「企業内“Twitter”の可能性──後編」
「企業内“Twitter”の可能性──後編」
2008年11月25日
TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
「TechCrunch50」での優勝をさらった企業内Twitterサービス
前回、多くのネットユーザーたちがブログ疲れを起こした結果、「Twitter」に代表される文字数制限や機能の少ない、いわゆるマイクロブログへと流れていることについて述べたが、この潮流は企業における社内コミュニケーションに対しても、大きな影響を与えつつある。
多くのベンチャー企業が集結し、ビジネスモデルや新サービスの優劣を競うイベント「Techcrunch50」が今年の9月にサンフランシスコで開催されたが、そこで並みいるユニークなベンチャーを尻目に優勝を果たしたのは、Twitterに似た非常にシンプルなマイクロブログを企業向けに提供するSaaS企業「Yammer」だった。
■「Yammer」
http://www.yammer.com/
Yammerのサービスは、ほぼTwitterのクローンであると言っていい。企業ユーザーは、自社ドメインをまずYammerに登録する。そうすると、そのドメインでのメールアドレスを持った社員しか使うことができない、クローズドでTwitter的なマイクロブログが開設され、社員同士の交流ができるようになる、というモノだ。つまり、“企業内Twitter”の提供者なのである。
情報共有、暗黙知の創出という呪文に踊らされる企業たち
インターネットで見られる現象は、コンシューマーの枠組を超えて企業活動に必ず影響を及ぼす。インターネット(WWWとメール)は企業ネットワークをイントラネットに変え、Web2.0の衝撃はエンタープライズ2.0と呼ばれる新たなコンセプトを生み出し、さらにクラウドコンピューティングの普及を促している。同様に、企業はいま、ここ数年に生まれてきたさまざまな情報共有ツールに疲れ、成果のないままに新しい方法を模索し始めているのである。
企業活動をするうえで、経営者は常に社員同士の情報共有の促進を目指すし、効率よい経営をするために、会社がいまどのような状態にあるかを知りたいのは当然である。その意図のもと、これまで企業はセキュアなメールシステムの導入から始まって、グループウエアやCRM、SFAなどのさまざまなグループアプリケーションの導入を行ってきた。Web2.0ブームに乗り、昨今ではイントラブログやイントラSNSの導入に熱心な企業も多い。しかし、その実、あまり成果が上がっていないのも現実である。
CGM的な情報共有を実現するには相当のユーザー数が必要
実はインターネットのさまざまな情報は、驚くほど少人数の熱心なアクティブユーザーに支えられている。
米国のWebトラフィックの分析調査会社であるヒットワイズの調べによれば、動画共有サイトであるYouTube、画像共有サイトであるFlickr、知識共有サイトであるWikipediaの3つを調査した結果、コンテンツを実際にアップロードしたり、編集したりする実際の参加率は極めて低く、YouTubeが0.16%、Flickrでは0.2%となり、テキストベースのWikipediaが4.59%という分析結果となっている。つまり、ほとんどのユーザーはただ見ているだけ、なのである。つまり、1000人に1、2人しかアクティブなユーザーがいない、ということになるわけだ。そして1000人中998、999人はコンテンツを見てくれるだけの(見てくれるだけいいのかもしれないが)面倒くさがり、なのである。
要するに、企業内でコミュニティを活発に運営しようと思っても、定期的に有用な情報をコミュニティに投げ込んでくれる少数派のアクティブユーザーを確保しない限りは不可能であり、また、最初はアクティブだったユーザーも反応が薄い社内のコミュニティに投稿するよりも、ネット上の広いコミュニティに関与したくなるのは当然だ。その結果、社内のコミュニティは徐々に勢いを失っていく。
さらに世代別では、参加者の年齢層がかなり高く、YouTubeでは45~54歳、Wikipediaは35歳以上がピークであるという。企業内でいえば、本来多くの情報を持ち、社内で積極的に情報公開をすることを求められる若年層は、相当に“面倒くさがり”たちなのだ。
よりシンプルでよりライトなコミュニケーションのススメ
米国では、現在、Yammerの登場以来、ほぼ同様のサービスが次から次へと生まれている。
■「Present.ly」
https://presentlyapp.com/
リアルタイムで同僚が歩調を合わせる最も簡単な方法(タグラインから)
■「socialcast」
http://www.socialcast.com/
チームコラボレーションのための、シンプルでスマートなメッセージングシステム(タグラインから)
などがそれだ。
「Present.ly」はYammer同様、Twitterの完全なるフォロワーと言っていい。起承転結がはっきりした長い文脈を書かせることなく、140文字に文字制限することで、よりいっそう簡単に情報共有させていく。
「socialcast」は、Twitterの後追いで生まれた「friendfeed」に近い。friendfeedはある意味Twitterよりさらに“面倒くさがり対策”を進めたツールであると言えるのだが、さまざまなSNSやブログなどで書き出されたコンテンツを自動収集する、アグリゲーションサービスだ。これを応用するのがsocialcastだが、どれだけ普及するかはまだ未知数である。
いずれにしても、この多くのTwitterクローンたちが企業内に向けてマイクロブロギングツールの提供を始めており、来年の台風の目になる可能性があることに注目しておいてほしい。
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。