東京国立近代美術館「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」【美術館・博物館/冬の展覧会情報 2019・2020】

ピエール・ボナール 《静物、開いた窓、トルーヴィル》 1934年頃 油彩・キャンバス 98×60㎝ 
アサヒビール大山崎山荘美術館

2019年12月から2020年2月にかけて、ぜひ鑑賞しておきたい美術館・博物館の展覧会を編集部がピックアップ。今回は東京国立近代美術館で開催中の「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」をご紹介します。見どころやギャラリートーク情報もチェック!

●文:中村美枝(JAM SESSION)
人々の生活に「窓」は欠かせないもの。光や風を室内に取り入れながら、寒さや暑さを和らげる。室内にいる人たちに、外の世界の眺めをもたらしてくれるのも窓の役割だ。「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」は、窓学を主宰する一般財団法人 窓研究所と東京国立近代美術館がタッグを組んだ企画である。アンリ・マティスやピエール・ボナールの絵画から、ゲルハルト・リヒター、ローマン・シグネール、ホンマタカシなど、現代美術の作品までを紹介。さまざまなアーティストが窓をどのように捉え、表現したのかを比較するのが楽しい。

さらに美術の枠を超え、東北大学の五十嵐太郎研究室が制作した窓と建築とアートの歴史をたどる年表を展示。全長12mに及ぶ大きさに圧倒される。展覧会を鑑賞した後は、「窓」から見る風景が、なんとなくいつもと違って見える。感性が磨かれる展覧会と言えそうだ。
▼「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」で注目したい作品

アンリ・マティス 《待つ》 1921-22年 油彩・キャンバス 61×50cm 愛知県美術館

ズビグニエフ・リプチンスキ 《タンゴ》 1980年 ヴィデオ(35mm フィルムより変換) 8 分 10 秒  ズビグ・ビジョン © Zbig Vision

ゲルハルト・リヒター 《8枚のガラス》 2012年 ガラス、スチール構造物 230×160×378cm
ワコウ・ワークス・オブ・アート © Gerhard Richter, courtesy of WAKO WORKS OF ART Photo: Tomoki Imai

画像左)1921年、マティスは南仏ニースで借りたアパートを改造して制作に取り組んだ。その一室で描かれたのが《待つ》。窓の向こうをじっと見つめる女性と、うつむいて窓の外すら見ていない女性。ふたりは誰を、もしくはなにを待っているのか。想像が膨らんでいく

画像中)オスカー賞受賞のポーランドの映像作家、ズビグニエフ・リプチンスキの《タンゴ》。一見、撮影した動画のように見えるが、実は切り貼りしたアニメーション。本作が製作されたのは1980年。デジタルの技術が発達する以前の手作業のすごさをじっくりと鑑賞したい

画像右)現在87歳。今もなお精力的に活動を続けるドイツ最高峰のアーティスト、 ゲルハルト・リヒターが手がけた立体作品。約35%は鏡のように像を映し、65%は向こう側が透けて見える特殊なガラスを使用。窓の外から見ると、形がゆがんでいたり、色が違って見えたり。不思議な感覚に
▼ギャラリートーク&図録も要チェック

「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」第1章 窓の世界 展示風景 撮影:木奥惠三

「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」図録 B5判 2,500円(税別)

画像左)会期中、全4回行われる「ウィークエンドギャラリートーク」。最終回となる第4回目は2020年 1月17日(金)18:00~18:45に開催。本展の美術作品パート(1章、3-13章)を担当したキュレーター・蔵屋美香が展示作品を目の前に解説。作品にまつわる楽しい話や深い話に興味津々。予約不要なので気軽に参加を

画像右)東京国立近代美術館編集、平凡社より刊行された展覧会カタログの表紙のデザインは、本展覧会のグラフィックも手がけたアートディレクター田部井美奈が担当。モダンでいてスタイリッシュなデザインに注目を。美術館のミュージアムショップのほか、全国の書店でも販売中
DATA
窓展:窓をめぐるアートと建築の旅
会期:~2020年2月2日(日)
開催時間:10:00~17:00(金曜、土曜は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
休館日:月、12月28日(土)~2020年1月1日(水・祝)、1月14日(火) ※1月13日(月・休)は開館
場所:東京国立近代美術館
問い合わせ先:03-5777-8600(ハローダイヤル)
観覧料:一般1,200円、大学生700円、高校生以下は無料
https://www.momat.go.jp
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