「話題のメンズファッション誌『FANTASTIC MAN』」



「話題のメンズファッション誌『FANTASTIC MAN』」
2008年10月16日

TEXT:蜂賀 亨
(クリエイティブディレクター/エディター)


『FANTASTIC MAN』は、実験的な雑誌『RE-』やゲイ雑誌『BUTT』などを手掛けてきたオランダ・アムステルダム在住のアートディレクター、ヨップ・ヴァン・ベネコムが創刊したメンズファッション雑誌。2005年の創刊以来、ファッション関係者はもちろん、デザイン関係者からも注目され、洋書店ではすぐに完売になってしまうほどの人気がある一冊だ。

この雑誌は、ヨップ・ヴァン・ベネコムという1人の人物が、発行人、編集人、アートディレクション/デザインを担当しており、彼個人のクリエイティビティが詰め込まれた一冊にもなっている。通常のファッション雑誌であれば、カラーページでファッションフォトが中心になるところが、『FANTASTIC MAN』では1色印刷のページも多く、インタビューなどのテキストがかなり充実している。コンセプトや編集内容はもちろん、タイポグラフィやレイアウトなどのデザイン、紙質のセレクションにいたるまで、一冊がまるで書籍のようにコンセプチャルにつくられており、インディペンデントなスタイルの雑誌でありながらも、グッチ、イヴ・サン=ローラン、プラダなどのラグジュアリーブランドが広告出稿をしているところから、この雑誌がいかにファッション関係者から高く評価されているかがわかる。

毎号特集される人物のセレクションもすばらしく、過去にはYSLのデザイナー、ステファノ・ピラティ、トム・フォード、ヘルムート・ラングといった話題のファッションデザイナーたちのロングインタビューが紹介されており、また発売されたばかりの最新号8号では、イタリア人アーティスト、フランセスコ・ベッゾーリが特集されている。ファッション誌でありながら、有名ファッションデザイナーたちと同じようにアーティストが表紙になるというのもこの雑誌だからこそ。毎号「次は誰が表紙になるのか? 誰が特集されるのか?」と世界から注目されているメンズファッション雑誌で、既存のファッション雑誌にはない、新しい可能性や未来を感じる一冊だ。


左から
No.06。フォトグラファー、ヴィノード・マタディンが表紙の号
No.07。ファッションデザイナー、トム・フォードが表紙
No.08。最新号。アーティスト、フランセスコ・ベッゾーリが表紙




[筆者プロフィール]
はちが・とおる●クリエイティブディレクター/エディター。ピエブックスを経て、クリエイターマガジン『+81』を企画/創刊させて11号まで編集長。その後ガスプロジェクトにあわせて、書籍「GAS BOOK」シリーズ、雑誌『Atmospehre』編集長などを担当。現在はフリーとしてグラフィックデザインを中心に企画/ディレクションなどで活動中。
http://www.hachiga.com/





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