全国30拠点でオープンデータ活用を促進、「アーバンデータチャレンジ2016」スタート

全国30拠点でオープンデータ活用を促進、「アーバンデータチャレンジ2016」スタート


UDC2016キックオフイベント

2016年7月4日
TEXT:片岡義明

地域課題の解決を目的に、イベントやコンテストを通じてオープンデータやその活用ツール、アイデアなどの創出に取り組むプロジェクト「アーバンデータチャレンジ2016(UDC2016)」のキックオフイベントが6月27日、東京大学駒場第2キャンパスにて開催された。

UDCは、社会インフラのデータに関する情報の流通環境を整備することを目的とした組織「社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)」および東京大学生産技術研究所・関本研究室が主催している。これから今年度末にかけて、コンテストの開催に向けてさまざまなシンポジウムやワークショップなどの取り組みを全国各地の拠点で実施する予定だ。

昨年のUDCの地域拠点は全国20ブロックだったが、今年のUDC2016ではさらに10ブロックが加わり、計30ブロックとなる予定だ。今回のシンポジウムでは、これら全国各地の拠点で活動する自治体関係者やエンジニア、研究者、プランナー、NGO関係者など幅広い人々が集まった。


UDC2016の公式サイト

最初にUDCの実行委員長を務める東京大学生産技術研究所准教授(AIGID代表理事)の関本義秀氏が登壇し、UDC2016の紹介を行った。関本氏は、今年で4年目を迎えるUDCの過去の受賞作品を振り返り、起業してビジネス展開をしている例や、他地域にサービスを展開している例などを挙げた。


関本義秀氏

その上で、今年は、地域の活動そのものを評価する「ベスト地域拠点賞」を設定し、全地域拠点を対象に「特別賞」、今年から新たに加わった地域拠点を対象に「新人賞」を表彰すると発表した。また、「ベスト地域拠点賞」に選ばれた拠点には、UDC2017の全体イベントの開催地にすることも検討していると述べた。

関本氏は今後の抱負として、「地域の自治体や教育機関などに周知を広めていくと同時に、課題解決に近付ける活動も続けていきたいです。また、ツールやデータセットもバラエティ豊富に揃えて、少しでも面白い、使ってみたくなるツールを充実させていかなければならないと思うし、私たち事務局側も少しずつ進歩していきたいと考えています」と語った。


今年は10地域が加わって計30地域となった

続いて、昨年度のUDC2015のアプリケーション部門で金賞を受賞した「北海道統計データ閲覧ツールSeseki(セセキ)」の開発者である三好邦彦氏が登壇した。同ツールは、市町村単位で集計されたデータを軽快に閲覧するためのアプリで、オープンな統計データを活用したいと考えている人が、Excelの簡単なスキルとSesekiだけで簡単にデータを可視化できるように設計されている。


三好邦彦氏

Sesekiを使うことにより、自治体が公開している統計データを地図上にヒートマップ表示することが可能で、ランキングやデータのリストなども表示させることができる。受賞時は北海道のみだったが、最近では東京近郊版も作った。Githubで開発しており、地図を差し替えればほかの地域にも対応できることから、ほかの地域においても開発協力者を探しているという。


北海道統計データ閲覧ツールSeseki

「Sesekiは新たなPCスキルがほとんど不要で使えるツールを目指していて、個人のPCでも簡単かつ軽快に扱えます。今までデータを扱うことについて『敷居が高い』と敬遠していた人におすすめです」と三好氏。

同氏はこれまでコンテストへの参加経験がなく、今回が初参加で初受賞だという。三好氏は、このような短期間で金賞を受賞できた理由として、「作った自分自身が『出身地のことを詳しく知るために、調べる煩わしさをなんとかしたい』という具体的な課題を持っていた」ことを挙げた。そこで行き着いたのが、誰でもすぐにヒートマップとランキングが見られるツール「Seseki」であり、同ツールを使うことでユーザー1人1人が課題と深く向き合うことが可能になると語った。


東京近郊版も公開

三好氏によると、同ツールはさまざまな分析をすぐに試すことが可能であり、広く浅い分や狭く深い分析など、さまざまな分析によって得られた気付きが、さらに分析を深めるきっかけとなり、持続可能な取り組みにつながっていくという。三好氏は、UDC2016をきっかけに生み出されるアプリやサービスについても、無理して続けるものではなく、楽しく実のある形で持続可能な取り組みとなっていくことが必要であると語った。

このほか、埼玉や富山、長野、岐阜、愛知など9つの地域拠点が、UDC2016を通じて今後実施したい地域の取り組みについて紹介したほか、シビックテックに取り組んでいる関係者による、地域課題解決をテーマとしたパネルディスカッションも開かれた。


新たに参加した9地域が今後の抱負を語った

今回、新たに加わった9地域を含む計30ブロックの地域において今後、さまざまなワークショップやイベントを開催するとともに、2016年度末にかけて、オープンデータやデータを活用するためのツール/アプリ、アイデアなどを募集するコンテストを実施する予定だ。

コンテストの応募要項の詳細は、10月4日・5日に開催予定の中間報告シンポジウムで公開する予定で、作品概要は2016年12月23日まで、作品の応募締め切りは2017年1月27日までとなっている。最終審査会は2017年の2月24日・25日を予定している。

このほか、UDC2016の開催に合わせて、データ提供・支援拠点として参加している国立国会図書館(NDL)が7月30日、NDLのデータ利活用をテーマとしたワークショップ「NDLデータ利活用ワークショップ~ウェブ・アーカイブの自治体サイトを可視化しよう~」を開催する。同イベントでは、「国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)」で保存された情報資源の中から、地方自治体のWebサイトのメタデータなどを使ってデータ可視化を行う。エンジニアやデザイナー、Webアーカイブに興味のある人などを対象として参加者を募集している。

■URL
アーバンデータチャレンジ2016
URL:http://urbandata-challenge.jp/
北海道統計データ閲覧ツールSeseki
URL:http://labo.colspan.net/seseki_udc2015/
「NDLデータ利活用ワークショップ」案内サイト
URL:http://lab.ndl.go.jp/cms/?q=visualize2016
2016/07/04

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