ウェブで一発当てる方法ほか3冊



周りを驚かせるようなカッコいいアイデアやデザインは、一朝一夕で生まれるものではありません。情報や技術を取り入れつつ、日々感性を磨きながら、実践(現場)で鍛えていく。インプットとアウトプットのサイクルが大切。多忙なデザイナーのインプットを助けるべく、MdN Interactive編集部がオススメ本を紹介していくコーナーです。


Web2.0時代を指南する“勇気”の書 『ウェブで一発当てる方法』 面白法人カヤック/ワークスコーポレーション
2,400円+税

副鎌倉に本拠を据え、ユーザー参加型のECサイトやコミュニティサイトなど、突飛なウェブサイトの企画・開発・運営を行っている「面白法人カヤック」による一冊。例を挙げると「こんばん.in」や「ルー語変換」など、同社が手がけてヒットしたスマッシュ・コンテンツを生み出すための“成功の法則”を指南、CGM(Consumer Generated Media)=Web2.0時代に向けた教科書となっている。とはいえ、そこは面白法人の造作。内容は小難しくなく、ウェブコンテンツ制作を目指す人&いま制作に携わる人にとって読んで楽しく、身になる構成だ。技術うんぬんは前提の上だが、何を生み出すか、何をメッセージするか? とにかくアイデアの種子を練り出すためのメソッド(簡単に言うと駄話)から始まるカヤックの方針。誰もが「一発当てたい」というのは、どんな世界&ジャンルでも思い描くことだろうが、要は「作りたいものを作る!」という願望をとことん突き詰めることが大事だと痛感するだろう。クライアントとの交渉に勝つか負けるか、押し切るか押し切られるか、はたまた笑うか泣いてグチをこぼそうか……すべてはアナタの矜持次第。プライドを保ち、自我を押し通そうと踏ん張るならば、この本は勇気になる。




禅問答のごとく、直裁なデザイン論議 『ポール・ランド、デザインの授業』
Michael Kroeger/ビー・エヌ・エヌ新社
1,400円+税

卓越したグラフィックデザイナーであり、イェール大学で教授を勤めたポール・ランドと教え子による対話集。スイス・スタイル(国際タイポグラフィー様式)の創始者のひとりであり、数々の企業ロゴ・デザイン(IBMやABCテレビなど)で著名な氏、そして学生たちとの誌面講義は、主に“グラフィックデザインの教育原則”をテーマに、ランドのデザイン哲学と“教え”について論題にしている。本書は読むに短く、シンプルすぎる造りだが、書かれている内容は非常に濃い。まるで仏門に入ったレナード・コーエン(詳しくはググってください)との禅問答を繰り広げるがごとく、グラフィックデザインにおける“思想”が展開されていよう。なかでも興味深い一節を引用する。「私はコンピュータのために、著書を75回くらい書き換えねばならなかった。修正させてください、修正します、もとに戻しましょう、別の箇所も直したのでそこも直しましょうと、行ったり来たりしてね。コンピュータにあの利便性がなかったら、現在のデザイン作業は異なるものになっていただろうね。最大の違いであり、コンピュータの欠点だと思うのは、速すぎることだ。そしてもちろん、それは長所である。では、私たちはどうしたらいい?」──この発言は、デザインに携わる私たちにとって重い。わかりきったことながら、答えは見いだせないデスクトップ・デザインの“現在”を探り、グラフィックデザインの“源流”を辿る一冊である。




携帯電話におけるサイト・デザイン指南書 『モバイルユーザビリティ・デザイン』
株式会社ゆめみ/インプレスジャパン
2,400円+税

とかく携帯電話のコンテンツが作られる際、よく「幕の内弁当のような」と表現されることがある。限られたディスプレイの枠内で情報を簡易に整理整頓でき、なおかつ文字を極力少なくして記号化させる。その詰め込み具合を称した「幕の内弁当」だが、ただ単に凝縮させるだけではない。本来の幕の内弁当が中身をぴったり合わせながら、見た目も華やかで奇麗になるように腐心するように、携帯コンテンツも「美しく、優しいデザイン」(本書オビから)を目指さないとならない。本書は、小さな画面ならばこそ、その特質を活かしてみようと説くサイト設計のノウハウ集。これまで類書はままあったが、この一冊ほど体系的にユーザビリティ・デザイン(使いやすく快適なウェブ構築)を指南してくれる本はなかなか見つからなかった。様々な“制限”から発したエンジニア主導の開発から、グラフィカルなクリエイションを実現しようと考える制作者の方々には、格別お得な「新・100の法則」シリーズの新刊である。新たなデバイスとして浸透したiPhone対策も万全、携帯におけるFlashコンテンツの制作にもお役立ちの内容。会員制サイトやECサイトの秘訣も含め、いますぐ利用できる実践的なHOW TOにあふれていよう。




ロードバイクは超グラフィカル!! 『ビバ・イル・チクリッシモ』
大友克洋×寺田克也/マガジンハウス
6,090円+税

最近、巷で自転車がプチブーム。裏原系のピスト(ノーブレーキは厳禁!)や通勤用のクロスバイク、ミニベロなどと形態は様々だが、やっぱりロードバイクの魅力は大。本書は伝説のヒルクライマー、マルコ・パンターニに魅了された作家たちがロードバイク&レースへの愛情をたっぷり注いだ豪華本だ。2冊分冊のうち、1冊は著者2人がジロ・デ・イタリア(ツール・ド・フランスと並ぶビッグレース)を観戦しに出かけたドキュメント。当代随一の華麗なイラスト、エッセイ、写真により、リアルな紀行を記録している。ロードバイク乗りならば食い入るように眺めてよし、読んでよし。よだれが出るがごとく堪能できよう。もう1冊は雑誌連載されたコラム「カーボンハート」「おしゃれハンドル」をまとめたもの。著者2人の他に、りんたろう、小原秀一、黒田硫黄、北久保弘之、高坂希太郎、樋口真嗣といった面々が参加して“自転車愛”を語っている。興味のない方には素通りの書籍かもしれないが、万が一コレを手にしたらロードバイクへの趣味が広がるかもしれない驚異の著作。完全限定版なので、書店で見かけたら是非一見。レースで使用されるサコッシュ(補給用バッグ)が特典というのも気が利いている! ロードバイクの世界に“デザイン”の美しさを見いだすきっかけになる企画集だ。感無量のオススメです。


(文・増渕俊之)



(更新日:2009年1月16日)
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