「Webの進化とリンクする『スマートグリッド』」



「Webの進化とリンクする『スマートグリッド』」
2009年6月15日

TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)


ソフトウェアで制御する電力網

オバマ米国大統領は、今年1月の就任演説で、320億ドルもの予算を「スマートグリッドの整備に充てる」と表明した。「スマートグリッド」とは、“エネルギーとコストを節約するために、情報技術をもちいて供給者と消費者のあいだの電力伝送をおこなう技術のこと”(Wikipediaより引用)である。


Wikipedia「スマートグリッド」のページ


この説明におけるポイントは“情報技術をもちいて”というくだりだ。つまり、電力伝送をソフトウェアによって制御するということである。

事実、世界最大手のネット企業であるGoogleは今年の2月10日(米国時間)に、スマートグリッドソフトウェア事業に進出し、家電ごとに電力消費量を表示するWebアプリのプロトタイプを発表した。このアプリは「スマートメーター」と呼ばれ、家庭の電力消費量を電力会社にリアルタイムで通知する機能を応用していると言われる。このように、スマートグリッドは、発電設備や送電網設置といったハードウェア設備だけでなく、IT業界にとっても非常に大きなトピックとなっている。


スマートグリッドについての動画を配信している米国科学財団のサイト
http://www.nsf.gov/news/newsmedia/bridges08/smartgrid_playerpage.jsp


スマートグリッドはWebの進化と歩調を合わせている

スマートグリッドの特長は、「インタラクティブである」ということだ。その意味で“供給者と消費者のあいだの電力伝送”という言い方は正しくないかもしれない。正確に言うと、スマートグリッド時代には、消費者もまた電力の供給者となり得るからだ。

たとえば日本が誇るハイブリッドカーであるプリウスは、モーターのみで2kmの距離を走行可能な電力を発電・蓄電できる。また、最近の家屋では太陽光発電設備を持つことも珍しくはない。つまり、消費者側が発電設備を持っているわけだ。こうした電力を集約すれば相当の電力量になるはずで、たとえば1台のプリウスで200円相当のガソリンに相当するクリーンエネルギーを作り出すことができるから、100台あれば1台が200km走れることになる。

こうした消費者側の電力を採集して利用できるようにすることもまた、スマートグリッドの大きな役目だ。Web 2.0を経て、Webが双方向となり、マスメディアが一方的に情報を消費者に伝送する形式から、消費者側がCGMによってWeb上にさまざまな情報を伝送するようになったことと似て、スマートグリッドはエネルギー伝達における2.0的現象といえるだろう。


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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。



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