「スマートフォン市場のこれから注目するべき点──前編」
「スマートフォン市場のこれから注目するべき点──前編」
2008年10月20日
TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
スマートフォンとは、主にPIM(スケジュール管理)やWebブラウジングなどのコンピューティング機能を搭載した携帯電話であり、ユーザーが利用開始後に自らの意思で、外部のソフトウエアをインストールしたりすることで機能や画面上の外観、操作感をカスタマイズすることができるものを指す。
日本の主要なケータイは、メール機能やPIM、キャリア依存の特殊なネットワークとはいえWebブラウジング機能をサポートしているうえ、ワンセグ対応や電子マネー機能など、日本市場に特化したさまざまな独自進化を遂げており、非常に高機能ではあるが、スマートフォンの分類に入れることはためらわざるを得ない。
日本のケータイをスマートフォンではない、とする最大の理由は、そもそもドコモやauなどのキャリア自身が「自らの商品をスマートフォンではない」とするスタンスをとっていることだ。日本の主要キャリアは、商品ラインナップの中に「スマートフォン」のカテゴリを別に設けたうえで、主に海外からのOEM製品を置いている。たとえば、ドコモはRIM(Research In Motion)のブラックベリーや、ノキア、台湾のHTC社製のスマートフォンを販売しているし、KDDIもまた同社初めてのスマートフォンとして、HTCのTouch Pro(KDDIではE30HT)の取り扱いを開始すると発表している。
ブラックベリーのWebサイトより
スマートフォンの市場規模は、2008年の2Q(4-6月)で3220万台となっているが、これは携帯電話全体の約11%だ。これを少ないと見るか多いと見るかは観点の違いだが、決して小さい市場ではない。
たとえば昨今のPCは、1000ドル(10万円)を境としてローエンドPC市場とハイエンドPC市場に二分されている。AppleはローエンドPC市場は事実上切り捨てており、Mac miniを除くすべてのモデルをハイエンドPC市場に投入した結果、米国市場では実に66%の圧倒的なシェアを獲得している。Appleの米国内での全PC市場シェアは14%だというから、ハイエンドPC市場とはざっとPC市場の約20%ほどの規模ということになる。
スマートフォンは現時点では市場全体の11%という段階だが、数年以内にモバイル機器需要のハイエンド市場として成熟してくるはずであり、AppleがiPhone 3Gを通してこのハイエンドモバイル市場にフォーカスしていることにも十分な理由があるといえる。現時点ではモバイル市場全体においても最大シェアを保持しているノキアが、スマートフォン市場においても50%近いシェアを押さえているので、Appleの当面の狙いはシェアの切り取りということになる。
スマートフォン市場がこれから注目するべき点は、ハイエンドモバイル市場としての成熟もさることながら、実はローエンドPC市場の中の、ポータブルコンピュータのシェアを奪うというパワーシフトという側面にある。次回はこの点について考察する。
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。