今、ベンチャーキャピタルで注目の”分散型メディア”ってなんだ??

今、ベンチャーキャピタルで注目の”分散型メディア”ってなんだ??



2016年1月12日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

分散型メディア、という言葉を聞いたことがあるだろうか。もしないとしたら、Webデザインに従事する者として相当にアンテナが錆びている。もしくは知ってはいても関心はない、という者なら、数年後には職を失う恐れを自覚した方がいいだろう。

分散型メディアとは、自社のWebサイトやアプリを持たずに、FacebookページやYouTube、Snapchat、Instagramなどのソーシャルメディアのアカウントに直接コンテンツを配信するメディアのことを指す。つまり複数の他社メディアにコンテンツを分散して配信する「間借りメディア」である。英語ではDistributed Media(配信型メディア)とも、ホームレスメディアとも呼ばれている。

代表的な分散型メディアとして最近話題になっているのが、NOWTHISというベンチャーだ。ソーシャルメディアの各プラットフォームに最適なコンテンツ(動画)を制作して、直接ホスティングさせるという手法をとってブレイクした。

自前のメディアを持たずにコンテンツの制作と配信のみを行うという点では、メディアというより通信社や映像制作会社、つまりコンテンツプロバイダー(CP)と呼ぶべきではないか、とも思うのだが、CPはコンテンツの制作や販売そのものを事業とするが、分散型メディアはコンテンツの配信は基本的に無料で、配信先のプラットフォームで広告をもって収益を確保する。

プラットフォームが広告を配信し、その分配を頂戴するというモデルではなく、分散型メディアは自前の広告ソリューションを持つ。いやゆるネイティブアドだ。コンテンツと同じフォーマット、同じ形式で広告を配信するのである。

分散型メディアは、ある意味メディアであることを(同時にプラットフォームになることも)あきらめて、既存プラットフォームであるFacebookやアップルが用意した場に、コンテンツを提供することに割り切ったビジネスモデルだと言える。

しかし、前述のように収益モデルもプラットフォームが用意したものに依存するのではなく、コンテンツと不可分のネイティブアドによって、自力で収益を確保するのが特長だ。

つまり、分散型メディアの隆盛は、ネイティブアドの市場拡大とイコールなのだ。そして、自前のメディアを持たない、持っていてもサーバーにファイルを貯めるだけでトップページ(=ホームページ)を持たない構造のメディアが中心になった場合、Webデザインそのものやデザイナーに、存在価値は残るのだろうか???

対岸の火事と思わず、こうしたトレンドにあって、クリエイターはどう生きていくべきか、早めにシミュレーションしておくべきだと思う。



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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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