Coa Graphics Art Works Archive 1998-2008ほか3冊



周りを驚かせるようなカッコいいアイデアやデザインは、一朝一夕で生まれるものではありません。情報や技術を取り入れつつ、日々感性を磨きながら、実践(現場)で鍛えていく。インプットとアウトプットのサイクルが大切。多忙なデザイナーのインプットを助けるべく、MdN Interactive編集部がオススメ本を紹介していくコーナーです。


インディペンデント精神、10年の結実 『Coa Graphics Art Works Archive 1998-2008』 Coa Graphics/ブルース・インターアクションズ
3,000円+税

クラムボンやHARCOなどのCDジャケット、書籍装幀、舞台の宣伝美術などを中心に活動を進めるデザイン事務所「Coa Graphics」による初作品集。副題に「60% dialogue, 20% monologue, 15% rules, 5% ?????」と謎のメッセージが示されている。不可思議な文言ながら、10年間の活動を彼ら自身が言い表すと「こうなる」と納得、まるで昼下がりのシモキタの「空気」みたいなアートワークが勢揃い。併行して運営を行う音楽レーベル「Coa Records」の足跡でもあるし、主宰者・藤枝憲氏が率いるバンド「Spangle call Lilli line」の軌跡でもある1冊だ。藤枝氏の経歴に関してはコチラを参照していただくとして……90年代初期の音楽+メディア+DTP胎動を身を持って体感しながら、現在プロフェッショナルなグラフィックデザイナー、そしてインディペンデントな「行動者」として前進する者たちの結実が本書にあるだろう。10年経っても、自分たちの原点、そして「立ち位置」をよーくわかっている人たちだ。




紙見本付き、麗しき「本づくり」の世界 『造本解剖図鑑』
ミルキィ・イソベ/ワークスコーポレーション
2,800円+税

アンダーグラウンド感覚全開な雑誌『夜想』をはじめ、ゴシカルで精美なブックデザインを醸す一方、ポケモンカードゲームのADをこなすなど振れ幅の大きい活動を行っている著者。月刊誌『DTPWORLD』にて2005年から2008年にかけて連載された「ミルキィ・イソベの紙の不思議な話」「ミルキィ・イソベの造本『解剖』図鑑」をまとめ、書籍化にあたり大幅に手を加えた本書は、氏のキャリアを振り返るという部分においても意義がある「本づくりの極意」である。もっとも、第一義に触れなければならないのは「紙から読み解く」という点。世に数ある装幀マニュアルと一線を画すのは、印刷加工と紙の相性、見た目、手触り、匂いや気配……と、6感で考え選ぶ用紙術。いくらネット通販が盛んになっても「本は本屋で触ってみなきゃ買わない!」という頑固派には堪えられない造本論が読める(感じられる)だろう。現下の不況風で、印刷所&紙問屋など出版に関わるコストアップは「来春以降かなりヤバイ」と囁かれているが、そんな不安をモノともしない、麗しき紙と造本の世界がここにある。




ほのぼの、遊び心が大切なのよ 『20世紀の商業デザイン—アールデコから現代まで—』
青幻舎
1,200円+税

良質なアートブックや写真集を刊行している、京都の出版社「青幻舎」によるビジュアル文庫シリーズ最新刊。日本において「昭和」という時代がどんどん遠のいていく現在、前世紀をテーマにしたデザイン・コレクションが新鮮だ。振り返るに第2次世界大戦後、欧米が発した消費文化は経済と産業を急激に拡張させた。そこに必須だったものは、大衆の目を惹くイメージ。つまり人々の購買欲を掻き立てる「広告」は、誰にもコントロールできないほど巨大で鮮烈なものとして拡張していった。現在、私たちはそうした広告社会の最前線に生きているわけだが、高度経済成長期にかけて発表された商業デザインは現社会の「礎」であると同時に、どこかホノボノしているのが妙。グラフィックデザインやアートディレクションなんて言葉が一般的ではない時代、当時の「図版屋」さんたちは苦労と同時に「遊び」を取り入れていたのだなーと実感。いまでもたまに古い純喫茶のマッチ箱のデザインに安堵を覚えるように、本書が蒐集した広告図版は目にも優しく心に愉し。重ねて書くが、これを読むデザイナー諸氏も「遊び心」が大切なのよ……ということを感じてほしい1冊だ。




ウェブサイト作りに戸惑ったら…… 『ウェブデザイン見本帳』
オブスキュアインク/エムディエヌコーポレーション
2,500円+税

2008年初頭「ウェブ広告が紙媒体の出稿量を抜く日も近い」と報道されたが、そのペースはグングン伸長。頑に紙媒体にこだわってきたグラフィックデザイナーも、ウェブへの移行を試される時期になってきたのは間違いない。創世記より「自由」がモットーのウェブ界ではあったが、そうした現状に則して「ルール」や「セオリー」も必要な時代となった。本書は「実例で学ぶWebのためのレイアウト基礎」を副題に、基礎知識から数々のデザイン・ノウハウを詰め込んだ1冊。普段、何気なく閲覧しているウェブ・サイトも、目を惹くところは必ずと言っていいほど、こうした「ルール」や「セオリー」を踏まえてオリジナリティを発揮していることに気づくはず。面としてのDTP。3ディメンションによる奥行きを活かしたウェブ。その違いをモノにするには、ある程度の「感性」が必要となる。いわば「インタラクション」をディスプレイに落とし込むには技術がないと惑いがちだが、本書の多彩な見本は最強。レイアウト、文字、ビジュアル、配色など、ウェブデザインの「いろは」は頭に叩き込める。そこから先はアナタ次第!


(文・増渕俊之)



(更新日:2008年12月12日)
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