若者の心を鷲掴みにする個性派アプリ「Snapchat」の秘密

若者の心を鷲掴みにする個性派アプリ「Snapchat」の秘密

Amebaクリエイティブディレクターが語る
スマホアプリのデザイントレンド
2016年5月26日
TEXT:山幡 大祐(株式会社サイバーエージェント)

日々進化するデバイスやユーザーに合わせ、スマホアプリのデザイントレンドの移り変わりは非常に早い。本コラムでは、アップデートによって進化を遂げたサービスUIや新機能、新サービスなどにフォーカスし、より良いユーザー体験を提供するうえでの工夫についてサービスごとに考察する。今回は、若者がハマるSNS「Snapchat」を取り上げる。

「Snapchat」は、2011年9月に「10秒で消えるチャットアプリ」としてリリースされ話題となったアプリである。これまでのアプリになかった「操作性」や「遊び心」が大きく支持され、日本でも10代の若者を中心に盛り上がってきている状況だ。また、ちょうどこの4月に新機能を追加するアップデートも行われている。今回は、そんな若者の心を鷲掴みにするアプリの、ユーザー体験に対するさまざまな工夫をひも解いていく。

「Snapchat」
●iOS版アプリは こちら
●Android版アプリは こちら



特長は遊び心が満載の個性的なUI

同アプリは個性的で遊び心に満ちたUIと言える。全般的に、実装機能に対するテキスト説明がほとんどなく、上下左右にフリックして画面を移動するだけ。「チャットは左」、「プロフィールは上」といった仕様で、画面をフリックして感覚的に操作できるのが大きな特長だ。


そして、アプリを使用していて気づくのは、とにかくユーザーを楽しませる仕掛けが散りばめられているという点だ。画面を引っ張り更新すると、カラフルな背景の中でおばけが踊りだし、間違った操作をすれば「あはは」と笑われる。一方、画面の裏ではおばけがサッカーをしていたり、ややふざけている感じが面白い。

だから、どの画面に遷移しても楽しげで「気楽に使ってよ」というようなライトなノリが伝わってくる。おそらく、このフランクさが若者を惹きつける魅力なのだろう。


あえて残さないコミュニケーション、残るのは不自然

ご存知のようにSnapchatはユーザー同士のやりとりが「10秒で(自動的に)消えていく」のが最大の特徴のアプリである。これが他のSNSにはないユーザー体験を提供しており、決定的な違いでもである。

例えば、友人とコミュニケーションを取る際に「今、ちょうどヒマだから軽く話をしようよ」と言いつつも、「会話の内容はちゃんと録音しとくね」なんて言われたら、ちょっと怖くて喋れなくなるだろう。しかし、通常のSNSのコミュニケーションでは、この「残る」というのが当たり前な上、しかも、それをごくごく自然な体験として受け入れられ利用されている。

通常、隣にいる友人と会話をする場合、その内容をわざわざメモしないし、記憶できる範囲でしか覚えていない。Snapchatはそういった「記録せず今を楽しむ」リアルなコミュニケーションに近い体験ができるため、若いユーザー層にとっては気負うことなく、それが独自の価値となって支持されるのである。


さらにSnapchatのUIを分析していくと、10秒でコンテンツが消えてしまう分、通知にも工夫が施されている。相手ユーザーがチャットでテキストを書き始めると「入力中…」というプッシュ通知がいち早く飛んでくる。動作が完了しないうちにプッシュを送るというサービスはなかなか少なく、入力中と表示されると、ついついメッセージが気になり不思議と待ってしまう。Snapchatならではのリアルタイム性を重視した仕組みと言えよう。


チャットの新機能「10秒ループ動画」の追加

また、この4月にアップデートされた新機能では、写真の送信やスタンプなどチャットとしての標準的な機能追加のほかに、ループする10秒の動画の送信も可能となった。

上図のように、ムービーアイコンを長押しすると、そのまま動画撮影が始まり、指を離せば送信される。もし途中でやめたくなったら、長押しのまま画面中央に持っていくとキャンセルすることもできる。

一見ハードルが高く見える動画の送信も、簡単な操作とSnapchatが作り上げた世界観と上手く相まって、他のアプリに比べても圧倒的にハードルが低くなっている。簡単な操作でサクッと送れるため、テキストでやりとりしながらも最後には何となく動画を付け加えてしまう、構造的な仕組み(工夫)も面白いところだろう。

 ■まとめ「Snapchat」にみる、体験で魅せるアプリ作り

Snapchatは、とにかく使っていて楽しいアプリだ。画面が左右に振り分けられたり、画面ごとにデザインテイストが変わったりと一風奇抜な仕様と思えるが、これらの行為自体はユーザーの心理を突きつつ、特殊な世界観をユニークな「体験」として上手く表現している。

多くのアプリが生み出される中で、独自の世界観をUIだけで伝えるのは難しくなってきているが、Snapchatのようにルールに縛られず、遊び心を備えた魅せる工夫で価値ある「体験」を伝えることが必要だ。

このようにユニークで個性的な機能アップを重ねるSnapchat。今後のさらなる進化に注目したい。

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[筆者プロフィール]
山幡 大祐(やまはた だいすけ) /クリエイティブディレクター
「Ameba」のクリエイティブディレクターとして、Amebaアプリのリニューアル等を担当。現在は、「755」開発チームのプロダクトマネージャー兼デザイナーを務める。

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