『デザイン物産展ニッポン』ほか2冊
周りを驚かせるようなカッコいいアイデアやデザインは、一朝一夕で生まれるものではありません。情報や技術を取り入れつつ、日々感性を磨きながら、実践(現場)で鍛えていく。インプットとアウトプットのサイクルが大切。多忙なデザイナーのインプットを助けるべく、MdN Interactive編集部がオススメ本を紹介していくコーナーです。
豊潤で才色あふれる我が国のカタチ 『デザイン物産展ニッポン』 ナガオカケンメイ/美術出版社
2,200円+税
眼鏡フレームの国内生産高トップに君臨する福井県鯖江市。そもそも越前漆器で栄えた町だったということを知ると「なるほど!」と思う。全国津々浦々、鯖江 市のような「お国自慢」があるように、本書は47都道府県、日本の「ものづくりの今」を5つの視点から“物産”という形で集めた展覧会『デザイン物産展 ニッポン』の公式カタログだ。錚々たるデザイナーや建築家、識者の計27名によって構成される「日本デザインコミッティー」による同展は、2008年8月 から9月にかけて松屋銀座8階で行われた。実際に物産の購入が可能で、紹介している食品を飲食できるカフェも併設。まさにモノゴコロくすぐるデパートの “物産展”というスタイルを得た催事である。本書で改めて見る、我が国の伝統工芸、食、場、メディア、新たなプロダクツ……豊潤で才色あふれる我が国のカ タチを堪能しよう。書籍板の特典として「デザイントラベル ガイド」を併載。旅行しながら、土地土地のデザインを満喫したいアナタにもってこい。
古書から「日陰」のデザインを愉しむ 『アホアホ本エクスポ』
中嶋大介/ビー・エヌ・エヌ新社
1,280円+税
近年、若者の間で秘かに古書ブームが起きている。有名なクラブ系アーティストが植草甚一の本を愛読していたり、雑誌が特集を組んだり、古書を扱うお洒落なカフェが街にできたり。ひと昔前なら「暗い」だの「不潔」だの、散々な言われ方をしてきた古書マニアにとって、現在のような状況は歓迎すべきことなのだろうか。古書の愉しみは、本来「日陰に追いやられたブツを掘り出す」ことにあったと思う。いささか陽気でファッショナブルなブームは、あまり好ましくないのでは? 本書は、そうしたことを深く考えさせられた一冊。バカバカしくもくだらなく、しかし愛すべき“アホアホ本”を集めた古書ガイドである。ガイドといっても、何もネット・オークションで漁って「買え!」と説くわけではない。真面目な本でもどこかマヌケ、いわく「アホを楽しむ感性」を必要とした古書を紹介するビジュアル・ブックだ。オンライン古書店「BOOKONN」店主にして、本業グラフィックデザイナーの著者に加え、スペシャル・ゲストに常磐響、岡崎武志、近代ナリコ……といった名前にピンッときた人は買いです。
デザイナーとして生きていくこととは? 『デザインのへそ』
矢野りん/エムディエヌコーポレーション
1,600円+税
グラフィックデザイナー向けの、いわば“技法系”書籍を多く手がけてきた著者だが、本書は手法のスキル向上を狙うタイプではない。帯の惹句に「デザイナー心(マインド)に効く」とあるが、ポンと膝をつく“マナー”にあふれた一冊だ。副題「デザインの基礎体力を上げる50の仕事術」とあるように、もしアナタがデザイナーとして生きて行こうと誓っているなら、どんなときでも役に立つ大切な事例がたっぷり。かつて『宝島』で山崎浩一氏が手がけた「なぜなにキーワード図鑑」を彷彿させる構成で、さまざまな“へそ”が解説される。一歩間違えたら抽象的、かつエッセイ風な内容になるところを、気のきいたクールな文章とレイアウト、村林タカノブによるイラストが三位一体となって読者の頭に入るだろう。たとえば「ツール」という項目。マシンのことと思いきや、スプレーのりによる害→眼性疲労→椎間板ヘルニア→マウスだこ……と綴り、最後に「作品のクオリティを上げるために酷使するツールとは、まさに肉体なのである」と。ハハハ。確かに!
(文・増渕俊之)
(更新日:2008年10月24日)