「世界の気になるデザイナーたち(7) M/M (Paris)」
「世界の気になるデザイナーたち vol.007
──M/M (Paris)」
2008年11月17日
TEXT:蜂賀 亨
(クリエイティブディレクター/エディター)
11月4日から11月28日まで、東京、ギンザ・グラフィック・ギャラリーにてM/M (Paris)による展覧会『The Theatre Posters』が開催されているが、今回はパリを拠点にするクリエイティブユニットM/M (Paris)を紹介しよう。
ミカエル・アムザラグとマティアス・オーギュスティニアックによって1992年に設立されたクリエイティブユニットがM/M (Paris)である。過去にはヨウジヤマモト、カルバンクラインといったファッションブランドのカタログや広告キャンペーン、ビョークやマドンナなどのCD、DVDなどのジャケットデザイン、ファッション誌『Vogue Paris』『PURPLE FASHION』『ARENA HOMME+』などのクリエイティブディレクション、そしてコンテンポラリーアートギャラリーのビジュアルイメージなど、さまざまな分野で常に刺激的なビジュアルをつくりあげ、現在のヨーロッパを代表するクリエイティブユニットでもある。グラフィックアートとして彼ら自身の作品やアートに関する仕事も多く、彼らを単なるクリエイティブチームやアートディレクションといったカテゴリーで語るのは難しい。
最近の風潮として、デザインにデザイナーの個性は出さないほうがいい、といった流れが一部である。シンプルで美しいデザインが求められているといったことがいわれるが、そればかりではグラフィックデザインはつまらなくなってしまうだろう。M/M(Paris)のように、常にアート性が高いグラフィックをメジャーなクライアントやメディアで展開するアートディレクター、クリエイティブディレクターの存在は、同業のデザイナーや私たちにとって、少し勇気を与えてくれたりもする。
彼らのデザインや作品には、個性的なものが多い。少し読みにくいオリジナルのタイポグラフィを使った雑誌や、ファッションフォトに大胆に文字を重ねたファッションブランドのポスターなど、通常では編集者やクライアントからNGが出るようなグラフィックも、彼らは実績とパワーをもって可能にしてしまう。彼らのようにクライアントまでも説得してしまうほどのクリエイティブなパワーある作品をつくりあげることができるデザイナーは、世界にはそんなにはいないだろう。常に新しいグラフィックスタイル、新しいビジュアルをつくり続けることは誰もができるわけではない。
美しいだけ、きれいなだけのグラフィックでは物足りない。もっとワクワクするような、グラフィックがつくりたい、見たいという人にとって、M/M(Paris)の作品や活動からは常に目が離せないだろう。
左:2006年ロンドン「HAUNCH OF VENISON」で開催されたM/M (Paris)の展覧会にあわせて発行された作品集。M/M (Paris)の主な作品が収録されている
右:M/M (Paris)がクリエイティブディレクション、アートディレクションを担当している『ARENA HOMME+』最新号。表紙は写真だけのもの、彼らのグラフィックで処理されたもの、と3種類が存在する
[筆者プロフィール]
はちが・とおる●クリエイティブディレクター/エディター。ピエブックスを経て、クリエイターマガジン『+81』を企画/創刊させて11号まで編集長。その後ガスプロジェクトにあわせて、書籍「GAS BOOK」シリーズ、雑誌『Atmospehre』編集長などを担当。現在はフリーとしてグラフィックデザインを中心に企画/ディレクションなどで活動中。
http://www.hachiga.com/