ホントに使いやすいのはどれ? ビットコイン管理アプリのUX分析

Amebaクリエイティブディレクターが選ぶ!
今月のオススメアプリ5選(2017年8月版)

2017年9月13日
執筆:佐藤 洋介(株式会社サイバーエージェント)
■今月は最近なにかと話題の“ビットコイン”にフォーカス!皆様こんにちは。最近日に日に愛犬spanの仕草が女子っぽくなってきており、いつもならdivと呼んでいる小屋に寝に入るところ、上目遣いで首を傾げながらおやつを要求するようになりました。AIもこうやって賢くなっていくのかなと感じた佐藤です。
さてこの連載では、Ameba内でも話題になった気になるオススメアプリを、UIデザインの観点から紹介させていただきます。今月は、最近なにかと話題のビットコインにフォーカスし、資産管理ツールとして「複雑な情報をわかりやすく見せる工夫」について考察してみたいと思います。

▷【ホーム画面で集約しない!?】目的を絞ることで判りやすさを追求!

1.Coincheck ビットコインウォレット
価格:無料(2017年9月13日現在)
気になって何度も見ちゃう度:★★★★★
コインチェック株式会社が運営する仮想通貨取引所のアプリ「Coincheck ビットコインウォレット」。ビットコインだけでなく、様々な仮想通貨の取引が行える同アプリだが、注目すべきは「ホーム画面」を持たないUI設計である。まずアプリを立ち上げて最初に目に飛び込んでくるのは、画面の約半分を占めるチャート画面で、ユーザーの気になる情報(チャート図)にフォーカスさせており、価格レートをチェックしながら「売買取引」が行えるよう画面の下半分で売買の操作を行う仕様になっている。つまり、ここでの機能は「チャートの確認」と「売り買い」のみに限定しているのである。

通常、この手のアプリはいろいろな情報が詰め込まれた、いわゆる「ホーム画面」が用意されていることが多く、ユーザーはその画面を起点に遷移するケースが大半である。しかし、同アプリではユーザーの目的を絞ることで「操作の迷い」を減らし、ユーザーの使い勝手を向上させている。

▷iPhone: Coincheck ビットコインウォレット
▷Android: ビットコインウォレット coincheck

▷【迷ったら原点回帰】いつでも戻れる安心感

2.bitFlyer ウォレット - ビットコイン(仮想通貨)取引もかんたん!
価格:無料(2017年9月13日現在)
数字のフォントが可愛い度:★★★★
株式会社bitFlyerが運営するビットコイン取引所のアプリ「bitFlyer ウォレット」。仮想通貨のレート確認や売買、送金、受取、実店舗での支払いなど、このアプリでできる機能のすべてがホーム画面に集約されており、これを起点に各メニューへとユーザーをナビゲートする仕様になっている。

ホーム画面を用意するメリットとしては、「どこを見ていても、最終的にはホーム画面に戻れる」という安心感にあるが、それを強調するかのように左上には常にbackボタンが表示されており、深くなる階層への安心感を提供している。また、実際にビットコインを購入する画面では、変化する取引値を可視化するように金額の下部のグラフが増減し、取引のリアルタイム性を演出、常に最新情報にアクセスしているという実感も安心感につながっている。

▷iPhone: bitFlyer ウォレット - ビットコイン(仮想通貨)取引もかんたん!
▷Android: bitFlyer ウォレット - ビットコイン取引もかんたん

▷【アレもコレも一元管理】複数の情報を俯瞰しながら集約する

3.Blockfolio - Bitcoin and Altcoin Portfolio
価格:無料(2017年9月13日現在)
仮想通貨の資産を眺めてニヤニヤできる度:★★★★★
「Blockfolio」は複数の取引所を利用している場合でも、仮想通貨の一元管理ができるアプリ。基本的には、保有している通貨を登録して仮想通貨の資産価値の変動をチェックするアプリだが、個人のポートフォリオとしても活用できるのが同アプリのメリットだ。

登録してある仮想通貨をタップすると詳細情報へと遷移し、横フリックで情報内容を切り替える仕様となっており、中でも「Book」タブは画面がさらに三分割されていて、それぞれが独立してスクロールする。自らの資産を把握・管理することを目的としたこのようなアプリでは、複数の情報を集約して省スペースに収め、俯瞰して見せる工夫が重要となってくる。

▷iPhone: Blockfolio - Bitcoin and Altcoin Portfolio
▷Android: Blockfolio Bitcoin/Altcoin App

▷【シンプル イズ ベスト】シンプルさが心的負荷を軽減

4.ビットコイン決済 coincheck
価格:無料(2017年9月13日現在)
金額を無意味に弾きたくなる度:★★★★★
コインチェック株式会社がリリースしているビットコインの決済専用アプリ「ビットコイン決済 coincheck」。QRコードを用いてビットコインの支払いができるこのアプリだが、特筆すべきは圧倒的な「機能のシンプルさ」にある。アプリを開くと電卓のような画面が現れ、支払い金額を入力するとたちまちQRコードを生成、決済を行うことが出来るようになっている。

また全面に敷かれたティファニーブルーが印象的で、ゆとりを持って配置された数字のボタンには安心感があり、金額入力後に生成されるQRコードも大きくて使いやすい。「決済」という行為の心的負荷を軽減するような、シンプルな分かりやすさが特徴となっている。

▷iPhone: ビットコイン決済 coincheck

▷【仮想取引を体感】バーチャルがもたらす安心感

5.Wirex. ビットコイン・ウォレット & カード
価格:無料(2017年9月13日現在)
デザインがイケてる度:★★★★★
ビットコイン時代の最先端モバイルバンキングシステム「Wirex」。銀行の口座から入金してデビットカードとして利用したり、ビットコインウォレットとして活用したりと、マルチな決済が可能なこのアプリだが、特筆すべきはそのバーチャル感にある。

すでにビットコインを保有している場合、最初に充てがわれる口座(ビットコインアドレス)宛に送金すればデポジットされる仕組みだが、デジタル情報として金額だけが行き来するのではなく、バーチャルカードを可視化することによって、資産の所有感を抱かせてくれるのが特徴だ。オンライン決済や仮想通貨など、実態を意識にづらい取引の場合、こうしたバーチャルな所有感がユーザーの安心感に繋がるのかもしれない。

▷iPhone: Wirex. ビットコイン・ウォレット & カード
▷Android: Wirex. ビットコイン・ウォレット & カード

▷膨大な情報量を制限するデザインと安心感

今回記事を執筆するにあたり、ビットコイン関連の市場を自分なりに調査して、そのサービスやツールの多さに驚いた。1ユーザーとしてみた場合、取引所の違いや仮想通貨の種類の多さなど情報量に圧倒されてしまい、なかなか手がつけにくい心象を持ったが、仕組みを理解すればするほど「ここだけを見ればOK」というような、ある意味答えを表示してくれるアプリ(情報)を求める自分がいた。私のようなライトユーザーからすると、こういった複雑な仕組みを安心して利用するためには、膨大な情報をそのまま見せられるよりも「心地よく制限」して欲しく、利用するための「最低限」をいかに簡略化して見せてくれるかという事が、一番重要であると改めて感じた。

[筆者プロフィール]
佐藤 洋介(さとう ようすけ)
クリエイティブ 執行役員|チーフ・クリエイティブディレクター

「Ameba」のクリエイティブ統括室 室長。インターネットテレビ局「Abema TV」や、音楽配信アプリ「AWA」、キュレーションメディア「Spotlight (スポットライト)」、無料ホームページサービス「Ameba Ownd」など、主にユーザー向けのメディアサービスのデザイナーを統括し、クリエイティブ責任者として各サービスのUIデザインを監修。

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