「注目を浴びるフランスとアメリカのカルチャー誌」



「“違い”を追求する仏のファッションカルチャー誌『WAD』と
リニューアルで注目を浴びる米の『Interview』誌」
2008年5月22日

TEXT:蜂賀 亨
(クリエイティブディレクター/エディター)


インターネットや映像メディアなどでクリエイティブが注目されている一方、本や雑誌などの紙メディアがつまらなくなってきたかというと、けっしてそうとは思わない。複数の新しいメディアが展開されることによって、紙メディアだからこその面白さ、特性、付加価値が再認識されているのが現状ではないだろうか。

デジカメやメールで情報を集めてそれを誌面上で羅列するだけではなく、雑誌や書籍といった一冊を編集する能力、写真やレイアウト、タイポグラフィなどのアートディレクションのセンスがますます重要になってきているようだ。面白い雑誌が少なくなってきた。雑誌が売れなくなってきたといわれてはいるけれど、世界にはまだまだ面白い雑誌や書籍がたくさんあるのも事実である。ここではそんな気になる雑誌や書籍を毎回紹介していきたいと思う。

今回紹介するのは、フランスのファッションカルチャー誌『WAD』とアンディ・ウォーホルが1969年に創刊したアメリカの雑誌『Interview』。


『WAD』誌(右)と『Interview』誌(左)

今年創刊10周年を迎える『WAD』は“WE'AR DIFFERENT”の頭文字をタイトルにした雑誌。その名前のとおり通常のファッションカルチャー誌とは異なるデザイン、編集スタイルが特長だ。特にファッションページは毎回、グラフィックを加えたり、スタイリングが凝っていたり、通常のモード雑誌のようにひたすら美しい写真を追求するのではなく、グラフィカルなアプローチをしたものが多く、興味深い。

最新号の特集は「THE GRAPHIC ISSUE」になっていて、世界のグラフィックデザイナーやイラストレーターたちの作品や紹介がされているが、やはりそこは『WAD』らしく、有名なデザイナーを特集するわけでもなく、『WAD』らしいこだわりあるセレクションで、見せ方なども凝っている。ここまで毎号、“DIFFERENT”(違い)にこだわって制作している雑誌はほかにはあまりみかけない。それはけっして特殊印刷や特殊紙を使用して差別化を表現するのではなく、既存の雑誌スタイルのなかで、編集、デザイン的にいつもどこか新しい、どこか違っていることを意識して編集/デザインされているのがこの雑誌の魅力でもある。。

『Interview』はアンディ・ウォーホルが関与しなくなってからスタイルを変えてきた雑誌だが、2008年5月号からは、最近までフランス版『VOGUE』のクリエイティブディレクターをしていたファビアン・バロンが今号からエディトリアルディレクターとして参加し、リニューアルしたばかり。彼は過去に『HARPER'S BAZAAR』『ARENA HOMME PLUS』などのファッション誌のアートディレクションのほか、バレンシアガ、カルバン・クライン、ミュウミュウなどのファッション広告イメージをつくりあげてきたクリエイティブディレクターだ。彼自身も1990年から92年までは『Interview』誌においてクリエイティブディレクターをしていた経験もあり、ファッション業界においてはまさに注目の人物でもある。そんな彼がエディトリアルディレクターとして『Interview』誌に参加するというニュースが流れてから、業界ではとても注目されていたのがこの『Interview』だ。

その話題のリニューアル最新号であるが、アートディレクターはティム・マッキンタイアが担当しており、レイアウトそのものには派手さこそないがシンプルなタイポグラフィと美しい写真のレイアウトになっている。ちなみに最新号の表紙マギー・ギレンホールを撮影しているのはミュージシャンでもあるブライアン・アダムス。この名前を聞いて、ああ懐かしいと思う人もいるだろうが、実はブライアン・アダムスは、ファッションフォトグラファーとしてとても評価が高く、フォトグラファーとして展覧会も開催しているし、オランダの『ZOO MAGAZINE』というファッション誌の発行人にもなっている。もちろんブライアン・アダムス以外にも、リチャード・プリンスなど豪華なフォトグラファーたちが誌面に参加しているが、ファビアン・バロンが参加することによって、今後どのようになっていくのかとても気になる一冊である。





[筆者プロフィール]
はちが・とおる●クリエイティブディレクター/エディター。ピエブックスを経て、クリエイターマガジン『+81』を企画/創刊させて11号まで編集長。その後ガスプロジェクトにあわせて、書籍「GAS BOOK」シリーズ、雑誌『Atmospehre』編集長などを担当。現在はフリーとしてグラフィックデザインを中心に企画/ディレクションなどで活動中。
http://www.hachiga.com/





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