食べログとRettyにみる先行vs新興のメディアバトル

食べログとRettyにみる先行vs新興のメディアバトル

2015年07月06日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)


Retty
http://retty.me/


食べログ
http://tabelog.com/

それは、Rettyが先にケンカを売る形ではじまった。

実名制であることを特徴とするグルメ系口コミサイトのRettyは、国内のMAU(月間アクティブユーザー数)1000万人に到達したと発表し、同時に東京都内に限れば口コミ数においてトップに立った、と発表したのだ。

これに反発したのが食べログだ。

食べログはプレスリリースを発して、我々が考える口コミとは200文字以上のテキストを含むものに限定しているが、Rettyが発表した口コミとは写真だけや評点をつけただけのような「エンゲージメント」全体を計算に入れている、と反論した。Retty同様の定義をした口コミ数では、食べログのほうがはるかに多い、と主張したのである。

また、Rettyはグルメ系メディアを三世代にわけて

・1.0…店舗にお金を払って得た所在地やメニューなどの情報をリスト化したWebサイト
・2.0…店を実際に訪れた(匿名の)消費者の声を集めてつくったWebサイト(CGM)
・3.0…ソーシャルを前提として実名の声を集めてつくったWebサイト(ソーシャルメディア)

としたうえで、サービス名こそ出さなかったが事実上、食べログなどの先行メディアを2.0――つまり旧世代と位置付けた。

論争自体はさておき、新興メディア企業と先行するメディア企業の戦いの一例であると考えると、グルメの分野以外にも同じようなバトルが今後多く見られていくのではないか。Rettyの区分けとは違うが、メディアのありようを同じように3つにわけると、僕なら、以下のように分ける。

・1.0…Yahooなどのポータル起点でトラフィックを発生させるメディア
・2.0…Google依存でSEOをベースにトラフィックを発生させるメディア
・3.0…Facebookをはじめとするソーシャルプラットフォーム依存で、SMOベースにトラフィックを発生させるメディア

アメリカではVICE、VOX、Quartz、BuzzFeedなどがこの第三世代に入ると思うが、日本での状況と違って、すでに彼らは第一、第二世代を脅かすだけのトラフィックと社会認知を受けている。日本の場合、グルメ系は比較的強いが、それ以外の新興メディアは知名度でもトラフィックでもまだ小粒というか、社会全体に影響を与えるところまでは届いていない。

食べログがRettyに対して反攻したのは、ある意味彼らを無視できなくなった、という証左であるといえるが、アメリカではすでにプラットフォーム側のFacebookやTwitter、Apple、Snapchatなどが続々とメディア的サービスを発表し、第三世代を取り込む動き(それを第四世代というべきかどうかはまだわからない)を見せている。

BuzzFeedなどは、積極的にコンテンツ集積場としてのメディアではなく、分散型のメディア戦略を打ち出し、コンテンツ(とネイティブアド)を制作し配信する、コンテンツと広告の双方を配信する新しいコンテンツプロバイダーとしての立ち位置を確立しようとしているし、このメディア戦争は加熱するばかりである。

その意味で、食べログvsRettyの一件は氷山の一角であると同時に、アメリカではすでに勝負のあった過去の戦いの再現であるといえるかもしれない。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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