東京五輪のエンブレムで起きた著作権問題。デザイナーが知っておくべき著作権のこと5つ

東京五輪のエンブレムで起きた著作権問題。デザイナーが知っておくべき著作権のこと5つ

2015年12月28日
TEXT:編集部

一度採用された東京オリンピックのエンブレムが、盗用疑惑により2015年の9月の頭に白紙撤回されたのは記憶に新しい。これを受けて2015年11月24日、オリンピック組織委員会は一般公募を開始した。実際に盗用があったのかどうかは定かではないが、このような著作権問題は、Webデザイナーなどデザインに携わる者にとって他人ごとでは済まされない。実際に、世界各地に多くのデザインが溢れている中、本人が意図しなくても似たようなデザインは生まれる可能性はあり、場合によっては裁判沙汰になる可能性もあるのだ。それでは、そのような問題から守るにはどうすればよいだろうか。今回は、デザイナーであれば知っておきたい著作権のことについて、いくつかの要点に絞って紹介する。



■著作権の基本的なこと
著作権は簡単に言えば、その人のアイディアによって生まれた芸術的な作品を勝手に利用されることのないように、著作者を守るための法律である。基本的に、著作権はその作品が作られたときに自動的に発生することになる。ただ、ずっと著作権を所持できるわけでない。日本では著作者の没後50年、海外であればだいたい70年の間は守られることになっている。しかしながら、実際に本人が意図しなくても既にあるデザインに似通ってしまうということはある。この場合、著作権にふれるのは、原作のほぼコピーだと思われる場合と既に有名な作品をコピーしたようなデザインだと判断された場合だ。当然、他人の作品を勝手に使用することは著作権を侵害することになる。


■トレースや模写
東京オリンピックのエンブレム問題もさながら、ある企業のプレゼント用のトートバッグのデザインの一部が盗用されたものではないかという指摘があった。このことについて、事務所はトレースの事実があったことを認めている。他にも、これまでに漫画作品や書籍でのトレースの疑惑など、いわゆるトレパクの問題はたびたび取り上げられてきた。このトレースというのは、原画の上からなぞって写し書きするという手法である。画力を上げるのによく使用されるが、トレースしたものを自分の作品として発表したりすると著作権上問題になることがある。原画を見ながら似せて描く模写も同様だ。これらに、明確な基準は定められていないが、写真家が撮ったものなど創造性が高いと思われるものほど、全てをトレースもしくは模写していなくても著作権違反とされることが多い。デザインの参考とする分には良いかもしれないが、トレースなどは充分に注意すべきだろう。


■フリー素材の使用
Webデザインなどの仕事に携わっていると、フリーの素材を使用することもあるだろう。ただ気をつけていただきたいのは、フリー素材だからと言って、完全に著作権が放棄されている訳ではないという点だ。そのためフリー素材のサイトごとに、利用方法など定められていることが多い。多くのフリーサイトでは営利目的などでの利用を禁止している。また、サイトによっては商用利用や改変などを禁止しているケースもある。フリー素材を使用する場合も、著作権はあるので利用する際はしっかりと規約を読んでいた方が良いだろう。


■著作権の譲渡
著作権はしばし、発注者側と受注者側の間でも問題が起こることがある。例えば、Web上にのせるキャラクターの制作を依頼された場合などだ。通常であれば、キャラクターの著作権は作成した側が持つことになり、用途は当初契約した際のWeb上での使用と限定される。依頼した以上の範囲で使用する場合は、発注側は著者側に承諾を得るもしくは著作権を譲渡してもらう必要があるのだ。用途にもよるが譲渡に関わる費用を支払って、著作権が発注者側に移ると、ある程度自由に使えるようになる訳だ。つまり、発注者側は著作権の譲渡を受けないと勝手に使用することはできず、受注者側も無断で使用された場合は訴えを起こすことができるということになる。


■ロゴマークと商標権
デザイン性が認められたものは著作権として認められるが、例えばロゴマークなどデザイン性が低くありふれたデザインのものは著作物として認められない場合がある。そこで設けられているのが、商標権だ。商標権とは、商標登録を行うことによって、ロゴマークや会社名などの盗用を防ぐものである。もし、この商標権の侵害にあたると判断されると刑事事件になる可能性もありうる。商標権は権利を守るものとしては有効だが、新たにロゴなどを作成する際などは注意したい。ちなみに、登録されているロゴマークなどは無料で検索が可能だ。
URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

●まとめデザインを扱うものであれば、場合によっては著作権等侵害の加害者になりうることもあるし、被害者になりうることも充分考えられる。今回は、著作権についてデザイナーなら知っておくべきことをいくつかピックアップして紹介したので、今後デザインを考案する際の参考にしていただきたい。

MdN DIのトップぺージ