「クリエイティブ・ディレクターとしてのスティーブ・ジョブズ──後編」



「クリエイティブ・ディレクターとしてのスティーブ・ジョブズ──後編」
2009年3月24日

TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)


正しい生態系の中に咲いたiPhoneという大きな花

スティーブ・ジョブズがアップルに復帰して以来、半透明のボディとフロッピーディスクドライブを過去の遺物としてばっさり切り捨てたことで、世間に大きな衝撃を与えたiMacを始めとして、音楽業界そのもののあり方を変革させてしまったiPodとiTunes、そしてiPhoneに至るまで、デザイン性豊かなさまざまなプロダクトを世に生み出してきた。

そのなかでも、特筆すべきは、やはりiPhoneだろう。世間一般的な物言いをすれば、売れ行きの大きさや、アップルブランドを単なるマイナーなパソコンメーカーという認識から、おしゃれなライフスタイルブランドへと押し上げたiPodをして彼の代表的なプロダクトとすべきだろうが、iPhoneこそがジョブズのクリエイティブ・ディクレクターとしての非凡さを物語っている。


iPhoneにジョブズの手腕の見事さが象徴されている

それは、iPhoneが完全にソフトウェアで制御されたハードウェアであり、物理的にバッテリーが保たれている限りにおいては電源を落とすことのない、常時パワーオンの状態にあるプロダクトであるからだ。iPodは確かに音楽や映像という分野で我々のライフスタイルを大きく変えたが、iPhoneには社会生活全体を変革する可能性がある(正確にはiPhoneにというよりもモバイルコンピューティングが持つ可能性だ)。

iPhoneは、インターネットと電話回線でのコミュニケーションを常時可能としている。iPhone以前のケータイやスマートフォンは、電話とメールに関してはイエスであったが、Webの利用については満足できるものではなかった。ネットブックを含むノートPCは常時ネットにつながるものではないし電話も使えなかった。iPhoneは史上初めて、常にWebとメールと電話の利用が可能で、しかもいつでもどこでも手元に置いておくガジェットと言えるだろう。しかも、その機能はハードウェアに依存せず、ソフトウェアのアップグレードによって、従来の機種に比べて遥かに長期間最先端であり続けることが可能だ。

つまりiPhoneはMacであると同時にiPodでもある。自らのプロダクトラインから大きく外れるプロダクトではなく、正しい生態系の中に咲いた大きな花として、iPhoneは設計されている。この統合性と一貫性が、ジョブズのクリエイティブディレクションの見事さを象徴しているのである。

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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。



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