UXデザインを上手に組み込むための「関わり方」と「取り組み」のコツ(後編)

ユーザー満足度を高めるための「UXデザイン」。その具体的な施策のひとつである「ユーザー調査」。勉強会やネット上のTipsでは知り得ない「社内の巻き込み方」「クライアントの反応」「実際の効果」等々の疑問を解決すべく、株式会社メンバーズでUXデザインを推進する川田 学さん(HCD-Net認定 人間中心設計専門家)に取材をさせていただきました!


→【前編】UXデザインを上手に組み込むための「関わり方」と「取り組み」のコツ

▷お互いの幸せのため、クライアントには「伝えて」「見せる」

 

 

――UXデザインについてクライアントの理解があまりないときはどうされていますか?

 

UXデザインをアプローチする時、現時点ではクライアントを選ぶところがあります。クライアントが主体的に参加して下さらないと成立しませんからね。UXデザインややり方を面白いと思って、自分たちも一緒に考えたいと思って下さるクライアントに対しては相性が良いです。

 
逆に主体的に参加して下さらないなど、クライアント内で経緯を共有していただけない場合は難しくなりますね。「筋の良い仮説」のような定性的なデータを元にする場合、クライアント内での共有も難しくなりますので。ワークショップや打合せに参加されない方に”なぜこうなっているのか”をご理解いただくのは非常に難しいと感じています。この辺りはどうしても主体的に参加いただき、価値を感じていただけないと説明しきれない部分だと考えています。

 

プロジェクトによってはコミュニケーションが上手くいかなかった例もありまして。突然ユーザー調査の結果も途中経過の議論も知らない人が来て「これはなんだ」となってしまったことがあり、プロジェクトが中止になったという経験も実はあります。


――クライアント側の担当者が協力的でない場合、どのように誘導すればいいのでしょうか?

 

どちらかというと、受注前のプレゼンテーションの段階できちんと意識合わせをしておくことが重要で。「楽しいプロジェクトにする自信はあります」ということと、「ただし、こういった方法で進めるためとても大変ですよ」と進行のイメージをちゃんと伝えるようにしています。「必ず良いモノを作る。一緒に作りましょうね」と。あとは誰が決裁者なのか、その決裁者の方が参加いただけない場合は以前のような失敗経験があることも伝えて、しっかり「握り合っておく」ことが大切です。残念ながらそれでプレゼン時に競合負けするケースもあるのですが、そこが握れていないと後でお互いに不幸になりますね。

 

――UXデザインのメリットについてはどのように説明していますか?

 

「定性的なデータでも一貫性のあるクリエイティブに落とし込める」と伝えます。そもそもUXデザインではユーザーに対してインタビューを行い、なるべく濃い、言葉にできない心理を探りたいという前提があります。ユーザー調査があるからこそ良いモノがつくれる、という点が正しく伝わると、面白がって下さる人たちは多いです。そこはもう「目に見える形」で見せるのが早いですね。


最近はクライアントからもUXを求められることが多いのですが、実際にどのようなものなのかが分からず、何故インタビューのデータがクリエイティブに繋がるのかが見えないといったお話を伺います。「インタビュー」「ペルソナ」「カスタマージャニーマップ」などの単語は認知されはじめていますが、実際それらを使って「ユーザー体験を設計する」こととはどういうことなのかがよく分からないのだと思います。私もそうでした(笑)。私のチームでは「シナリオベースドデザイン」という手法を使って、あるべき理想の体験をシナリオで設計するんですが、これも説明されてもわかりにくいんですよね。

 

なので最近は受注前のプレゼンテーションの段階で、弊社の社員を用いたユーザー調査、シナリオ作成からアウトプットするところまでを行って「仮の形」を見せています。「弊社はこうやります」というイメージをしっかり見せるようにしています。

→NEXT:得られるものは必ずある。とにかく始めることで見えるものがある。
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