インターネットの先祖返りともいえるキュレーションメディア

インターネットの先祖返りともいえるキュレーションメディア

2014年11月17日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)



僕は、世界初のキュレーションメディアはYahoo!だと思っている。まったく関係ないが、この間ネイティブスピーカーと英語で話している際、うっかりYahoo!を“ヤフー”と発音してしまったら、「That's "ya-hu", not "ya-fu"」と言うように訂正された――まるでDMM英会話のCMのように。

話を戻そう。Yahoo!は、いまでこそポータルとしてありとあらゆるサービスモデルを包含する巨大サイトだが、創業当初はふたりのオタク(いや、ギーク)が急増するWebサイトを調べまくり、カテゴリ別にランキングのような形で整理するインデックスサイトとしてはじまった。

その後ふたりだけでは扱えきれなくなり、アルバイトや社員を雇い、整理を続ける。整理をする際に、コンテンツの有意性やおもしろさを吟味するようになり、その優劣をランキング化する機能をもつようになった。つまりキュレーションを行うようになったわけだ。

創業当初のYahoo!とは、生まれたてから急成長をする過程にあったインターネットのナビゲーターとして、まだ不慣れな多くのネットユーザーにおもしろいコンテンツを紹介する役割を担った。今ではキュレーターとよばれているが、当時はサーファーと呼ばれていた。彼らはユーザーにとって有用なWebサイトを見つけると、クールマークと呼ばれるサングラスのアイコンを付与して讃えた。このアイコンがついたWebサイトのトラフィックは急上昇するので、誰もがYahoo!のサーファーに気に入られようと必死になったものだ。

その後、Yahoo!の人力によるインデックスのシステムは、Googleのロボット検索(検索エンジン)にとってかわられる。2000年代は検索エンジン全盛時代となり、インターネット上で注目を浴びるための手法はSEOが主流となるわけだ。

現在GunosyやNewsPicksなどのキュレーションメディアが注目を浴びているが、これらのルーツにはYahoo!があるといっても過言ではない。その意味で、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアが台頭し、さらにLINEやWhatsAppなどのメッセージングサービスが個人に普及したおかげで、今まで以上に口コミの伝播力が上がっている現代では、再びキュレーションサービスの重要性が高まっている。現代のキュレーションメディアは、創業当時のYahoo!とは違って、検索エンジンに近いアルゴリズムをもつテクノロジーと、当時のサーファーに近い編集力を求められるキュレーターという人力のハイブリッドになっている。

さらに、その利用シーンもデスクトップ上のWebから、モバイル上のアプリに変わってきた。最近のYahoo!は本家のアメリカはもちろん、これまで絶好調であったはずの日本国内でも成長速度に陰りがでており、その理由こそがデスクトップからモバイルへのシフトが必ずしもスムースにいっていないこととされている。

昔やっていたことが姿を変えて、自分たちを苦しめているという現状に、創業者であるジェリー・ヤンとデビッド・ファイロはどういう思いを噛みしめているのだろうか。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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