歌でつながるSNS nanaの台頭、市場が発するモスキート音(重要性)を聞き分けろ!

歌でつながるSNS nanaの台頭、市場が発するモスキート音(重要性)を聞き分けろ!

2016年5月30日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

「モスキート音」。きっと、この言葉自体を知る人は多いだろう。モスキート音とは17,000ヘルツ前後の高周波であり、耳元の蚊のような不快な音なのでその名がついた。そして、このモスキート音は、20代前半を過ぎる年齢から徐々に聞こえなくなる。聞こえないのは耳の老化であり、モスキート音が聞こえるか聞こえないか、それが若いか若くないか、というひとつの境界線である。

SNSと呼ばれるITサービスにはいま、まるで”モスキート音”のように、明らかな境界線が存在している。大人にとってはSNSは、イコールFacebookであり、Twitterだろう。しかし、10代や20代前半の若年層にとってのSNSは、いまやInstagramであり、Snapchatであり、MixChannelである。そしてまた、歌をシェアするnanaというSNSまで台頭してきた。

そう、年齢によって利用するSNSは明らかに異なり、分別されているのである。Twitterは日本の若者にはまだ支持されているようだが、同時に30代以上の“大人”にも多くの利用者がいる。逆に言えば、これは中途半端であり、どっちつかずとなり、それが彼らの衰退を招いていると言っていいだろう。

Facebookがmixiを駆逐したのち、SNSと呼ばれるサービスはWebからモバイルアプリへと主軸を移した。Facebook以前のSNSは、まずIT業界に働く”大人”がその存在に気づき、使い始め、そして正式に輸入されて普及していった。つまり、知識ある大人のフィルターを経てから普及したのだが、Facebook以降のSNS、具体的にいえばInstagramやVine、Snapchatなどについては大人の利用者が増える前に、10代から20代前半の若年層に根を張っている。InstagramやSnapchatの使い方を本を買って勉強するのは大人だけで、若者たちにそうしたレクチャーは必要がない。

また、nanaは歌、Instagramは写真、Vineは動画、といったように、若年層にウケる新興SNSはコンテンツを軸につながる、昔の言い方で言えばインタレストグラフ型のSNSであることが特徴だ。FacebookやLinkedInなどは人間関係、もっといえば人脈で繋がるソーシャルグラフ型であり、あきらかに異なっている。

古今東西、若者(若年層)はたいてい中高生だったり大学生といった年代だ。だから人間関係は学校のクラスや地域の大きさでクラスタリングされているため、そこをSNSに頼る必要がない。また、Facebookのようなソーシャルグラフ型のSNSの必要性がそもそも薄いし、リアルの人間関係を模すことで先生や親と繋がるのはまっぴらごめんなのである。つまり、どういう事かというと、コンテンツ軸のインタレストグラフ型でなければならない。結果的に中高年層と若年層の間には、明確な境界線が引かれることになったのである。

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