「スマートフォン市場のこれから注目するべき点──中編」



「スマートフォン市場のこれから注目するべき点──中編」
2008年11月4日

TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

“ガラパゴス”と称される日本のケータイ市場

スマートフォンは基本的にはそもそもビジネスユースを想定して作られた分野であり、アメリカではPalmなどのPDAに電話機能を加えることによって生まれたハイブリッドガジェットである。つまり、携帯電話の形をしたPCといえる。

この結果、欧米のケータイは通話機能とSMS(ショートメッセージ)を中心とした比較的単純な機能を装備したローエンド機種と、PC環境をできるだけ小型化したハイエンド機種であるスマートフォンとに分化して成長してきた。ローエンド機種はWebブラウジングやビジネスに必要なさまざまな機能は原則として切り捨てて、単純な機能をより使いやすくしつつ、どんどん低価格化することで普及する。ハイエンド機種であるスマートフォンは、使いやすさを犠牲にしても高機能化して、法人需要にフォーカスをしていく。

この状況の中である意味真っ当な進化をして大きなシェアを得たスマートフォンがBlackberryだと言える。また、これまで高機能の陰で犠牲にされてきた使い勝手や、操作をする楽しさや美しさの復権に着目して登場したのがiPhoneであると言えるのだ。

これに対して、日本においてはスマートフォンの代わりに「ウルトラモバイル」と呼ばれる、1kgを切る超軽量ノートブックが台頭した(米国進出したウルトラモバイルのメーカーは多かったが、米国市場ではまったく売れなかったことは興味深い。また、MacBook Airの大成功によって、いまになって初めてウルトラモバイル市場が米国にも生まれたのはいささか皮肉でもある)。


ウルトラモバイルの代表格、ASUS「Eee PC」
(ウィキペディアより引用)

同時に日本では、本来のインターネットのWebとは異なる特殊な変質を果たしたiモードなどのモバイルWebの爆発的な人気に支えられて携帯電話が高機能化。ローエンド機種であってもWebブラウジングやインターネットに対応したメール機能を持つ、世界的に見れば特殊な進化を果たした。これが日本のケータイ市場が“ガラパゴス”と称されるゆえんである。


ネットBOOK、スマートフォン、ケータイ
3つの市場が凌ぎを削る日本

ところがいまや日米の市場に同時に大きな変化が生まれている。

まず言えるのは、ウルトラモバイル市場にローエンド機種が登場したことだ。いわゆるネットBOOKと呼ばれる、10インチ以下の小さな液晶とWebブラウジングやメール機能に特化し、余分な機能を削り落とした低価格ノートパソコンが台湾メーカーであるアスースなどからリリースされ、話題を呼んでいるのである。アスースのEee PCは5万円以下という低価格を武器にブレイクし、さらにイー・モバイルの通信データカードとのセット販売で、100円から数千円で購入できるという戦略が功を奏して市場を席巻し始めている。国内メーカーも、ネットBOOKの売上がPC市場全体の2割に達する状況をみて、次々とネットBOOK市場への参入を検討し始めている。

さらに、先述の通り、iPhone 3Gの成功に触発された各国の携帯端末メーカーがこぞって豊かな操作性とエンターテインメント性を備えたスマートフォンをリリースし始めている。たとえばサムスン電子のOMNIAや、Googleの無料モバイルOSであるAndroidを搭載したT-mobile G1などがそれだ。


OMNIAのスペシャルサイトより
http://jp.samsungmobile.com/omnia/intro.html

こうして、ネットBOOKとスマートフォン、そしてそれらの影響を受けつつ変化していくであろう日本のケータイ。日本においてはこれらの3つの市場は相当分重なっている。特に、今後のスマートフォン市場の拡大は、ネットBOOKとのユーザーの奪い合い、特に法人ユーザーのモバイルコンピューティングのガジェットとして、どちらがより受け入れられるかにかかっているといえるだろう。

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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。



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