「iPhoneプラットフォームと iFund」



「iPhoneプラットフォームと iFund」
2008年8月6日

TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

第一世代のiPhone(2G)は100万台の販売実績を達成するまでに74日かかった。しかし第二世代であるiPhone 3Gはなんとわずか3日間で100万台を突破した。Appleの公式な発表によれば、2008年中に全世界で累計1000万台の販売を目指しているという。

このiPhoneおよびiPhoneのOSであるiPhone2.0を搭載可能なiPod touchは、これまでにないポータブルなインターネットデバイスとしての地位を確立し、新たなアプリケーションや、iPhone/iPod touch上で動くWebサービスのための、巨大なプラットフォームになろうとしている。

このプラットフォーム上での事業を目指す起業家やエンジニアに対する投資ファンドが生まれたのはつい最近である。その名も「iFund」だ。

投資会社としては世界的に有名なクライナー・パーキンス(KPCB)社がなんと100億円以上のファンドを組み、iPhone/iPod touchプラットフォーム上でのアプリケーション、サービスなどを開発するベンチャーに対して投資をするのである。

彼らが有望であると列挙したサービスは以下の通りだ。

・GPSを使った位置情報サービス
・モバイルSNS
・モバイルEC
・コミュニケーションツール
・ゲームなどのエンターテイメントサービス

AppleがスタートしたiTunes StoreとApp Storeは、日本で言えば、ケータイの公式サイトと課金システムが持つエコシステムによく似ており、iPhone/iPod touch上のさまざまなコンテンツの巨大な流通市場へと成長しつつある。課金システムが確立されていれば、あとは有望なアプリを開発すればよい。しかも、世界中で販売できるというわけだ。

ただ、日本のケータイ事情を考えれば、上述のサービスアイデアのほとんどは某かの方法で実現されている。しかし、iPhone/iPod touchプラットフォームは限りなくPC/Macに近い、相当に自由度の高いWebであり、大きなイノベーションが持ち込まれて従来のケータイのサービサーの生態系を破壊してしまう可能性はある。クライナー・パーキンスのような海千山千のベンチャーキャピタルが巨額の資金を投じる意味を、我々は十二分に考えておく必要があるだろう。




[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。



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