上陸間近のBuzzFeed日本版の初代編集長が決定。その手腕に大きな注目

上陸間近のBuzzFeed日本版の初代編集長が決定。その手腕に大きな注目



2015年10月19日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

世界9ヶ国での情報配信を進める、米国最大の新興メディアBuzzFeed。2016年初めに日本国内での本格稼働を予定しているが、その初代編集長の人選が発表された。元朝日新聞のジャーナリストで、東南アジア勤務の経験もある古田大輔氏(Twitter:@masurakusuo)だ。

BuzzFeedは2015年8月18日にYahoo!Japanとのジョイントベンチャーとして、日本国内での活動開始を宣言した。彼らが明言しているように、ソーシャルメディアへの非常に高い依存と、自社開発のネイティブアドシステムによる広告収益によって成立しているのが、このBuzzFeedだ。

『BuzzFeedは、オリジナルニュース、エンターテインメントコンテンツやビデオコンテンツの制作、配信を行うグローバルメディア企業です。広告の領域においても、ソーシャルメディアへの最適化とテクノロジーに基づいたコンテンツ重視の制作方針を明確にし、新しい広告のあり方を提唱しています。現在では全世界におけるBuzzFeedのユーザー数は月間2億人以上、ビデオ視聴回数は月間15億回にのぼります。』- Yahoo! Japanプレスリリースより(http://pr.yahoo.co.jp/release/2015/08/18a/)

僕が思うに、BuzzFeed(をはじめとする新興メディア群)は、ニュースサイトというより、コンテンツマガジンであり、新聞ではなく雑誌である。BuzzFeedが提供しているのはニュースというよりはコンテンツであり、速報性よりは連続性のあるテーマを持つメディアであると考える。
だから、巷では古田氏の編集長就任は非常に好意的かつ高い評価で報じられているものの、正直 意外な人選であるように思えた。なぜなら、僕なら新聞社出身ではなく、雑誌社出身者を選ぶからだ。

しかし、よく考えれば、米国はいざ知らず、日本国内では雑誌が持つエッセンスをモバイルインターネットに置き換えた、真のインターネットマガジンは存在していないのかもしれない。だからまだ、雑誌編集者よりも新聞編集者または記者の経験のほうが、インターネットマガジンの運営には有効でありつづけているのかもしれない。

紙の雑誌は、更新速度で見る限り週刊誌が最速であり、日刊誌というものはない。対して新聞は日刊が当たり前で、朝夕二回の更新もある。この更新速度(編集速度といっていい)の違いがあり、新聞は早くからデジタル化が進み、ニュースサイトが生まれたが、雑誌は電子書籍化は進んだとしても、紙のトンマナとフォーマットをそのままデジタル化しただけで、本来進むべき スマートフォンの画面に最適化した閲覧体験をもった形式の、真のデジタル雑誌は生まれていないのである。

BuzzFeed日本版の活動開始は、今後 ITリテラシーがそれほど高くない一般層の、過度なYahoo!依存を変革させるかもしれないし、グノシーやスマートニュースのようなニュースアプリの成長にも影響を与えるかもしれない。
また、新聞もしくはニュースサイトには本来ありえない真のネイティブアドを国内でも普及させ、これまで国内で存在してきたネイティブと名乗るアドネットワーク(ヘッドラインやサムネイルの形だけが”ネイティブ”で、実際には外部サイトに飛ばしてしまう、似非ネイティブアドと言える従来のアドネットワーク)の存在意義を破壊してしまうかもしれない。

BuzzFeed日本版の事業推進の成否は、それだけのインパクトを持つものであり、その初代編集長となった古田氏には否応なしに大きな注目が集まっていくのである。


初代編集長となった古田氏 ©Samson Yee



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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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