デザイン=ソシアルほか3冊



周りを驚かせるようなカッコいいアイデアやデザインは、一朝一夕で生まれるものではありません。情報や技術を取り入れつつ、日々感性を磨きながら、実践(現場)で鍛えていく。インプットとアウトプットのサイクルが大切。多忙なデザイナーのインプットを助けるべく、MdN Interactive編集部がオススメ本を紹介していくコーナーです。


固定概念を崩す「良い(売れる)デザイン」とは? 『デザイン=ソシアル』 柳本浩市/ワークスコーポレーション
2,300円+税

副題に「デザインと社会とのつながり」とある本書。月刊『DTPWORLD』連載記事の単行本化だが、社会とのつながり……という文言を目にすると、どうも難解な気がしてしまう。しかし、ページを繙けば目にも鮮やかなビジュアルブック。たとえばブラウン、シトロエン、IBM、コカ・コーラなどの企業デザイン。アイソタイプ(絵言葉)とピクトグラム。ロシア・アバンギャルドをはじめとした「赤色」の仕組み。グリッドデザイン。ヘルベチカ。ハーブ・ルバーリン。オランダのリトルプレス……などなど、時代を超えて主張し続ける数々のデザインを俎上に、その“意義”を検証していく。エアライン、北欧のデザイン・ブームを仕掛け、KDDIなどのデザインアドバイザーも務める著者自身がコレクトしてきた多彩なデザイン作品を例に挙げながら、博覧強記に解説を綴る。過去に学び、未来を描く──ありがちな「温故知新」テーマであるが、分類、背景、物語の構成に長けた一冊だろう。巻末には「Soup Stock Tokyo」を立ち上げた(株)スマイルズ代表取締役社長・遠山正道氏とのスペシャル対談を掲載。




ノン・プロパーな人へのデザイン書、新装版が登場 『ノンデザイナーズ・デザインブック フルカラー新装増補版』
Robin Williams/毎日コミュニケーションズ
2,000円+税

プロフェッショナルなデザイナーでなくとも「かっこいいデザイン」がしたい! そう思う人のためにレイアウト・デザインの基本を教えるロングセラー書が、フルカラー新装増補版で登場。1998年に刊行された当初「デザインを正式に学んだことはないが、デザインする必要がある人」向けに編まれた本書だが、それから10年。ビジネスの現場にDTP対応マシンが日常的に導入され、プレゼンテーション、プレスリリースなど、オフィスで作成される文書も様変わりした。また、学生のレポートや卒業論文にもDTPソフトは活用されている。20年前、多機能ワープロやDOSエディタで苦労してきた人種にとっては、夢のような環境だ……。昔話はさておき、本書を改めて読み直すと「デザインの基本原則」がよーくわかる。コントラスト、反復、整列、近接──この4つの「悟り」を礎にしながら、色をつけていく。この「色」というところにキモがあるのだが、今回の新装板においても「CMYK対RGB」といった補足がなされている。デザイナーだけでなく“デザイン”に関わるすべての人を結びつけるマスターピースな一冊だ。




映画が大好き! だったらマストバイ! 『MOVIE & DESIGN 映画宣伝ツールのアートディレクション』
岡野登/ビー・エヌ・エヌ新社
3,800円+税

『MdN』本誌の連載でもおなじみ、国内映画宣伝におけるオーソリティ・デザイナーとして活躍中である岡野登氏。その20年に渡る活動を網羅した一冊が刊行された。氏の詳しい足跡はコチラを参照していただくとして、たとえば『マトリックス リローデッド』『スパイダーマン3』といったハリウッド超大作から単館アート作品、または『ザ・マジックアワー』『天然コケッコー』などの邦画まで、その仕事214作品を掲載した凝縮本である。ポスター、チラシ、試写状、パンフレット、ロゴ、屋外広告……と、映画宣伝のおける幅は広い。昔ながらの模写看板や単なる紙ペラ1枚の宣伝ではなく、多角的で現代的な宣伝ツールを日本映画界に取り込んだ氏の功績は大きいものがある。しかし、みなさんも薄々感づいているように、洋邦問わず映画の世界において宣伝デザイナーの“名前”が表に出ることは皆無に等しい。そうした厳しい条件の中、岡野氏のように“結果”を残してきたデザイナーが国内にいること。そのことを我々は歓迎すべきだ。洋画なら、日本オリジナルな宣伝。邦画なら、これまでにないビジュアル──心から映画が好きで、その虜になった者が昇華した領域がここにある。




11年ぶり、サブカルチャーを更新する奇書 『新しいバカドリル』
タナカカツキ・天久聖一/ポプラ社
上下巻 各1,200円+税

これまで50万部を記録した(なぜ?)大人気シリーズ、およそ11年ぶりの描き下ろし新作が出た〜! 上巻の「学生編」で廚二病にかかってみて、下巻の「サラリーマン編」で社会人としてのマナー(笑)を伝授。帰宅部やら偉人解剖図、新々体操、アスレチック茶道……など、著者コンビにしか成し得ない孤高のパロディ・グラフィックが勢揃い。赤塚不二夫先生亡き後、ギャグの方法論を一旦平たく引き延ばし、そこからギュル〜ンとアートの領域に(静かに)侵入してくる術は「流石!」の一言。コンビ沈黙の間、天久は電気グルーヴなどのPVで鬼気迫るクリエイティブを発揮。一方のタナカは名作『オッス!トン子ちゃん』で漫画殿堂入り。そんな魔人2人による新作は、師走の忙しい時期、ホッと心をゆるめる一瞬に最適か? いや、これは仕事に早くケリつけて、ゆっくりコタツで温もりながら読む本である。で、飽きた頃に年賀状を書く。来年の干支が丑だということをすっかり忘れ、もちの絵を描いて「何個食べた〜?」と書くのが基本! 我々はいくつになっても『バカドリル』に惑わされなければならないのだ。大人買い仕様の『ボックスセット』(2,520円)も発売中。


(文・増渕俊之)



(更新日:2008年10月10日)
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