UXデザインを上手に組み込むための「関わり方」と「取り組み」のコツ(前編)

ユーザー満足度を高めるための「UXデザイン」。その具体的な施策のひとつである「ユーザー調査」。勉強会やネット上のTipsでは知り得ない「社内の巻き込み方」「クライアントの反応」「実際の効果」等々の疑問を解決すべく、株式会社メンバーズでUXデザインを推進する川田 学さん(HCD-Net認定 人間中心設計専門家)に取材をさせていただきました!


→【後編】UXデザインを上手に組み込むための「関わり方」と「取り組み」のコツ

▷企画営業職上がりのプロデューサー。 上司には「そのままだと無価値」と言われた

 

 

――まず簡単にお仕事について紹介をお願いします!

 

私の所属するチームは主に新規案件の提案・実施をしています。UXデザインについては、2年ほど前から本格的に部署として取り組み始めました。また私自身もその当時にUXデザインの専門資格である「HCD-Net認定 人間中心設計スペシャリスト」の認定を受けました。

 

その頃はちょうど業界でもUXデザインが盛り上がってきた時期で。社内に認定者が私ひとりしかいなかったこともあり、UXデザイン関連の依頼がきたらまず私が対応したり、セミナーで講師をしたりしました。

 

UXデザインは独学だったのですが、プロを名乗る立場でありながら独学というのはどこか不安があり、去年、産業技術大学院大学の履修証明プログラム「人間中心デザイン」(社会人向けのUXデザインの専門コース)を受講しました。その集大成として今年、スペシャリストの上位にあたる「人間中心設計専門家」の認定もいただきました。


――川田さんがUXデザインに知り組むようになったのはどうしてですか?


UXデザインに関わる以前、私は企画営業職上がりのプロデューサーでした。ディレクションがすごくできるわけでもないですし、デザインがすごくできるわけでもなかった。そんな時に上司から言われまして。「そのままだと無価値」だと。それで何かしら自分のスキルを裏付けるものを持ちたいと思いました。

 

その頃UXデザインに出会って興味があって調べていくうちに、これはいわゆるビジュアルデザインとは異なる、もっとリサーチやプランニングに関わるものだということが分かりまして。そういうスキルセットを持った人間を「UXデザイナー」と呼ぶのだということも知りました。

これなら企画営業職としての経験も生かせるだろうし、興味もある。さらに調べるうちに「人間中心設計スペシャリスト」という資格があることを知って、力試しも兼ねて受験しました。資格を取れば信用も上がるだろうと思って。結果社内で一人だけの認定者になったことで、いろんな案件で声がかかるようになりましたね。それでも最初の頃は色物扱いだったのですが、そんな時本格的なUXデザインの機会を与えてくれたプロデューサーがいまして。そのプロデューサーのプロジェクトにおいて及第点となる結果を出せたことが実績となり、周囲にも認めてもらえたと感じました。


――社内ではどのような立場として関わるのでしょうか?

 

プロデューサー兼UXデザイナーとして案件に入ります。そのような関わりの中で、プロジェクトへのUXデザインの導入を試させていただくこともできました。自分の裁量で設計できるプロジェクトがあって、UXデザインの導入をどんどん推し進めていけたことは大きかったですね。様々な案件で多様な手法を試しながら経験を積めたことが現在に繋がっています。



▷ 「Lean UX」で“スピード感”のあるプロジェクトを形成

 

――UXデザインはどのように進めていくのですか?

 

具体的な事例として、あるサービスサイトを新規に作ったプロジェクトがあります。プランニングをして、どんなコンテンツが必要かを導いていくというものですね。この事例はすこし特殊で、「Lean UX」(リーンUX)という手法を使いました。UXデザインの通常の流れと異なって、先に「ユーザー調査」をしていません。

 

 

――採用の理由はなんでしょう?

 

大きく2点あるのですが、まずスピード感を求められたということが1つです。素早く作って実際にユーザーの反応を見ながら改善をしていくやり方は、我々の希望するところでもありました。

 

さらにもう1つ、「ユーザー調査からやりましょう」という提案をした際に、役員の方から「調査しなくても出来る」というアイデアをいただいたことがあります。プロジェクトの主幹として携わることになった方が現場で長く接客をしていて、ユーザーを深く理解しているという方で。調査しない代わりに、その方に話を聞けばユーザーのことが分かるというお考えでした。実際にお話を伺ったところ、その担当者が本当に色んな引き出しを持っていらして。その方がいたからこそ「Lean UXというフレームワークでできます」という話になりました。

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