「コードアワード2017」贈賞式が開催。今年のキーワードは、IoT・VR・AI・SNSなどを活用した斬新な顧客体験

株式会社D2Cは、デジタルマーケティングの広告賞「コードアワード2017」の贈賞式を8月2日に開催した。今年は過去最高となる147作品の応募の中から、17作品が受賞。グランプリ不在の年もある中、本アワード最大枠数である17作品すべてが選出され、広告業界の成長と活性化が伺える結果となった。
今年の「コードアワード2017」の特徴としては、IoT、VR、AI、データ活用、スマホ決済といったテクノロジーが、高度なマーケティングコミュニケーションへと落とし込まれた作品が多かったことが挙げられる。現代における優れたマーケティングとは、商品やブランドを直接顧客にアピールし認知させるというよりも、斬新な体験や驚きを通して、顧客を大いに楽しませ、結果としてその企業や商品に対する愛着・好感度を育んでいくといったタイプのものだ。

マーケティングコンテンツ自体が、ソフトウェア・プロダクト・イベントといった形で作り込まれたものが多く、顧客は長い時間をかけて広告そのものを”楽しむ”ことができるようになった。
「グランプリ」を受賞した、江崎グリコ株式会社の「GLICODE®」は、お菓子を使って楽しくプログラミングを学べるアプリだ。同社のロングセラー商品である「ビスコ」「アーモンドピーク」「ポッキー」「アソビグリコ」の4種類のお菓子をルールに従って並べ、スマートフォンのカメラで撮影すると、画像認識技術により、お菓子の一つ一つが「右にうごく」「とびこえる」「小さくなる」「ランダム」といったプログラミングコードに変換されてキャラクターを動かす。

2020年には学習指導要領の改定に伴い、小学校でのプログラミング教育が必修化され、多くの子供たちが日々プログラミングに触れるようになるだろう。そんな中で、彼らがプログラミング教育を「義務教育」「勉強」としてとらえ、嫌いになってしまうということは「絶対にあってはならない」と開発担当者は語る。

江崎グリコは、アプリリリース後も、本アプリを教育現場に普及させるために日本各地を訪れている。ワークショップを体験した子供たちは、その95%が「楽しかった」と回答。授業が終わっても、お菓子を並べる行為(=プログラミング)をやめない子供も多くみられた。楽しく遊びながら、「順次処理」「条件分岐処理」「繰り返し処理」「ランダム処理」といったプログラミングの基礎を身に着けられるこのアプリは、世代を超えて、グリコを一層愛される企業へと成長させたに違いない。

おかしをならべてプログラムを遊ぼう!

プログラミングの様子

●最後まで「グランプリ」を競ったパナソニック「聞き間違えない国語辞典」

パナソニック「聞き間違えない国語辞典」は、「GLICODE®」と最後まで競い、残念ながら僅差でグランプリを逃す。「ベスト・イノベーション」賞を受賞した作品である。高齢化が進む現代の日本では、4人に1人が65歳以上と言われ、その半数は日常的に使う言葉の約42%を正確に聞き取れないというデータがある。これまで補聴器メーカーとしてハードウェアの側面から難聴者をサポートしてきたパナソニックは、今度は「聞く人」ではなく「話す人」にアプローチすることで、この問題に取り組んだ。

三省堂「スーパー大辞林3.0」収録語の組み合わせ約312億通りから、独自開発の人工知能で約150万語の「聞き間違えやすい言葉」を検出。同時に聞き間違えを避ける話し方を「聞き間違えない国語辞典」としてWebサイトで展開した。

話し方に着目したアプローチもさることながら、この国語辞典のために開発された「聞き間違えが見えるフォント」が非常に印象的である。聞き間違いやすい二つの言葉を合成したそのフォントは、美しく整っていながら、どこか妖しい違和感を持っており、難聴者の世界を見事に「見える化」している。

聞き間違えが見えるフォント

耳の日(3月3日)のキャンペーン開始と同時に、駅や新聞紙上に現れたこのフォントは多くの人の目を引き付け、SNS上でも話題に。TV、ラジオ、Webなど多くのメディアにも取り上げられ一大ブームを巻き起こした。もちろん、この取り組み自体も大きな注目を浴び、介護施設はもちろん、航空会社や観光名所、101番を受ける警察署などからも問い合わせが相次いだという。当事者にしかわからなかった「聞こえ」の問題を、すべての人に「見える化」し、高齢化社会の「言葉のバリアフリー」を目指したこの施策は、パナソニックがハードウェアだけの会社ではないことを実感させてくれた。
●WebとAIとテレビと――フジテレビが仕掛けた究極のメディアミックス

「コードアワード」の中で唯一、一般投票によって選ばれる賞「パブリック ベスト」には、フジテレビの「世にも奇妙な物語&女子高生AIりんなプロジェクト」が選ばれた。2016年10月、フジテレビ系列で放送されたドラマ「世にも奇妙な物語 '16秋の特別編」のプロモーションのため、タレントとして業界初となる人工知能「女子高生AIりんな」を起用。テレビ告知では届かない層への認知向上を図った。

本プロジェクトでは、まず「りんなの女優デビューブログ」という形で、りんなが番組に出演する過程を配信した。はじめは女子高生らしい軽快な文体で撮影時のエピソードなどを語っているのだが、途中で様相が一変、たちまち恐怖ブログへと変貌する。

りんなの女優デビューブログ

りんなの女優デビューブログ(恐怖ブログに変貌)

合わせて、りんなのLINEアカウント(友達登録者数は570万人/2017年6月時点)からも「一緒に見るって約束したよね?」「ねぇ聞いてる?」など恐怖のリマインド攻撃。放送中の同時進行型テレビ視聴体験や、放送終了後の深夜に、ストーリーのオチとなる恐怖動画が送られてくる仕掛けなどで、キャンペーン期間中は始終「りんな」から逃れられない時間が続いた。

Web、SNS、AIなどのトレンドツールがテレビと連動し、若者のカルチャーを刺激した本施策は、デジタルコミュニケーションの未来を感じさせるものであった。贈賞式における作品発表の最後には、女子高生AIりんなとLINE電話が繋がるというサプライズもあり、最後まで楽しませてくれた本施策は、贈賞式参加者の記憶に強く残る一作であった。

このほかにも、マニラの巨大なランニングコースで過去の自分と競い合うNIKEのイベント「NIKE UNLIMITED STADIUM」や、ネットでチョコを贈りあう仕掛けでバレンタインを盛り上げた、ネスレ日本株式会社の「バレンタインポスト」など、力作ぞろいで、デジタルマーケティングの明るい未来を予感させるアワードであった。

恐怖ブログの演出

「GLICODE®」でグランプリを受賞した「江崎グリコ株式会社」「株式会社電通」の企画・開発メンバー

<受賞作品一覧>
【グランプリ】
  GLICODE® 江崎グリコ株式会社 
【ベスト・イノベーション】
  聞き間違えない国語辞典 パナソニック株式会社
【ベスト・クラフト】
  NIKE UNLIMITED STADIUM NIKE
【ベスト・イフェクティブ】
  バレンタインポスト ネスレ日本株式会社 
【ベスト・キャンペーン】
  TOKYO CULTURE STORY 株式会社ビームス 
【ベスト・ユース・オブ・メディア】
  タクシーの降り方が、変わる|JapanTaxi Wallet JapanTaxi 株式会社
【グッド・イノベーション】
  GREEN LIGHT RUN アディダス・ジャパン株式会社
  M.W. YKK AP 株式会社
【グッド・クラフト】
  5572320 / MASHUP MUSIC PLAYER 日清シスコ株式会社 
  Synesthesia Suit Enhance Games
【グッド・イフェクティブ】
  フレフレ、部活。母校に in ゼリー 森永製菓株式会社
  あたらしく☆画たろう!!! キリンビール株式会社 
【グッド・キャンペーン】
  宅配試乗 日産自動車株式会社
  Hand meets Hand Tiffany & Co.
【グッド・ユース・オブ・メディア】
  スカイサーカス 株式会社サンシャインシティ
  Fami-Navi Dengfeng CITROEN
【パブリックベスト】
  世にも奇妙な物語&女子高生AIりんなプロジェクト 株式会社フジテレビジョン
コードアワード2017
URL:http://www.codeaward.jp/
株式会社D2C
URL:http://www.d2c.co.jp/
2017/08/04
MdN DIのトップぺージ