「Twitterにみるコミュニケーションツールとしてのブログの本質」



「Twitterにみるコミュニケーションツールとしてのブログの本質」
2008年5月1日

TEXT:加藤智明(つくねパパ)
(株式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー)


デジタルガレージは2008年4月23日、ミニブログサービスの代表格である「Twitter(トゥイッター)」の日本語版サービスを開始したことを発表しました。このMdN Interactive「ニュース&トピックス」でもニュースとして取り上げられましたね。

◆「Twitter」日本語版がスタート 2008.4.24
http://www.mdn.co.jp/content/view/5755/78/


Twitter Japanの登場

Twitterとは、「What are you doing?」(今、何しているの?)で繋がるコミュニケーションサイトで、フォロー登録した人の「今していること」を、140文字以内の短いコメントを通じて共有できるサービスです。今回の新機能投入により、英語版と日本語版の両サイトに言語選択メニューが設けられ、また、ユーザーIDはどちらのサイトでも共通で利用できるようになりました。ちなみに、ユーザーから投稿されるコメントは「つぶやき」と命名されています。

2006年7月のサービス開始時点から日本語対応機能も徐々に向上し、Twitterには多くの日本人ユーザーがすでに存在していますが、今回の画面表記(設定項目名、ヘルプ)の日本語化に伴い、より多くの日本人ユーザーが参加するようになることが見込まれます。

◆Twitter Japan
http://twitter.jp/


コミュニケーションのユーティリティ

フォロー登録した人とのショートメッセージの交換というと、「インスタントメッセンジャー(IM)とどこが違うの?」と思われる方も多いでしょう。IMが、多くの場合、特定の個人とのショートメッセージの交換に終始しているとはいえ、たとえばIMのカスタマイズ可能な「ステイタス(自分の状態)表示」はフォロー登録者全員に対し、「今していること」を伝えることができるわけで、似ている機能ともいえるのかもしれません。

ただしIMの「ステイタス表示」や複数人での「チャット機能」と決定的に違う点は、Twitterのメッセージは検索エンジンに対してオープンな点といえましょう。その意味でTwitterは、IMではなく、また、クローズドなSNSとも違い、やはり「ミニブログ」と位置づけられるのが適当なのだと考えられます。

このミニブログにはTwitter以外にも多くの競合サービスが登場していますが、Twitterはそのシンプルな機能とAPIの公開により、多くの便利ツールやサイトサービスが開発されているのが最大の特徴といえましょう。

Twitterへの投稿は、専用のWebサイトからはもちろんのこと、携帯電話・IM・携帯機器向けのWebサイト・公開APIを利用したサードパーティのアプリケーションからなど、さまざまに用意されています。また、投稿されたメッセージのアウトプットは、自分のブログのサイドバーなどに表示させることも可能です。それだけでなく、Twitter専用の検索サイトや、さまざまなニュース・天気予報・電車の運行情報・道路情報などを自動配信してくれるサービスもあり、フォロー登録さえしておけば、携帯電話からさまざまな最新情報をチェックすることできるわけです。

パソコンには、ファイル圧縮やウイルス駆除・ファイル管理ソフトといった、OSの機能を補いより操作性を向上させるユーティリティソフトと呼ばれるアプリケーションジャンルがありますが、Twitterには、さまざまなソーシャルメディア間コミュニケーションのパイプ役・ユーティリティとして機能する潜在能力が備わっているといっても過言ではないでしょう。


企業はどうする?

今回のtwitter日本語版スタートに際しては、Twitter専用のWebサイト&管理画面に広告枠がリリースされたと報じられています。これは、いってみれば現在多く普及したブログASPサービスのエントリー記事内や管理画面に表示する広告モデルのミニブログ版といえるものです。また、トヨタ自動車の車情報サイト「GAZOO.com」は、独自のTwitterアカウントを取得し、最新情報などをフォロー登録者に対しリアルタイムに配信することを始めています。

このように、フォロー登録者やサイト来訪者に、同一の情報・広告をリアルタイムに提示するといった形での、企業によるTwitter利用は今後増えていくのでしょう。

ただ、同一の情報・広告の提示以外の方法も、Twitterはすでに示してくれています。

Twitterには、「@tabebot 駅名」と入力すると、食べログから評判のいいレストランを探してきて教えてくれるサービスtabebotが提供されています。tabebotを自分のフォローリストに追加しておきさえすれば、たとえば「@tabebot 渋谷」とつぶやくと、渋谷駅近くで評判のレストランを調べて、教えてくれるわけです。

このように、Twitterは、企業とユーザーとの1対1のコミュニケーションのパイプ役さえも果たす可能性を示してくれているとも考えられるのです。

2003年から2004年にかけて、企業がブログとどのように付き合っていくのか模索していた時期がありました。現在となれば、コンテンツ連動型をはじめとしたブログへの広告出稿やブランドサイトでの企業のbloggingの事例はもう珍しいものではありません。ただ、Movable Typeなどのブログツールが簡易CMSとしての機能も充実させてくるにつれ、ブログツールの導入と本来あるべきbloggingの姿が取り違えられる傾向もみられるよういなってきたのも事実といえましょう。

ミニブログTwitterは、一方的な情報発信では終わらない企業のコミュニケーション活動のあり方を改めて問うものといえるのかもしれません。






[筆者プロフィール]
かとう・ともあき●株式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー。市場調査会社でのR&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、ペットのミニチュアダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。



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