ソシオメディア UX戦略フォーラム 2014 Winter イベントレポート

ソシオメディア UX戦略フォーラム 2014 Winter イベントレポート

2014年12月5日
TEXT:ソシオメディア株式会社

ユーザーエクスペリエンス(UX)コンサルティングを行うソシオメディアは、12月3~4日に「UX戦略フォーラム 2014 Winter」を開催した。今回のテーマは「UXメトリクスの基本と応用」。同社の翻訳により出版された『ユーザーエクスペリエンスの測定』の原著者でUX業界の世界的権威者ビル・アルバート博士をメインゲストに迎え、UXを企業戦略に生かすための各種指標の設計や実践、応用などに関するセッションが展開された。本記事ではフォーラム1日目の様子をレポートする。




第1部 UXメトリクス入門

第1部は「ユーザーエクスペリエンスの測定とは」と題したアルバート氏の講演。UXメトリクスとは、製品やサービスなどあらゆるもののUXを語るデータのこと。ユーザーにとってなにがどれくらい問題か、なにが好ましいのかなどを定量的に示す指標で、ユーザビリティ調査やインタビューなどを経て導き出すことができるものだ。


講演中のビル・アルバート氏


アルバート氏は「UXメトリクスとはレゴのようなもの」と繰り返し説明。これは「レゴの1つひとつは小さくて基本的なものだが、組み合わせにより多様な姿を形成できる」という意味だ。また入門編のポイントとして「UXメトリクスに着手する際は、自分がどんな課題を解決したいのかを明確にするのが重要」とも強調した。


第2部 UXメトリクスの現状

第2部は、アルバート氏の背景やUXメトリクスというテーマとの出会い、海外における状況について、ソシオメディア代表・篠原とアルバート氏が対談。


ソシオメディア代表・篠原による質問


氏がこのテーマと出会ったのは1990年代半ば。ビジネスの世界を知りはじめたころのことだ。製品開発の現場における意思決定や優先づけには、客観性があり誰でも使えるメソッドやデータが必要と感じ、メトリクスにまとめたいと考えたのが出発点。その後、仕事の傍ら『Measuring the User Experience』を執筆。企業のUX戦略に活用できる内容でありながら、現場にとってもよいガイドになるように意識されたものという。

欧米の傾向としては、競合との差別化に価格よりもUXを重視する意識が高まり、UXメトリクスの採用も定着しつつあると説明。一方で、同分野の専門家は海外でもまだ不足しており、教育機関や企業における継続的な啓蒙や教育が必須との課題も示した。


第3部 UXメトリクス・ケーススタディ

第3部はアルバート氏による事例紹介。サイトデザイン改善、医療機器の比較調査、配色の違いの有効性、広告情報の扱いなど、UXメトリクスを実際に用いた多彩な例が提示された。

内容が充実していることに加え、各事例の改善点や調査結果を多数のグラフや図で提示したのが印象的だ。つまり「一見難しそう、数字だけではわかりにくい」内容を、UXメトリクスを通じて可視化し、相手に分かりやすく伝えるテクニックそのものを垣間見ることができた。


会場の様子


会場からの質問も多数寄せられた。たとえば「社内にUXメトリクスを扱うチームをつくりたいがどうすればよいか」といった問いに、アルバート氏は「最初は“小さくはじめる”のがコツ。容易にできるデータ収集や分析から着手し、実績を周囲や上層部にも認めてもらうのが効果的」とアドバイス。

今回の来場者の職域や専門性はさまざまだが、UXメトリクスを効果的に利用することで、自分の課題解決につなげることができる。今回のフォーラムを契機に、日本でも企業戦略に向けたUXメトリクスの適用が期待される。


レクチャー後には、アルバート氏から書籍へのサインも


関連情報:
・ソシオメディア UX戦略フォーラム 2014 winter(2014年12月3日~4日)
https://www.sociomedia.co.jp/5224

・書籍『ユーザーエクスペリエンスの測定』
https://www.sociomedia.co.jp/5295




[筆者プロフィール]
ソシオメディア株式会社●2001年に設立されたデザイン・コンサルティングファーム。ユーザーインターフェイス設計やユーザビリティ評価を専門に実施。代表を務める篠原稔和は、企業組織やチームへのコンサルティング活動やITスタートアップにおける自らの経験を活かし、UXやITとデザインに関わる包括的な専門性を用いながら、企業のイノベーションに向けたUX戦略コンサルティング活動に注力している。
URL:https://www.sociomedia.co.jp/

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