「Tumblr──マルチメディア対応のハイブリッドブログサービス」



「Tumblr──マルチメディア対応のハイブリッドブログサービス」
2009年7月20日

TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)


リアルからWebへのファーストワンマイルサービスのひとつ

「Tumblr」(タンブラー)とは、米国Tumblr,Inc.が運営する、ソーシャルブックマークとBlogのハイブリッド的なサービスである。テキストだけでなく、気になる記事のリンクや写真などを非常に簡単にアップロードできることが特長だ。

日本語対応がまだ為されていないためもあって、日本国内ではまだまだITギーク層にしか受け入れられていない観があるものの、Twitter同様に今後のブレイクが期待されるサービスのひとつといえる。


テキストだけでなく、気になる記事のリンクや写真などを非常に簡単にアップロードできるTumblr


一般のネットユーザーが、日々の生活体験や発見を気軽にWebに置き換えることができるサービスを、筆者は“ファーストワンマイルサービス”と呼んでいる。

Googleが検索エンジンとして世界で覇を唱えることができるのも、Web上にさまざまな情報が置かれているからこそだが、ほんの数分前の出来事までもが検索できるようになるには、リアルからWebへの情報のアップロードができるだけシンプルでなくてはならない。

このためには常時ネットに接続できるモバイルガジェット(例:iPhone)と、できるだけシンプルなインターフェイスを持つアップロードサービスが必要となる。史上初めてのリアルタイムアップロードサービスとして登場したのはBlogであるが、いまではTwitterがその座を奪いつつあり、Tumblrもまた、Twitter同様にBlogを追う有力サービスのひとつとして成長してきている。


マルチメディア対応サービスは専門サービスに勝てるか

TwitterはSNSとBlogのハイブリッド的な要素があり、さらにタイトルもなく、わずか140文字のテキストしか投稿できないという、一見不自由だが、それだけにシンプルなインターフェイスが受けた。TumblrはTwitterに比べるとはるかに高機能であり、画像や動画、音声ファイルなどの投稿にも対応しているのだが、それでもほんの数ステップですべての作業を行えるようになっており、従来のBlogと比べれば遥かにサービス開始にあたっての垣根が低いサービスになっている。

とはいえ、それでもTwitterと比較すると機能が多いために複雑さは否めず、それがTwitterの普及の早さに対して遅れをとっている要因であろう。

Twitterは執拗にテキストのみのサービスモデルを崩さない。APIを公開することで、写真や動画などの扱いは他の企業にまかせてしまい、自分自身はテキスト情報の全世界網羅のみに集中する。その点TumblrはFlickrやYouTube、そして従来型のBlogサービスとも競合することになる。

筆者が考えるに、Tumblrの本質は「ブックマーク」と「引用または転載」であり、自らマルチメディアコンテンツのアーカイブをするのではなく、あくまで転載とコメント付与に集中したほうが良い。さもなければ、Twitterを追走するのは難しいだろう。


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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。



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