに各テーブルやホワイトボードにアイデアのスケッチを並べて、各人が取り組みたいアイデアに印を付けていく作業を行った。


アイデアスケッチに投票

この投票結果をもとに、人気上位のアイデアの中からハッカソン本番で開発するプロジェクトが選定された。さらに、票数を得られなかったが開発に強い情熱を持つ人の特別枠(情熱枠)も追加されて、計10数個のアイデアに絞られた。

最終的に決まったアイデアは、人工衛星の周期を砂時計のようにタイマーとして使う「人工衛星砂時計」、宇宙線のデータでHueを光らせるアート作品「宇宙線が見える部屋」、MOVERIOを使って宇宙空間でのゴルフを再現する「SPACE GOLF」、月や火星の観光地図を作り、できた地図をPersonal CosmosやMOVERIOを使って見る「宇宙の歩き方」、NASAやJAXAのAPIを利用して小惑星の重力などを計り、それに基づいて価格を付ける「小惑星に価格づけ」、宇宙空間を使って宝探し(ジオキャッシング)を行う「SPACE CASHING」、火星移住をシミュレーションする「SIMCITY MARS」、小惑星を使った占い「全部星のせいだ!!」、ISSや人工衛星が自分の頭上に来たときに捕まえられる「衛星コレクション」など。

このほか、「情熱枠」としては、太陽風を色で表現「“宇宙病”を探れ!」や、衛星にメッセージを託して、その衛星が次に頭上を通った人にメッセージを届ける「スペースボトル」などがエントリーすることになった。さらに、昨年の受賞作品である「マー」が今年も引き続き行われることになり、今年は「太陽系の歩き方」というガイドブックを作成することになった。


人工衛星砂時計


SPACE CASHING


宇宙の歩き方


衛星コレクション

今後のスケジュールとしては、4月上旬に本番前のデータ勉強会を開催し、アイデアソンで決まったアイデアを実現するために、どのようなデータが必要なのかを確認する。そして4月12日・13日の2日間にわたり、東京大学・駒場リサーチキャンパスにてハッカソンの本イベントが開催される。13日午後には各作品のプレゼンテーションや有識者による審査により、優秀作品およびグローバル・コンペティションに送り出される作品が決定される。

事務局長の湯村氏はアイデアソンを終えて、「昨年も多くアイデアが出ましたが、今年は今年でまったく違うアイデアが数多く出たのでよかったと思います。ISACは宇宙をテーマにモノ作りやアプリ作りができる年一回のチャンスなので、エンジニアでなくても宇宙が好きで情熱がある人ならハッカソンにぜひ来てほしいです」とコメントした。プログラマーだけでなくクリエイターやデザイナーなど幅広い層を対象としたこのハッカソン、宇宙に興味のある人は要注目だ。

■URL
International Space Apps Challenge(本体サイト)
URL:http://tokyo.spaceappschallenge.org/



[著者プロフィール]
片岡義明(かたおか・よしあき)●フリーライター。IT・家電・街歩きなどの分野で活動中。特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。ニュースサイト「INTERNET Watch」にて「趣味のインターネット地図ウォッチ」を連載中。
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