Facebookが”いいね!”を6つの感情表現に分別。この複雑化にユーザーは対応していけるか?

Facebookが”いいね!”を6つの感情表現に分別。この複雑化にユーザーは対応していけるか?





2016年1月18日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

Facebookが、「いいね!」を、いいね!|超いいね!|うけるね|すごいね|悲しいね|ひどいね、の6種類に分けて、実装開始した。Web版でもモバイルアプリでも対応していることを確認できた。Facebookページにも同じく、同様のエンゲージメントに対応していることを確認したが、Facebookページ専用アプリでは、2016年1月18日現在ではまだ実装されていないようだ。

また、Facebookは、国内においても「Instant Articles(日本ではインスタント記事、と呼ぶことになった。ひどい命名な気がするが…)」がスタートする。現状では、朝日新聞社、産経デジタル、東洋経済新報社、日本経済新聞社、毎日新聞社、読売新聞東京本社の6メディアがテスト参加するという。グノシーやスマートニュースなどのニュースアプリとの競争激化が見ものである。
(この「インスタント記事」については、別途 オーディエンスの反応を確かめ次第、レポートしたい)

さて、Facebookが行った感情表現の分別だが、果たしてユーザーはついてこられるかだろうか。今のところは、皆新しいものに対する好奇心から、この新しい「いいね!」を試し、楽しんでいると思うが、実際にはモバイルでこの6種類の「いいね!」から、適切なものを選ぶのに、少なくともコンマ数秒を、いままでの操作よりも余計に使わされることになる。



モバイルユーザーは概して短気だ。Facebookはニュースコンテンツをオーディエンスに対して、より速く快適に消費してもらえるためと称して「インスタント記事」サービスを開始しているわけだが、今回の感情表現の分別は、スピードアップ、という彼らのお題目からすると逆行するアイデアだ。

Twitterが140文字制限を捨て、テキスト中心からマルチメディア対応のストリーム化へと突き進み、そもそもの本質的価値であるシンプルさを捨て、複雑なサービスへと迷走しているように、Facebookは便利なサービスを提供しようと考えるあまりに、複雑化の罠にとらわれているのかもしれないのだ。

確かに、Facebook上で流れるコンテンツの多くは、ユーザー自身のステイタスのアップデートから、徐々に 社会的なニュースのシェアへと変質しており(だからこその「インスタント記事」だ)、必ずしも”いいね!”(英語ではLIKE)という表現が当たらないことが多くなっている。ただ、コメントはテキストをタイプしなければならず、ユーザーには負荷の大きい作業となるので、いいね!をワンクリックするだけでレスポンスできる手軽さは、Facebookのコミュニケーションの大きなメリットであったはずだ。

これが6種類から選ばなくてはならず、かつ、これまでの数倍(0.1秒から 0.5秒であっても5倍待たされることになる)のオーバータイムが発生するとなれば、やがては面倒になって、当初からの「いいね!」だけしかつかわないか、もはやレスさえしなくなる危険性があるのではないだろうか?

特に、Facebookページを運営し、広告を多用する企業からすると、オーディエンスの反応が複雑化することは、決していいことではないように思う。結果的にエンゲージメントの絶対数が減っていくリスクがあるからだ。

この予測が外れることを願うが、なんにしてもサービスを多様化させることは、たいていの場合、ユーザーを混乱させ飽きさせる結果を生むことが多いのは間違いないと考えるのだ。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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