Instagramとマドンナが大喧嘩――ソーシャルの世界が窮屈に?

Instagramとマドンナが大喧嘩――ソーシャルの世界が窮屈に?

2015年04月20日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)



Facebook広告に出稿しようとしたら、いくつかのクリエイティブが掲載不可となってしまった。理由はふたつで、「画像にテキストがたくさん含まれすぎている」「猥褻な画像である」というものだ。

しかし、実際には画像にはテキストは含まれていなかったし、当然猥褻な画像ではない(と、一般的にみて思う)。「ふざけるなFacebook!」と怒っていたのだが、むやみに正論を振りかざすソーシャルネットワークに対して同じような怒りを抱き、真っ向から抗議した人物がいる。音楽業界のスーパースター、マドンナである。

マドンナは2015年4月1日、Instagramに過去のヌード写真を掲載したところ、即座に削除されたことに猛烈に抗議している。削除されたのは乳首が露出した写真だったのだが、過去に写真集として販売されたもので、本人としては芸術作品であるという意識がある。だから削除された腹いせに、今度は臀部が露出している写真をアップしたのだが、それは削除されていない。「臀部はよくて乳首がダメなのはなぜか」とマドンナは怒っているのである。ちなみにInstagramは、マドンナと並ぶ歌姫であるリアーナがヌード写真をアップした折にも削除を強行している。

Instagramの投稿基準は、コミュニティガイドライン(https://help.instagram.com/477434105621119/)としてまとめられているが、ヌードに関しては以下のように禁止する記載がある。「芸術的・創造的なヌード画像をシェアしたくなることもあるでしょう。しかし、さまざまな理由から、Instagramではヌード画像を許可していません。それには、性行為や性器、衣服を着けていない臀部のアップの写真、ビデオ、デジタル処理で作成されたコンテンツなどが含まれます。また、女性の乳首の写真も含まれますが、乳房切除術後の瘢痕や授乳をしている女性の写真は許可されます。ヌードの絵画や彫刻の写真も許可されています」

これに対して、マドンナ以外にも、男性の上半身裸はよくて女性の裸はなぜダメなのか、乳首の露出を許されないのは差別ではないのか、と訴えているグループがある。Free The Nippleという運動(http://www.freethenipple.com/)がそれだ。

Instagramからすればアメリカや日本だけでなく、信仰心が厚い国や地域に対してもサービスを提供しているわけで、そういった観点からの物言いだろう。しかし、たとえばイスラム圏であればヌードの絵画やヌードの彫刻であっても禁止だ。よって、少し理屈が通らない気がする。さらにいえば、ヌードの絵画はよくて写真(静止画)はダメというのも、写真愛好家からすれば、写真は芸術ではないと宣言されているようなもので、差別極まりない。

また、同ガイドラインでは「写真やビデオは、自分で撮ったか、共有する権利を得ているもののみをシェアしてください」とあるが、実際にはほとんどが他者が撮影したコンテンツの流用であり、通報されない限り放置しているのが現状だ。これは大きな矛盾だろう。せめて著作権に留意し、「必要とあれば削除されるかもしれないからごめんね」とだけ言っておけばよいのではないか?

もちろん男性の上半身はボクシングやプロレスでも露出されているが、女性の上半身とは一概には比較できない。社会的に女性の乳房や乳首の露出が許されるようにならない限り、ソーシャルネットワークとしては追随できないだろう。だから現状の締め付けについて、緩めなければならないというつもりはない。しかし、前述の著作権問題のほか、若年層の遊び場、クリエイター・アーティストの表現の場としての利用に対して監視するような態度では、支持を失うことはまちがいない。

FacebookやInstagramは、LGBTやFree The Nippleのようなムーブメントを、対岸の火事とすることはもはやできない。現状のような杓子定規な対応では、問題を回避できないだろう。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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