UXデザインを上手に組み込むための「関わり方」と「取り組み」のコツ(後編)

――「百聞は一見に如かず」ということですか。

 

その通りですね。どれだけ説明しても伝わらないので、もう見てもらった方が早いなと。UXデザインのプロセスを「弊社ではこうです」とまとめた図がありまして(下図)、このサークルのどこからでも始められます、と説明しています。ビジネス要件の確認から評価まで進んで、必要であれば適宜戻るべきところに戻る。そのサイクルの説明ですね。そのあと「弊社の社員でユーザー調査した結果を適用するとこのようになります」という流れでプレゼンしています。調査データからペルソナを作って、シナリオを作って、そのシナリオを実現するクリエイティブはこれですと。ここまでやるとプレゼンだけでも特徴が出ますね。他社ではあまりやらないようなので。

メンバーズ社内で利用しているUXデザインのプロセスサークル


――なるほど。見せたほうが早い、というのはスマートですね。プレゼンの段階でユーザー調査までしているわけですからね。プロジェクトが始まったら改めて調査をするのですか?

 

スマートかは自信がないです(笑)。調査は基本的にやり直していますね。一度パイロットテストができている状態からプロジェクトに入れるので、我々としても時間を短縮できたりとメリットがあります。でも「もうこの結果でいいから進めて」と言われることもあります(笑)。 



▷得られるものは必ずある。とにかく始めることで見えるものがある。

 

――御社のように500人規模の会社ですと今のような方法でも成立するかと思うのですが、もっと規模の小さい制作会社だったらどのように対応したら良いのでしょうか?

 

そうですねえ。やはり知り合いでもいいから意見を集めると良いと思います。インタビューの謝礼で言えば相場5000円くらいですし、インタビュー設計も頑張れば1日で出来て、実施も1人当たり1時間程度。書き起こしをしても3時間とか4時間程度なので、それぐらいの費用と時間を投資しても見返り分は間違いなくあります。私はまだ経験がないですが、どうしても会えなければ電話でもいいよ、とアドバイスをいただいたこともあります。


――少人数な制作会社等の場合、ユーザー調査はなかなかハードルが高いように感じていて。実際やっていない会社も多いと思うのですが、それは業界としてその見返りがまだ認識されていないということでしょうか。

 

そういう理由もあると思います。あとは「インタビューが怖い」なんて例もあるのではないかと思います。やっぱり一対一で話すので。あとは成果へのプレッシャーがあってユーザー調査への気持ちのハードルを下げきれない、というのもあるのかなと思います。インタビューしたのに何もヒントを得られなかったらどうしようとか、怒らせちゃったらどうしようとか。経験がないことで不安が勝っている場合もあるのかなと。



僕の場合、人間中心設計機構が主催する半日のインタビュー研修に参加して、そこで初めて出会う方を相手に練習できたこととが最初の一歩を踏み出せるきっかけになりました。今思い出すと結構ひどい出来でしたよ(笑)。
でも、だからこそやらなくちゃという意識になりました。産業技術大学院大学のインタビュー実践の講座でインタビュー設計も学べたことで、事前準備が大切なこともよく理解できました。ちゃんと事前準備さえしておけば、そこまで大きく失敗するということはないですしね。その事前準備のやり方が分かったのは大きいです。


とはいえまず「経験する」こと。その経験についても、「失敗する経験」が重要です。何事もそうですが、とにかく始めてみて、失敗することが大切。そこで見えるものがあると思います。 

 


――ありがとうございました!
 

取材 : 羽山 祥樹(HCD-Net)


■株式会社メンバーズ
1995年創業。経営理念に「“MEMBERSHIP”でマーケティングを変え、心豊かな社会を創る」を掲げ、国内大手企業を中心とした顧客企業に対し、デジタルマーケティング分野における戦略立案から企業Webサイトの構築・運用、ソーシャルメディア活用等の支援サービスを総合的に提供しています。
 
■川田 学
大手クライアントのウェブコミュニティやサービスサイトにおけるUXデザインアプローチにより、リニューアル、UI、コンテンツ改善、新規ウェブサービス開発のプロジェクトに参画。リサーチやプランニング領域を中心にUXデザインを担当。2016年4月にHCD-net認定人間中心設計専門家の認定を受ける。
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