「出版不況だからこそ、新しいアイデアが求められる」
「出版不況だからこそ、新しいアイデアが求められる」
2008年11月4日
TEXT:蜂賀 亨
(クリエイティブディレクター/エディター)
アメリカの日刊新聞『クリスチャン・サイエンス・モニター』は、アメリカの新聞でははじめて2009年4月から電子版に完全移行すると10月28日に発表した。日曜版を除き今後は紙での新聞発行をやめ、サイト上でニュースなどを展開していくらしい。アメリカに限らず、日本の雑誌や出版物も、広告収入、売上部数は確実に減ってきているようで、『ロードショー』『広告批評』『PLAYBOY日本版』『BOAO』『GRACE』『主婦の友』などが休刊になる。雑誌ビジネスの状況は大きく変化してきている。
とはいえ、その一方で新創刊されたり、部数や広告収入を伸ばしている雑誌もあって、出版業界全体的には売上が落ちているかもしれないが、出版物すべてが不況ということことではない。単純にインターネットが普及するなど、マーケットやビジネスモデルが変化してきて既存の出版ビジネスのノウハウやシステムが対応しきれなくなってきているだけで、いままでにはない方法論が必要になってきているようだ。
そんな状況下において、最近ロンドンで創刊された雑誌『Distill』は、まさに新しいスタイルのファッション雑誌として注目されている。世界的に有名なファッションライター、コリン・マクドゥエルが編集長をつとめるこの雑誌は、世界のさまざまな雑誌から気になる記事やイメージのページをそのままピックアップし、それに対してコメントを寄せるというもの。ある雑誌のために撮影されたファッション写真や、ビジュアルページがそのまま『Distill』の誌面で使用されている。経済誌や一般紙では似たようなスタイルのものがあるが、ファッション雑誌ではかなり珍しい。既存のファッション雑誌にはない、やり方が斬新でおもしろい。
『Distill』創刊号。カバーにはコントリビュートしている世界のさまざまな雑誌カバーが並べられている。
こんなファッション雑誌はいままでみたことがない
常に新しいスタイルを求めて、雑誌を作り続けている人間もいる。ロンドンのファション雑誌『POP』の創刊時からの編集長ケイティ・グランドは9月に同雑誌を辞め、来年の春にはコンデナストUKから『LOVE』というタイトルのファッション誌を創刊するらしい。『DAZED AND CONFUSED』『THE FACE』『POP』と、常に話題のファッション雑誌を手掛けてきた彼女が、新たな雑誌を創刊するのは、ファッション業界、出版業界では大きなニュースになっている。出版不況といわれている現在、ゼロからのスタートになる新雑誌を創刊することは、それなりの労力と、パワーが必要になる。しかし、雑誌は常に時代を反映するメディアでもある。時代の変化にあわせて、本当に求められる雑誌、つくりたい雑誌を彼女のようにつくり続けるような人も必要ではないだろうか。
不況といわれているいま、出版ビジネスに限らず、既存のシステムや環境にこだわることなく、新しいアイデアやスタイルをとりいれることが、ますます必要になってきているのではないだろうか。編集者の意識が問われる時代になってきている。
[筆者プロフィール]
はちが・とおる●クリエイティブディレクター/エディター。ピエブックスを経て、クリエイターマガジン『+81』を企画/創刊させて11号まで編集長。その後ガスプロジェクトにあわせて、書籍「GAS BOOK」シリーズ、雑誌『Atmospehre』編集長などを担当。現在はフリーとしてグラフィックデザインを中心に企画/ディレクションなどで活動中。
http://www.hachiga.com/