Facebookの新機能はソーシャルメディアマーケティングを終焉に導くか?

Facebookの新機能はソーシャルメディアマーケティングを終焉に導くか?

2015年07月13日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)



Facebookは、ニュースフィードへ優先的に表示する友人やFacebookページが設定できる機能を発表した。全ユーザーが設定可能になるには数週間を要する見込みだ。また、当初はiOS版アプリのみの機能だが、Android版アプリやWeb版にも同様に実装されるという。

この変化は、これまでユーザーの利用状況(どの投稿にいいね!やコメントをするなどのエンゲージメントを与えたか、実際に開いてみているかなどの行動の傾向)を数値化したアルゴリズムによって表示順位を決めていたFacebookが、ユーザー自身の嗜好を尊重する形へとシフトするというものだ。もちろんベースとしてはアルゴリズムが決めていて、そのうえでアルゴリズムを外れた優先表示をユーザーに委ねるわけであるが。

優先してニュースフィードに表示するのは友人、もしくはFacebookページ単位で、記事単位ではない。設定すればそのアカウントの表示はすべて優先的に表示されるようになる。逆に、表示したくない相手を、相互のつながりやページへのいいねは保持したまま、コンテンツだけをみないようにする、ということも可能だ。

この方針変更は、ユーザーにとってよいことであると思う半面、設定が複雑化することで、これからFacebookに登録しようとするユーザーのハードルを高くすることになるのではと懸念している。Google+は人間関係をサークルという親密度に応じて分別する方法を提案したが、ほとんどのユーザーはめんどうに感じて、機能しなかった。今回の件も同じような結果に終わる(=優先表示を設定するユーザーは少ない)のではないかと僕は予想するが、どうだろう。

また、この方針変更によって、Facebookページのいいね!数を資産として育ててきた企業ユーザーにとっては、いいね!数と見込みクライアントへのリーチが比例しなくなり、Webページへの誘客のための広告を打つことをためらうようになるのではないか? それを予期しているのか、Facebookは、Facebook外のWebサイトへの送客を目的としている広告の値上げを発表したが、これも逆効果であるように思う。

Facebookとしては、Instant Articleの試みと同じ考えで、とにかくFacebook内にユーザーや企業を留めさせ、豊かで質の高いコンテンツをFacebook内で発信させ、消費させるというエコシステムを維持したいのだろう。その考えのもとにさまざまな施策を取りはじめているが、結果的に日本の大企業はFacebookベースのソーシャルメディアマーケティングから、LINEを使ったよりダイレクトな広告を選ぶようになりつつあるし、中堅企業はオウンドメディアの構築を急ぐようになっている。

アメリカはともかく、日本国内にあっては、Facebookはとても難しい舵取りを迫られそうに思う。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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