「音楽シーンにもみられるストリーム化現象──前編」



「音楽シーンにもみられるストリーム化現象──前編」
2009年7月6日

TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)


音楽関係で最も革新的なプロダクト──ウォークマン

ソニーの携帯音楽プレイヤー「ウォークマン」は、1979年7月1日に発売された。つまり今年は生誕30周年ということになる。いまやiPodにお株を奪われてしまった感の強いウォークマンであるが、Googleが特別ページ(リンク)を用意するなど、全世界的には祝福的なムードが広がったらしい(日本であまりそうした雰囲気がないことは寂しい限りである。ソニーは絶好のブランド再構築のチャンスとは考えなかったようだ)。

初代ウォークマンは小型のテープレコーダーであり、スピーカーを外してイヤホンのみとしたうえで、それを胸のポケットに収まるサイズに仕上げたものだ。つまり外出先でも自由に音楽を聴くために作られたものであり、特定の技術を活かそうとした、技術先行の商品ではなくニーズが先行した商品である。


「ウォークマン」誕生のエピソードを紹介するソニーのページ
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/2-06.html

だからテープレコーダーという技術が古びれば、MDやCDをメディアとして使うことで時代を超えて生き延びることができた。しかし、ソニーは本来のニーズを忘れ、メモリースティックなどのメディアにこだわったためにiPodの追い上げに対抗できなくなってしまった。

ウォークマンの成功をみて、松下電器(現パナソニック)や三洋電機などの競合他社が次から次へと、同様の製品を持ち込んだが、彼らの製品はクローンに過ぎず、ウォークマンというブランドには勝つことはなかった。

MP3という音楽フォーマットの登場が、音源と音楽携帯端末の間のメディアを中抜きにしてしまう、あるいはハードからソフト、ネットへと変えてしまうことにいち早く気づいていれば、iPodの後塵を拝することはなかったはずなのである。


Appleが加速した音楽業界におけるストリーム

ウォークマンを追い落としたiPodの第1号は、ハードディスクと音楽再生専用のOSを積んだ小型のコンピュータである。従来の機器はメディアを交換することで音楽データを補充したが、iPodは大量のデータを保管できるからいちいち補充するまでもない。初代ウォークマンが我々にもたらしてくれた恩恵は、場所を選ばずに音楽を聴くことができるという喜びであったが、iPodはさらに、持っている音楽をすべて持ち歩けるという喜びを与えてくれた。


2001年10月の登場以来、進化をし続けてきたiPod

iPodはMP3などの音声の圧縮フォーマットを使った初めての携帯音楽端末ではないし、ハードディスクを使った初めての携帯音楽端末でもないが、世界で最初に大成功した(両方の特長を持つ)デジタル携帯音楽端末である。iPodの成功で、音楽もまたソフトウェアデータであるということが明確になり、音楽業界そのものを大きく変革させることになった。音楽業界もまた、Webで起こりつつあるストリーム化にさらされるようになったのである。


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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。



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